コント日本一の称号を手にするのは誰か? 『キングオブコント2022』(TBS系)の決勝戦が、ついに10月8日に開催される。
今回インタビューしたのは、吉本興業所属のコットン。元ミスター慶應で元アナウンサーという華麗な経歴を持つ西村真二(ツッコミ)と、憑依型の演技を生かしたキャラクター動画がYouTubeやTikTokでZ世代の間でもバズッている、きょん(ボケ)のコンビだ。二人はこの一年のあいだ、常に〝KOCのために〟と意識してネタ作りやライブに打ち込んできたという。そして今回、見事ファイナルへの切符を手に入れた。昨年は「コンビ名改名」という大きな決断もした二人。改めてコットンの現在と決勝への意気込みを語ってもらう。
【関連記事】
『おもしろ荘』優勝の格闘系コンビ・クロコップ。王者になって広めたい〝アラカク〟って何!?
(構成・撮影:丸山剛史/執筆:kitsune)
「絶対優勝するから、NHKのトロフィーの横、スペース空けといてな」
家族に宣言するも想定外の反応……?
――決勝進出が発表されて、しばらく経ちましたが、周りの皆さんの反応はいかがですか?
きょん 劇場のメンバーを中心に、めちゃくちゃ祝われてますね!
西村 発表から日が経って、僕らはわりと慣れてきたんですけど、久々に会った先輩とかは、発表直後くらいのテンションで来るんで「何お前、もっと喜べよ!」とか言われちゃってます。
きょん これが本番の日まで続くのかなと思うと嬉しいですね~。本当にみんなが喜んでくれて。
西村 やっぱりね、よしもとファミリーだから! 社長の言葉を拝借するならば。
――なるほど!(笑) 最初はどなたにご報告されたんでしょうか?
きょん 家族ですね!……っていうか、いや、僕の家族じゃなくて……。
西村 え?じゃあ、それ誰だよw
きょん 親とかです!
西村 それは家族だろ?
きょん 呼び方が分からないなあ。「家族です」って言うと僕が既婚者みたいになっちゃうかなって。
西村 ならない、ならない。「家族」って単語の意味も理解してないのに、よく決勝行けたな……!
きょん とにかく、家族のグループLINEに真っ先に報告しました。僕『NHK新人お笑い大賞』で優勝させてもらったときのトロフィーを実家に送ってるんですが、ちょっとかっこつけて「絶対優勝するから、NHKのトロフィーの横、スペース空けといてな」って、カマしました!
西村 家族だけのLINEで(笑)。
きょん それで、普通なら「さすが!」とか「頑張れ!」って返事が来ると思っていたんですけど、うちの親父が「だったら月曜日がゴミの日だから、その日に送ってきて」って、向こうもカマし返してきて……! ちょっと関係がギクシャクしました。
西村 でも、大喜利的に親父のほうがおもろいじゃん。
きょん おい、それは言うなって……!
笑いの量を数値化…? ネタの分析と改善に没頭!
「こんなにデータ取ったんだからハズす訳ねえだろ!」
――昨年は、コンビ名を「ラフレクラン」から「コットン」に改名されましたよね。改名後、変化はありましたか?
きょん 結成5、6年目くらいの頃ですかね……覚えてもらいづらいコンビ名だと肌で感じ始めました。ラフレシアンとかラフランスとか……ものすごく間違えられてた。そこから、ついに改名して、なんだか新しい自分になったような気分になれました。めちゃくちゃ気合いが入りましたよ。芸人1年目かのようなテンションでした!
西村 本当に変えられてよかったと思っています。オードリー若林(正恭)さん、ハライチ澤部(佑)さん、アルピー(アルコ&ピース)さんは、僕らを導いてくれた神父さんですね。
――そういった改名で変化した部分も、今回の決勝進出に繋がっているのではと思うのですが、大会のために新たに取り組んだことなどは何かありましたか?
西村 キングオブコントに向けての動き方はだいぶ変えましたね。去年は、ダイタクさんとかが「コットン今年いけるんじゃないか」と言ってくださっていたんですが、結局3度目の準決勝敗退。そこから、12月にはニッポンの社長さんとツーマンライブを企画していたこともあり、もう年内から来年に向けて動き出そうと決めました。
――かなり早い時期から準備されていたんですね。
西村 それからは「キングオブコントでこのネタやるかも……」みたいな考えを常にきょんと共有できていて、頭の中でいつも〝KOCのために〟が接頭句になって、取捨選択ができていました。さらに「きょん、決勝行くぞ。優勝するぞ」って言って2人で意識しながら、舞台に臨めたっていうのが大きいですね。
きょん そうだね。〝KOCのために〟って常に考えていた感じ。
西村 準決の前、7月の時点で2本のネタに絞りました。何ステージも立ってボケを叩きまくって、ウケ量のデータが取れたんです。僕らは、ニッポンの社長さんとかロングコートダディさんみたいな天才肌じゃないんで、ネタを試しながら一回一回集中してやりました。決勝に行けたのは、マジで「準備」。これに尽きるかもしれないですね。
――実際に、今年は予選から手応えはありましたか?
