ある懐かしのヒット曲をかけると、古いノートPCのハードディスク(以下「HDD」)がクラッシュした……とは都市伝説のような話ですが、マイクロソフト(以下「MS」)の技術者がこの話を本当だと言ったことで信ぴょう性が高まっています。
今週初め、MSのソフトウェアエンジニアのRaymond Chen氏は、今週初めに公開されたブログ記事で、この問題を調査したところ真実だったと報告しています。
どういう話かといえば、具体的には5400rpm(1分間に5400回転)のHDDを使うWindows XP時代のノートPCで、米国のシンガーソングライターであるジャネット・ジャクソン氏が1989年に送り出した「リズム・ネイション」を再生すると、強制的にクラッシュする可能性があるというものです。
さらに公式CVE ID(共通脆弱性識別子。米政府から資金援助を受けたMITRE社が管理)として「CVE-2022-38392」が発行されたことで、ますます信用できる話となっています。
Chen氏によると、この問題はもともと「ある大手コンピュータメーカー」が発見したもの。この曲を再生しているノートPCだけではなく、近くにある他のノートPCもクラッシュしてしまうことがあるそうです。
なぜ、こんな現象が起きるのか? それは「リズム・ネイション」には、HDDが持つ「固有振動数」が含まれており、共鳴現象が起こってしまうためのようです。日常でもマイクで話しているとキーンと音が鳴ったり、バラエティ番組に「歌声でワイングラスを割る人」が出ていたりしますが、あれらも共鳴現象により起こっているわけです。
しかし、問題となった特定モデルのHDDは無名のメーカー製で、どのノートPCに積まれているかも分からないため、他の人が再現することも難しくなっています。CVEには「2005年頃にノートPCに搭載された、ある5400RPMのOEMハードドライブ」とあり、一次ソースとしてChenの投稿にリンクされているだけ。つまり、ほとんど手がかりがない状態です。
当時のPCメーカーもこの問題を認識しており、要はオーディオ再生時に故障の原因になる周波数を検出して除去する対策をしていた企業もあるそうです。もちろん、対策されないまま隣で再生された他社製ノートPCはクラッシュしていたはずですが、この曲の人気がその後は下がったおかげか、広く知られることはなかったようです。
とはいえ、「リズム・ネイション」を再生しなくても油断はなりません。Chen氏は参考資料として、サーバーラックに向かって叫ぶことでHDDの動作に干渉している男性のYouTube動画を紹介しています。古めのノートPCをお持ちの方は、とりあえず近くで歌ったり叫ばないことをお勧めします。
Source:Microsoft
via:Ars Technica