さかなクンが“さかなクン”になるまでを描いた映画「さかなのこ」が現在公開中。原作「さかなクンの一魚一会~まいにち夢中な人生!」の作者でもあるご本人がインタビューに登場。主人公を演じたのんさんとの再会、バスクラリネットで音楽にも参加したことなど、興味深い話をたくさん聞かせてくれました。
【さかなクンの撮り下ろし写真】
のんさまは全然お変わりなく、かわいくてキラキラと輝かれています♪
──自伝的エッセイ「さかなクンの一魚一会〜まいにち夢中な人生!」を原作にした映画が製作されることが決まったときの感想をお聞かせください。
さかなクン ギョギョびっくり! これは夢じゃないだろうかと思いました(笑)。お声がけいただいたのがギョ(5)年ほど前だったので、さかなクンの本が映画になるのはなかなかイメージできませんでしたが、昨年いよいよ映画化が現実味を帯びてきたときは、ドキドキとワクワクとうれしい気持ちでいっぱいでした。しかものんさまが主演、ミー坊ちゃん役ということでギョギョうれし〜!! と感動で飛び跳ねていました。
──映画化にあたりアイデアなどは出されましたか。
さかなクン 脚本を何度か読ませていただきましたが、大人になったミー坊ちゃんが冒頭に出てくると記されていました。自分自身も大人になってもずっとお魚と一緒に暮らして、朝起きてまずお魚一匹一匹に声を掛け、お話もするんですね。中でもイシガキフグちゃんは人懐っこくいつもジーッとこちらを見つめてくれて、なんと! 歯みがきもするんです。そのことを沖田(修一)監督さまにお伝えしたところ映画の冒頭にイシガキフグちゃんの歯みがきシーンを入れてくださったので、とーってもうれしく思っています。
──冒頭の場面はさなかクンの実際の生活とリンクしているんですね。
さかなクン はい♪ そのイシガキフグちゃんは館山の漁師さんの定置網漁業で獲れ、いただいた子なんです。最初は傷がついて、水圧の変化で背中が水面からぽっかりと浮いていて、回復するのはなかなか難しい状態でした。でも愛情いっぱいにケアしてだんだん元気になった子なので、映画に登場することができて感激です。
──主演ののんさんとはどんなお話をされましたか。
さかなクン「学ラン、とーっても似合ってますねー♪」とお話して、にこにこしてくださいました。のんさまと最初にお会いしたのは連続テレビ小説『あまちゃん』の頃でした。『あまちゃん』を見て毎朝元気をいただいて超大ファンになりましたので、ミー坊ちゃんを演じてくださるのは夢のように嬉しいです。今回さかなクンの地元である館山市で撮影が行われるときに、見学させていただけることになり、8年ぶりにお会い出来ました。
──館山で再会できたんですね。
さかなクン そうでギョざいます! 映画の中で柳楽優弥さまが演じていらっしゃるヒヨちゃんは、実際にさかなクンの同級生なんですね。撮影をさせていただく当日の朝、神奈川県に暮らすヒヨちゃんに「今日館山に来てくれない?」って電話をしたんです。最初は「マジ? 今日は平日じゃん。オレ、仕事あるよ」と言われましたが、すぐに「ちょっと待って。考える」と。でも、しばらくしたら「じゃあ館山行くよ!」と言ってくれて本当に来てくれまして(笑)。具体的に何があるかは伝えませんでしたが、駆け付けてくれたヒヨちゃんとギョ一緒に撮影している場所に伺うと、まず鈴木拓くん(さかなクンとは中学、高校の同級生)に会ったんです。3人で「拓くんお久しぶり!」、拓くんは「日吉(ヒヨ)、大分変わったな!」なんて懐かしトークになりまして、その後のんさまにお会いしました。そしたらヒヨちゃんを見たのんさまが、「ヒヨさんイカついですね」とおっしゃって。みんな笑顔になりました。そういう素直な言葉がスッと出てくるところも素敵だなって思いました。のんさまは全然お変わりなく、かわいくてキラキラと輝かれています。
沖田監督さまは「さかなクンらしく!」と、自由に泳がせてくださいました
──さかなクンご自身もギョギョおじさん役でご出演されています。
さかなクン 最初、ギョギョおじさんという役をいただいたことを聞いて、ギョギョッ!! と飛び上がりました!!(笑)「えー!! さかなクンが映画『さかなのこ』に参加させていただけるんだー」ってうれしくてうれしくて。それからギョギョおじさんってどんなキャラクター? と思いました。お話を聞くと、ミー坊ちゃんが子供のときに近所にいたちょっと変わったおじさんという設定なんですね。最初は「どんな感じで参加すればいいのかな?」って考えたりしましたが、「そうだ! 自分(ミー坊ちゃん)が小さい頃を懐かしく眺めているような気持ちで、そしてこんなにお魚が大好きな小さなミー坊ちゃんをうれしく思うと同時に応援したくなるような気持ちで演じられたらな」と思いました。
──役柄やお芝居に関して沖田監督とはどんなお話をされましたか?
