3年ぶりに行動制限のなかった2022年の夏は、帰省や旅行などで人の移動が活発に。ホームパーティもしかりで、年末にかけてはハロウィンやクリスマスなどのイベントに合わせて、“リベンジホムパ”を計画する人も多いかもしれません。
ゲストを家に招いたとき、リビングリーム、キッチンのほかに意外と気になる場所がトイレ。清潔感はもちろんのこと、ホッと一息つける落ち着いた空間でありながらも、なるべく生活感を排除したおしゃれなインテリアに整えたいですよね。そこで、整理収納アドバイザー&ルームスタイリストの岡本あつみさんに、誰でも快適に過ごせる、誰に貸しても恥ずかしくないトイレについて教えていただきました。
トイレは家の印象を左右する
家に人を招くとき、多くの人が気をつけているのがトイレや洗面所を掃除することではないでしょうか。そもそもトイレとは、ゲストにどのような印象を与える場所なのでしょうか?
「自分が招かれた立場なら、トイレが清潔で素敵な空間だったらうれしいですよね。でもそれは、単純にキレイだからうれしいというだけではなくて、家主のおもてなしの心を感じるからだと思うんです。ゲストである自分に対するあたたかな心づかいが、そのおうちの印象に影響を与えているのかなと感じます」(岡本あつみさん、以下同)
では、岡本さんが家主の心づかいを感じた、印象に残っているトイレとは?
「友人の家で、タオルを普通にハンガーに掛けるのでなく、飾り結びにしているのを見て、素敵だなぁと感じました。ちょっとした心づかいに、温かい気持ちになりましたね。美容室でしたが、お香を焚いているトイレもありました。お香はほのかにやさしく香るので、強い香りが苦手な方にも安心です。いろいろなお客さんが来られるからこその、心づかいですよね」
置くと運気も下がる!? トイレのNGアイテム
風水では、水が流れる場所と金運には密接な関係があると言われており、清潔に保つことが必須です。また、トイレは汚れを排出する場所なので、家の中で最も陰の気が溜まりやすく、マイナスエネルギーを発生させる場所。なるべく長く滞在しない方がいいのだとか。そのため、風水的には、トイレに本を置いたり、スマホをいじったりするのはNG。
他にも長居の原因となるようなカレンダー、九九の表、世界地図などを壁に貼るのも避けたほうがよいと言われています。また、家族や大切な人の写真を飾るのもやめましょう。
整理収納アドバイザーとしてさまざまな家を訪れ、たくさんのトイレを見てきた岡本さん。ときには「こんな物がトイレに?」と驚いたこともあるそう。
「書類をトイレに置いているご家庭がありましたね。最初はびっくりしましたが、よくよく話を聞いてみると、それは長期保管しなくてはならない大事な書類だったそう。『トイレなら絶対になくさないから』とおっしゃっていたので、『それなら置いたままにしましょう』と、そのままにしました。
先日は、トイレの電気が壊れているからランタンを置いているご家庭がありました。薄暗い明かりが逆に落ち着いて、それはそれでおもしろかったですね。トイレ内の手洗い場に、お子さんのトイレトレーニングのための小さな便器がカパっとはまっているお宅もありました。手を洗ったら水がかかってしまいそうでどうしたものかと思ったのですが、水を流してみたら、絶妙にかからないんです(笑)。しかも、実際に使う方としたら、サッと取り出せて便利じゃないですか。
私は整理収納やお片付けにおいて、『その人らしさが出ていれば正解』という考えです。ちゃんと理由があれば、メソッド通りに整理整頓しなくてもOKだと思っているので、トイレに置いてNGなアイテムは思いつきませんね」
ゲストを呼ぶなら必須! トイレに置くべきアイテムとは?
では、ゲストを招く際にトイレに置いておいたほうがいいアイテムには、どんなものがあるのでしょうか?
・インテリアの観点で置くべきアイテムは?
「インテリアとして置くものを1つ考えるとしたら、観葉植物を置くのがいいですね。わが家のように窓がなく陽の光が入らないのであれば、フェイクグリーンでもいいと思います。小窓や棚があれば小さな鉢をちょこんと置いたり、置く場所がなければ、吊るすのがおすすめです。吊るせば目線が上にいくので、例えば床に置いた掃除道具など、見せたくないものから目をそらせるというメリットもあります。かわいい瓶やガラスに入ったルームフレグランスやアロマキャンドルなどが置いてあると、実用的でありつつもおしゃれですよね。お気に入りのポストカードやお子さんの絵を額装して、壁に飾るのも素敵です」
・マットやスリッパなどの布製品は必要?