西村 正直、僕個人で言ったら、こんなにデータ取ったんだからハズす訳ねえだろ! という! 笑いの量を数値化する機械があって、平均的に数値が高いボケを残していく作業もしましたよ。だから、ウケてくれなきゃ俺の1年何だったんだっていう気持があった。……まあ、内心はホッとしてますよ、もちろん。
――す、すごい! かなり研究されていたんですね。きょんさんはどうですか?
きょん 僕は、お客さんがちゃんとネタを見てくれるようになった、と感じています。昔は、賞レースのお客さんから「はいはい、人気のある人たちでしょ」みたいな視線がすごい伝わってきてた……。ゆにばーすの川瀬名人が「内容もいいんやけどな」と励ましてくれてたけど、内心悔しくて。別にそういうつもりで立ち振る舞ってないのに、そう見られてしまうことに、ムカついてた。でも『NHK新人お笑い大賞』で勝ってからは、見る目が変わったんです。本当にこいつらしっかりコントしてる、面白いやつらなんだって。そこから今年は自分たちの状態も整っていたので、自信がありましたね。
西村 きょんは、僕の分析した方針についてきてくれて。もう半分パワハラみたいなもんでしたが、信じてくれました(笑)。
第一回大会から復習、審査員の傾向も研究済!
ダウンタウンが見ているけど…「逆に楽しくやれそうです!」
――最近のキングオブコントの傾向や点数も分析されてるんですか?
西村 めちゃくちゃしましたよ。KOCをまた1回目から振り返りました。近年は、大きな作品性、ストーリー性にスポットが当たっているなと感じたので、予選の2か月前くらいにネタの流れを変更したりしました。
――なるほど。審査員の方々の印象や傾向はいかがでしょう。
西村 例えば、ロバートの秋山(竜次)さんは、キャラが強いコントに点数を入れることが多いですね。で、東京03の飯塚(悟志)さんは、ワンボケ系のネタには点数を入れないとか。逆に、松本(人志)さんは、ワンボケ系を評価していたり。
――そうなんですね。ちなみに、会場では、松本さんが審査員、浜田(雅功)さんが総合司会と、ダウンタウンさんがお二人ともご覧になっている状況ですが。
西村 正直、マジで嬉しいです……。『ダウンタウンのごっつええ感じ』を小学生のころに見て「笑いを取る人ってかっこいい……!」と感じたことが、すべての始まりですから。その方々にネタを見てもらえるなんて、本当に生きててよかったと思います。きょんは少し世代が下なので……どう?
きょん 僕にとっては、もうレジェンドすぎて……逆に楽しくやれそうです!
西村 おう、なんかすごいこと言ってるぞ(笑)。あと、トークの時に浜田さんにど突かれたいですね~。でも、立ち位置的にきょんだから……その時は前に重なって、ど突かれに行きたいです。
きょん いやいや、さすがに邪魔よ!
西村 いや~本番が楽しみですね…!
マンゲキ組をぶっ倒す! ∞ホールで紡いだ歴史
「〝華〟だけが前面に出ちゃってた時期があった」
――ほかのファイナリストのメンツを見ていかがでしょう?
きょん 大阪吉本所属にはなりますが、ロングコートダディさんやニッポンの社長さんなど、仲が良くて尊敬できる先輩たちと戦えるのが嬉しいですね。尊敬せざるを得ない先輩たちですよ!
西村 なあ、尊敬する、でいいだろ!「せざるを得ない」って言い方だと、尊敬したくないけど、してやってるって話になるから…。波風立てるなよ~。
きょん そっか! じゃあ……尊敬する先輩の方々なので、もう自分たちのやってきたことに自信を持って、真っ向からぶつかっていくしかないですね。正拳突きで!!
西村 wwww なんだよ、その宣言は(笑)。
きょん ロングコートダディさんやニッポンの社長さん、ビスケットブラザーズさんは、いわゆるマンゲキ(よしもと漫才劇場)所属で、今たくさんファンの方がいて、お笑い界で大人気。そこを正拳突きでぶっ飛ばして、優勝したいです!
――(笑)。尊敬する先輩でもありライバルなんですね。西村さんはいかがでしょう?
西村 僕はそれでいうと、ネルソンズさんやいぬさんという、吉本の劇場(ヨシモト∞ホール)でやってきた先輩たちと、一緒に決勝に行けたのは嬉しいですね。特にネルソンズの青山(フォール勝ち)さんには、いくら奢ってもらったか分からない。マジでアコムから下ろしたばかりのお金で、そのまま奢ってもらったり(笑)。でも、2019年にネルソンズさんがキングオブコント決勝に出場して、軍団員としては嬉しい気持ちもあり、自分が行けない悔しさもあった。そこから、ようやく同じ舞台に立てる!