さかなクン 沖田監督さまは「さかなクンらしく!」と、自由に泳がせてくださる感じでした。お優しく大らかにギョ指導いただきました。
──実際にお芝居をされた感想を教えてください。
さかなクン 以前「COACH コーチ 40歳のフィギュアスケーター」という映画にさかなクン本人役で、水族館さまでお魚をギョ説明するという1シーンをいただいたことがあるんです。そのシーンはとても短かったので、映画をどう作るかじっくりとは見られませんでした。今回はヒヨちゃんと一緒に帰っているミー坊ちゃんとギョギョおじさんが遭遇するシーンを撮影されるのに、午前中目いっぱいだったんですね!! いろんな角度から同じシーンを何度も撮影されることに、これは大変だ〜とビックリしました。
──年齢は違えど魚が大好きなミー坊とギョギョおじさんが語り合うシーンはとてもほっこりしました。
さかなクン 嬉しいです♪ ミー坊ちゃんがギョギョおじさんの水槽のお部屋でお魚を見たり、絵を描いたりするシーンですよね。撮影ではありましたが、とても楽しくて心地良い空間でした。ミー坊ちゃんの小学生時代を演じてくださった西村瑞季さまもお魚がとても好きでいらっしゃったんです。小さな役者さまですが、とてもお心が純粋で、あたたかい気持ちになりました。水槽を泳ぐネコザメちゃんを「かわいい~!」と見つめて、楽しそうに絵を描かれていました。そしてしっかりとミー坊役を一生懸命演じていらっしゃることに感動しました。
一つひとつに感動して、感謝して、ポジティブに考えれば楽しく続けられると思います
──ミー坊もさかなクンも魚好きを貫いていらっしゃいます。「好きを貫く」ために大切なことってなんでしょうか。
さかなクン「根性だー!!」って感じを想像するかもしれませんが、「好きを貫くぞーッ! 誰にも負けないぞーッ!!」みたいな気持ちでは決してなくて(笑)。自分はお魚に夢中だなぁ~! お魚が好きだと幸せだなぁ~、お魚食べたいな~、栄養いっぱいで元気がみなぎってくるな~、こんな小さいお魚が頑張って大きくなるってすギョいことだな、そのお魚を獲ってくださる漁師さんありがたいな、運んでくださる皆さまありがたいな~。こう考えると全部が「うれしいな~」「ありがたいな~」「しあわせだな~」って気持ちになんですね。そうすると、ますますお魚好きでよかったなって思うんです。お魚って、見て触れて、香りを嗅いで、波の音、川の流れの音、いろんな音を出すお魚もいますので音を聞いて、そしてもちろん味わって。まさにギョ(五)感の喜び! 人が感じ得る5つの感動をお魚は身をもって届けてくれます。もちろん一人で感動するのも素晴らしいけれど、どの感動もみんなで共有できるんですね。それはすギョいことだと思います。お魚を好きでいると、一人で感動しているのがもったいないって気持ちになって、みんなで共有したくなります。さかなクンの場合は絵を描いたり、テレビ番組や講演会などで描いたり、お話させていただいたりしています。お魚が大好きな道を拡げてくださって、大自然に! お魚に! 皆々さまにありがたい気持ちでいっぱいです。
──魚を通して人とも繋がっていきますね。
さかなクン はい! 一人ではどんなお仕事も生き方もできないと思います。皆さまが支えてくださったから今がある、それに気づくと「うれしい♪ ありがたい!」ってプラスの方向に考えられるようになります。それは喜びと継続する力に繋がっていきます。「いやだな、つらいな」って思うと続けるのは難しくなるけど、「今こうしていられるのは周りの皆さまのおかげなんだ」「こんなにおいしいものを食べられるから元気になれる」って、一つひとつに感動して、感謝してポジティブに考えれば楽しく続けられると思います。「さかなのこ」をギョ覧になられますと、“好きな気持ち”や“夢中になれる気持ち”“周りの人のありがたさ”など共感できることがたくさん見つかると思います。