「便座カバーやトイレマット、スリッパなどの布製品は、賛否が分かれますよね。こまめに洗わないと実は不衛生という考えが広まり、最近では置かない家も増えています。わが家もそういった理由からトイレにマット類は置いていません。
ただしトイレマットを敷かないとその分、ダイレクトに床が汚れます。ですから拭き掃除もこまめに行うこと前提であれば、トイレマットやスリッパを置かない選択はありかと思います。
サニタリーボックスを置くか置かないかという問題もありますね。自分が招かれた場合は持ち帰って捨てます。おそらくそういう方は多いかなと思いますが、置くとしたら、使い捨てのサニタリーボックスを選ぶといいですね。ゲストにも余計な気をつかわせずにすむかなと思います」
家主もゲストも心地いい! トイレインテリアの正解
築40年のヴィンテージマンションに家族5人で暮らす岡本さん。リノベーションした室内はどこを切り取ってもおしゃれ。そんな岡本さん宅の、誰もが心地よく過ごせるトイレインテリアを見せていただきました。
POINT1.スタイリッシュな安らぎ空間を演出するグレーの壁
清潔感のある真っ白な壁も素敵ですが、狭い空間だからこそ、好きな色の壁でアクセントをつけるのもおすすめ。岡本さんは、落ち着いたグレーをセレクトしました。
「もとは深めのグリーンの壁だったのですが、手洗いしたときの水が散った水跡が目立つようになったので、グレーの珪藻土(けいそうど)を選びました。珪藻土はコロナ禍の自粛生活のときに娘3人も一緒に家族で塗ったのですが、子どもが塗ると味が出ていいですね。大人だと、どうしてもキレイに塗りがちなので。
グレーを選んだ理由はもう1つあって、天井のモノトーンの壁紙とグレーとの組み合わせにしたかったからなんです。モノトーンの壁紙はトイレの壁全面だとうるさすぎてしまうので、天井部分だけにしてバランスを取りました。小さな空間だからこそ、足し算引き算しながら取り入れるものを決めていくのが心地よい空間をつくるポイントです」
賃貸の場合は、貼って剥がせるシールタイプの壁紙を使うのも1つ。岡本さんのように大胆な柄は天井など一面のみにアクセントで使用するのがおすすめです。
POINT2.扉を開けた目線の先に飾る
トイレの扉を開けると飛び込んでくるのは、マクラメ講師でもある岡本さんお手製のマクラメのタペストリーと、その両側に吊るされたハンギンググリーン。
「扉を開けた瞬間に視線が向かう場所が第一印象となるので、そこに見せたいものを置いたり、飾ったりするといいですね。あまりまじまじと見られたくない床や掃除道具などから視線をそらせるという利点もあります(笑)」
「グリーンはフェイクですが、それでもあるだけで空間が華やぎます。吊るすと床を掃除する際に邪魔になりませんし、フェイクグリーンはお手入れが簡単でラク。プラントハンガーから外して水洗いすればOKです」
POINT3.トイレットペーパーは取り出しやすい場所に
収納をつけなかったので、扉の上部にトイレットペーパーホルダーをDIY。以前は、トイレの外にある収納庫から補充していたそうですが、これなら万が一トイレットペーパーが切れても安心です。
「トイレットペーパーの横に吊るしたカゴには生理用品を収納しています。収納スペースがない場合には、省スペースにもなる、“吊るす収納”がおすすめです」
POINT4.見せたくないものは隠す
トイレ掃除は欠かせませんが、生活感が出てしまう掃除道具は、できればゲストの目に触れさせたくありませんよね。
「タンクの後ろ側にシールタイプの小さなフックを貼り付けて、そこにトイレブラシを掛けて収納しています。使うときに取り出すので、普段は見えません」
「ウォシュレットの電源やホースも見えるとゴチャついた印象を与えるので、フェイクグリーンを置いて隠しています。フェイクグリーンは床に直置きすると掃除が面倒なので、突っ張り棒を2本通して、浮かせて置いています。突っ張り棒の反対側にはおそうじシートを置いています」
POINT5.手拭きタオルは色にこだわる
家族みんなが共用する上に1日に何度も使用するため雑菌が繁殖しやすいタオルは、吸水力や乾きやすさを考慮して選びたいものですが、インテリア観点では、色味にもこだわりたいところです。
「わが家では、壁のグレート相性の良い、落ち着いたネイビーのタオルを使っています。狭い空間なので、色数はしぼるのがベスト。タオルのほかにトイレマットやスリッパなどを使っている場合は、ベーシックな色を選びつつ、すべてのアイテムで色を統一することで、洗練された印象になります」
ゲストには、ペーパータオルを用意するのも1つ。ホームパーティでたくさんの人が訪れる場合には、あわせて消毒用アルコールを添えるなどの配慮もあるといいでしょう。
最後にこんなアドバイスもいただきました。
「友達の家でトイレを借りたとき、素敵なオブジェが飾られていたり、いい香りのルームフレグランスがあったりしたら、それだけで話題になりますよね。トイレから出て、“ねぇ、トイレにあったフレグランス、なんの香り?“みたいに。それを聞いたもうひとりの友達も“私も行ってみようかな”なんて話が広がっていく。そんなふうにトイレのインテリアがちょっとした話のネタになって盛り上がる。トイレをそんな空間にできたら素敵ですよね。まずは家主の心地よさを大切にしながら、みんなが“いいな”と思えるトイレに整えていってください」
プロフィール
整理収納アドバイザー・ルームスタイリスト / 岡本あつみ
「好きなファッションを楽しむように。好きな音楽を楽しむように。家も、たくさんの“好き”で作って、楽しんでほしい」という思いから、「『家が好きになる』お部屋作りとお片付け」をコンセプトに部屋づくりとお片付けをサポートする。整理収納アドバイザー1級、ルームスタイリスト1級のほか、幼稚園教諭第1種や保育士、片づけ遊び指導士などの資格を持つ。東京都国分寺市の築40年のビンテージマンションをリフォームし、5人家族で暮らす。高校生から小学生までの3姉妹の母。
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