――熱い展開ですね。
西村 自分たちで言うのは変な話なんですけど、僕たち2、3年目のころに、〝華〟だけが前面に出ちゃってた時期があったんですよ。もちろんネタも頑張ってはいたんですが。そしたら今回、青山さんが「お前らのあの時代知ってるから、嬉しいよ」って言ってくれて、本当に感慨深かったですね。
――今までの経緯を知ってるからこそ。
西村 そうなんです。ちなみに、以前パンサーの向井(慧)さんも「華が前に出てしまっていた」って、ラジオで同じことを話していて。その向井さんからも「おめでとう」って言ってもらえたんですよね。そういう歴史を刻んで、ついに決勝の舞台に立てるので、気合いは入ります。
きょん ねえ、今の全部、俺が言ったことにしていい?(小声)
西村 いや、無理なのよ(笑)。いくらあなたのエピソードが少ないからって。
きょん あ、でも僕もネルソンズの和田まんじゅうさんが、近い先輩の中で一番面白い先輩だと思ってるんです。その和田さんと一緒に戦えるのは嬉しいですよね。いつも楽屋でも舞台でも〝でっけー背中〟を見せてくれてる先輩なので!
西村 ふはは! でっけー背中って何だよ! まあ、二人は『∞ホール二大デブ坊主』なので、デブ坊主頂上決戦が見れることになりますよ。
――(笑)。 劇場仲間同士の戦いも見どころですね。
西村 そうです。∞ホールを背負ってるんで、マンゲキ組には負けてられないっすね~!ぶっ倒しにいきますよ!
テレビに出て、劇場にお客さんを呼びたい
「僕の心臓は劇場にあります!」
――きょんさんはTikTokやYouTubeで若い世代の方にも人気ですし、西村さんはMCやナレーション、実況などアナウンサー業でもご活躍されています。今後は、コンビの活動はもちろん、個々での活動も増えそうですが、いかがでしょうか?
きょん それぞれ活動してはいるんですけど、コンビでテレビに出られている方々ってかっこいいので、そこは目指して行きたいですね。例えば、見取り図さんとかニューヨークさんとか。コンビでわちゃわちゃしているのが、憧れるんですよ。
西村 個人の仕事がコンビに還元されることも多いので、制限することはないですが、コンビの活動を主体にしたいとは思います。それに、個人の活動も現時点ではローカルな面でしか生かせていないので、キングオブコントを機に、僕らがメディアに出るようになって、それぞれ出稼ぎして蓄えてきた能力の出力先をコンビに向けられたら、最高ですよね。
――お二人はテレビでいうと、朝の情報番組などにハマりそうなイメージがあります。
西村 たしかに。好感度は低い方ではないと思うので、できたらいいですね。あと、テレビはもちろんですが、吉本の劇場にしっかり貢献していきたいと思ってます。
きょん そうですね。やっぱり劇場に立っているのが、一番楽しいので。笑いがすぐ返ってくる、生の現場にはずっと立っていたいです!
西村 え、でもきょんさんは、キングオブコントの取材でTBSにいたときは「テレビにたくさん出て人気者になりたいです!」って言ってたじゃん(笑)。
きょん あ、あれ、そうだっけ……? でも、テレビに出て人気者になって、劇場にお客さんを呼べるようにするのが大切だから…!
西村 まあ、そうだね。「今日コットンいるから満席だ。賞レースのネタを試そう!」とかほかの芸人に思ってもらいたいです。2、3年目の時もそういったことはあったけど、優勝してネタが評価されれば、当時と意味合いは全く変わると思うのでね。
――最後に、決勝への気合いの一言をお願いします。
きょん あのー…本当に頑張ります…!
西村 だはは! なんだよ、それ!
きょん とにかく、頑張ります。今年は今までにないくらい早い段階でネタが完成できたこともあり、準備はできていると思うので。あとは、楽しんでやりたいです!準決までは、お互い緊張しないように、常に劇場の定期ライブ「ワラムゲ!」だと思うことにして、合言葉にしてました。これはワラムゲ…これはワラムゲ…って呪文のように唱えて、いつもと同じ劇場の舞台だと思い込むようにしてたんです。
――劇場での経験値が生きた訳ですね。
きょん そうなんです。やっぱり劇場が一番!僕の心臓は劇場にあります!!
西村 だははは!もう、今まで一言もそんなん言ってなかったのに!よく自信たっぷりに言い切れるな~。
まあ、僕も本番は、吉本劇場スタイルで行きたいですね。いつも通り冷静に臨みつつ、目の前の観覧のお客さんを笑わせることを第一に考えたいです。帰りの電車で「面白かったね、また見にきたい」と言ってもらえるような。その先に優勝があればいいと思います。あくまで平常心、煌々と青い炎を燃やしていきたいです。
――応援しています!ありがとうございました!