相手のことをそれほど知らないのに、出会ってからすぐに友人になったという経験はありませんか? そんな相手は自分と似た匂いの持ち主なのかもしれません。最近、世界を驚かせた研究によると、人は同じような匂いの人と引かれ合うようです。
動物は相手の匂いを嗅いで、味方か敵なのかを判断します。例えば、犬同士が初めて出会ったとき、お互いの匂いをくんくん嗅ぎまわりますよね。このように、社会的関係を構築するうえで匂いは重要な役割を担っていることが、人間以外の陸上に住む哺乳類では確認されていますが、なぜこれまで人間では確認されていないのでしょうか?
そこで、イスラエルにあるワイツマン科学研究所の大学院生が、「人は無意識のうちに自分や他人の匂いを嗅いで、自分と他人を比較し、自分の匂いと似ている人に引き寄せられるのではないか?」と仮説を立て、ある実験を行いました。
この実験では、短期間で友人になった同性のペアを被験者として募集。お互いの人となりを十分に知る前に友人関係が形成されるということは、身体の匂いといった生理的な特徴が何らかの影響を与えているのではないか? そう考えた同研究者は、被験者から匂いのサンプルを採取し、ランダムに選んだ別の人のサンプルと比較することで、友達同士の匂いに類似性があるかを調べました。
その結果、匂いの化学物質を特定する機械「eNose」を用いた判定と、人間による検査のどちらでも、友人同士は似た匂いを持つことがわかったのです。
匂いは友を呼ぶ
しかし、友人同士の匂いが似るようになったのは、友人関係ができた結果であるかもしれません。そこで同研究者は、この可能性を排除するため、別の実験も行いました。知らない人同士を会わせて、言葉を使わない交流の時間を持ってもらい、その後、相手のことを「どの程度好きか?」「どの程度の友人になれそうか?」と評価してもらいました。なお、被験者の匂いは事前にサンプルを取って分析してあります。
すると、積極的に交流していた人同士は、お互いに似た匂いを持つ傾向があることが判明。匂いの類似性から、それぞれのペアがどのくらい積極的に交流するかを予測したとき、その正確さは71%にもなりました。
これらの実験結果から、どうやら人は自分と同じような匂いを持つ人と仲よくなりやすいということが言えるようです。私たちは知らない人と初めて会ったとき、相手の性格や考え方、言動などを見て、相手に好感を抱いたりするものですが、そこでは無意識に相手の「匂い」も嗅いでいるのかもしれません。
【出典】Ravreby, I., et al. (2022). There is chemistry in social chemistry. Social Advances, 8(25). DOI: 10.1126/sciadv.abn0154