パスカルズ様のギョ指導のもとバスクラリネットを吹かせていただきました
──ここからは「モノ」や「コト」についてお聞かせください。長く愛用しているものはありますか。
さかなクン お魚に限らずでよろしければ楽器です。中学1年のときに友達と部活見学に行くことになり、その時に「吹奏楽部を見に行こうぜ」という一声に、「すいそう!? どんなお魚が泳いでるんだろう」ってワクワクしました。実は、水槽があると勘違いしちゃったんです。吹奏楽の部室まで行ってドアを開けたら、ドンドンプカプカと音が聴こえて。「あ、すいそう違いだったー!!」と(笑)。でも勘違いがきっかけで、吹奏楽部に入ってから楽器が大好きになり、いろんな管楽器の音色や形に魅了されました。自分の声が高いものですから、低い音が出る低音楽器が大好きです。ファギョット(ファゴット)、バスクラリネット、バリトンサックス、チューバー、コントラバス、低い音♪ 渋くていいなぁ〜って心癒されます。
──実際に持っていらっしゃる楽器は?
さかなクン バスクラリネット、コントラアルトクラリネット、コントラバスクラリネット、ファギョット(ファゴット)、バリトンサックス、バスサックス……さまざまな低音楽器を持っています。
──「さかなのこ」の映画音楽にも参加されていらっしゃいますね。
さかなクン とーっても大好きな低音楽器のバスクラリネットを吹くギョ機会をいただいて、「やったー! 超うれし〜!」と感激しました。パスカルズ様のギョ指導のもとバスクラリネットを吹かせていただきましたが、事前になかなか練習する時間がなくて、最初はちゃんと吹けなかったんです……。めちゃくちゃ怒られるかと思いきや、お優しくギョ指導してくださいました。先生はバスクラリネットと音域が近いチェロを弾いてギョ指導してくださったんですね。ギターを弾くようにチェロを斜めに構えて弾いてくださったので、「あんなに大きなギターがあるんだ!」とびっくりしていたらチェロでした(笑)。1フレーズ1フレーズ心地良いチェロの音色でギョ指導いただきながら吹いていたらだんだん楽しくなって。先生からは「今の音よかったですよ」って、たくさん褒めてくださり。さかなクンは褒められるとギョギョッ♪ とうれしくなり、どんどん張りきれます。「その楽しい気持ちでもう1回吹いてみましょう」とおっしゃってくださり、すギョく幸せな気持ちで吹くことができました。
さかなのこ
9月1日(木)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国ロードショー
【映画「さかなのこ」よりシーン写真】
(STAFF&CAST)
監督・脚本:沖田修一 脚本:前田司郎
原作:さかなクン「さかなクンの一魚一会 〜まいにち夢中な人生!〜」(講談社刊)
音楽:パスカルズ 主題歌:CHAI「夢のはなし」(Sony Music Labels)
出演:のん、柳楽優弥、夏帆、磯村勇斗、岡山天音、
西村瑞季、宇野祥平、前原 滉、鈴木 拓、島崎遥香、賀屋壮也(かが屋)、
朝倉あき、長谷川 忍(シソンヌ)、豊原功補、
さかなクン、三宅弘城、井川 遥
公式サイト:http://sakananoko.jp/
(C)2022「さかなのこ」製作委員会
撮影/映美 取材・文/佐久間裕子