「ビオトープ」をご存知だろうか。Wikipediaによると
ビオトープ(独: Biotop)は生物群集の生息空間を示す言葉である。日本語に訳す場合は生物空間(せいぶつくうかん)、生物生息空間(せいぶつせいそくくうかん)とされる。語源はギリシア語からの造語(bio(命) + topos(場所)。転じて、生物が住みやすいように環境を改変することを指すこともある。
と記されている。簡単に言えば、水を中心とした擬似的な生態系を構築したものだ。基本的には餌をあげず、水の中に湧く微生物や飛んで水に落ちてくる虫類などが餌となる。やることといえば蒸発した分の水を足していくことくらい(足し水を雨で賄う場合もある)。ビオトープはアクアリウムの発展形というか、最終形とも言える。
ベランダに小さな生態系を作ろう
『ベランダビオトープ』(馬場民雄・著/白泉社・刊)は、あるマンガ家が仕事場のベランダでメダカを中心としたビオトープを構築することにハマっていくい様子を描いた、エッセイマンガだ。
最初は50リットルくらいのたらいにメダカ数匹と水草から始めたが、徐々に生物を増やし、100リットルクラスのプラ舟(コンクリートを混ぜるための容器)にグレードアップ。そして成功と失敗を繰り返しながら、どんどんビオトープ沼にハマっていく。
これだけでは終わらない。ミミズを使って生ゴミを処理するコンポストも始め、枯れた水草などを土に戻すことでさらに環境の循環を進める。最終的に、引っ越しと共にビオトープは解体。しかし、自主制作して売り込んでいたビオトープのマンガの連載が決まり、再びビオトープを構築。しかも岡山にある実家でより規模を拡大した。
見事なまでにビオトープ沼にハマっていく様子が、おもしろおかしく描かれている作品だ。
完璧なビオトープはベランダでは無理なのか
本書を一通り読めば、どうやってビオトープをやればいいのかがわかるはず。ビオトープ入門書として読んでもいいだろう。
実は僕もメダカをベランダで飼っているので、「わかるわかる」と思うところが多い。僕の場合は、ビオトープまでとはいかないが、あまりまめな性格ではないので、水草は生え放題だし、卵を孵す作業(水槽内に産み付けられた卵はメダカ自身が食べてしまうので隔離して別に育てる必要がある)も、最初の数回でやめてしまった。
理想としてはビオトープを構築して、手間を掛けたくないところだが、ベランダでは水量もそれほど確保できないので限界がある。
本書でも、ビオトープとは言っているものの、増えすぎた水草を間引いたり、繁殖しすぎたスネール(水草などに付いてくる巻き貝たち。雌雄同体で爆発的に増える)を駆除したりと、それなりに手をかけている。やはり完全に人が手をかけないビオトープというのは難しいんだなと感じた。
魚飼育が好きな人は注意して読むべし
僕はもともと金魚を大量に飼っていたことがあったのだが、すべて室内で飼っていたため世話がなかなかたいへんだった。
今回メダカをベランダで飼ってみて思ったのは、「太陽光は偉大」ということ。室内であれだけライトを点けていても枯れてしまっていた水草が、ベランダではバカみたいに増えるし、メダカたちはバンバン卵を産み、子どもたちもすくすく育つ。
今年の夏はかなり暑かったので、水温が上がりすぎて2匹ほど星になってしまったが(ほんとうの原因は不明)、室内で金魚を飼っているときよりはかなり手間がかからない。
ほんとはもっと水槽(にしているたらい)を増やしたいところだが、そこはグッと我慢。2つの36リットルのたらいと、バケツ類で乗り切っている。
本書では最終的に、100リットルクラスのプラ舟2個でビオトープを構築している。僕からしたら、とてもうらやましい。
理想を言えば、広い庭のある家に池を作ってそこでビオトープを作ってみたい。小さな生態系を作って、そこでメダカやドジョウを飼ってみたい。
僕の心のなかでくすぶっていたそんな気持ちに、ちょっとだけ火が点いてしまいそう。僕と同じような気持ちを持っている方は、本書を読むとビオトープ熱が高まってしまう可能性があるので、覚悟して読んだほうがいいだろう。自己責任でお願いしますね。
【書籍紹介】
ベランダビオトープ
著者:馬場民雄
発行:白泉社
ベランダに自分の世界を!!オッサンの失敗&努力が詰まった、生き物エッセイマンガ!!
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