「くらしのラボ」とムーのコラボ企画7回目の記事をお届けする。前回は「猫様と人間は会話できるか?」をテーマに据えたが、今回はさらに範囲を広げて、異種間コミュニケーションの話を展開していきたい。動物から、植物、無機物、果ては地球そのものとのコミュニケーションは可能なのか、そしてAIは本当に意識が持てるのか−−? 今回も中村さん、三上編集長、伊豫さんの対談形式で掘り下げていく。
AIと動物の対話の可能性
異種間コミュニケーションの話の前に、人間と動物との関係性の変化について伊豫さんに聞いてみた。動物行動学あるいは動物心理学の見地から、10年前と現在を比較して大きな変化は何かあったのだろうか?
伊豫:人間の生活と同様にこの10年で大きく変わったように思います。たとえばコロナ禍で、以前は平日なら必ず外に出かけていた人間がずっと家の中にいるようになったりしていますよね。これによって猫様が気にしたり、睡眠時間が減ったりという影響が出ました。コロナ禍では多くの猫様の睡眠時間が全体的に減少したことが、Catlogで取得したデータを分析することで判明しています。
中村:ちゃんとしたものを食べてもらわないと長生きできないということで、フードに気を配るようになった姿勢もあるでしょう。人間と一緒です。
伊豫:確かに、ご飯の質が良くなった結果寿命が延びたことも大きな変化です。犬も猫も、10年前よりも寿命が明確に伸びています。昔は20年生きたら猫又だといわれていましたが、今はほとんどの子がそれくらい生きて当たり前の状態になっています。
三上:今、猫顔アプリというものがありますよね。飼い主の顔が猫になるんです。それを見せると猫がビビるみたいですね。これと似た実験があって、猫の写真を切り抜いてお面みたいにして突然見せると、すごく驚いて逃げたらしいです。猫は、おそらく猫の顔を認識していると思います。
伊豫:少し前に、GoogleのAI「LaMDA(ラムダ)」とそれを作ったエンジニアが会話したという内容の記事を読みました。会話の中身が今までの自動応答のようなものと比べると少しステップアップしているように感じる人が多かったので、世界が結構ざわつきました。エンジニアは「LaMDA」が意思を持っている言っているのですが、真偽のほどはわかりません。
「LaMDA」がしていることがどこまで本当なのかはわかりません。AIが意思を持ったら動物とのコミュニケーションがどうなるのか。ブリちゃんに関しては、認識できる単語の掛け合わせとしての一定の会話は成立しているように感じます。対AIとの単なる会話だけではなく、動物とのコミュニケーションというところでもう少し研究の余地があるのではないかと思います。
中村:何をもって意思と解釈するかですね。対話とは何かという定義にもよると思うのですが、今のAIだからより確率がいい答えを出しているだけなのではないでしょうか。AIが意思を持っているかとなると、ちょっと違うと思うのです。これから先にまた変化が起きるかもしれません。今のAI技術の延長線上では、シンギュラリティのようなものはおそらくないでしょう。
ロギングは言葉よりも正確かもしれないですね。データを基にすれば正しい診断が可能となります。意思とかコミュニケーションというものが、本当に言葉だけが脳から出ているのではなくて、結果として出てくるデータがいろいろあって、正しく解析することができます。
Catlogは開発のアイデアが生まれてから、完成品ができるまでどのくらいの時間がかかっているのですか?
伊豫:1年くらいです。私はもともと、イルカなどの海洋動物の体にセンサーをつけてデータを取るバイオロギングという領域の研究をしていました。バイオロギングはおもに観察の難しい海洋動物を中心に展開されている研究手法ですが、イリオモテヤマネコやツシマヤマネコなど陸上の猫科動物でも同様の研究手法が展開されている事例があったため、イエネコにも応用できるだろうなと思っていたのです。実際に応用するにはどうするかとか、小型でファッショナブルなデバイスを作るにはどうするかを考えていた期間が1年くらいです。猫様は服を着るのを嫌がる場合も多いので、おしゃれできるのは首輪くらいなのです。首輪もつけたことがない猫様や、苦手意識のある猫様・飼い主さんがいるので、極力負担にならないように軽量化と小型化を優先しました
中村:猫にお金をかけるという考え方が一般的ではない時代だったら、こういうデバイスはなかなか広まらないでしょう。昔は動物病院に連れて行かない人もいましたが、今はそういう人が減ってきて、ペットの猫とコミュニケーションを取りたいとか、ちょっと高いけどいい食事を与えようという風潮になっています。ペットというよりも家族という意識なのでしょう。
伊豫:ペットも家族の一員であるという認識のもとに、1匹当たりの支出金額もどんどん増えています。この10年で意識が変わってきました。いろいろなお家で飼われている子がいて、住居自体の構造や近所づきあいなど人間のコミュニケーションも変わったと思います。それに伴って、昔はペットと言われていたものが今は家族の一員として認識されることが多くなりました。
家族の一員として、たとえば肥満も人間と一緒で万病の元となり、体重管理がとても大切です。測るもの大変だからどうしようかということになり、トイレの下に置いておけばいいという考え方からCatlog Boardを作りました。
イルカと会話できる? 地球と交信できる?
−−振れ幅が大きいお尋ねの仕方になってしまうのですが、オカルト的要素に関しては、わんこよりも猫ちゃんのほうが強いような気がします。
三上:化け猫という言葉もあり、猫はやはりスピリチュアルの象徴です。しかも人間と一緒にいる動物としての歴史も長いです。猫からすれば人間を飼ってやってるみたいなところもあるでしょう。猫だけに特化した雑誌が流行ったことがありましたね。ムー編集部でも、『ニャムー』を作ろうと話が出たことがあります。
縄文時代の日本に猫はいなかったといいますね。平安時代に遣唐使がネズミ対策で連れてきたということです。縄文土器に猫の足型があるんですよ。猫の土偶もあります。猫耳の土偶があるんです。
中村:飼っている側からすれば、化け猫でもいいから生きていてもらいたいと思います。種として弱かったから、人間のそばに寄って来て共生するようになったという話もありますね。それがネズミ対策として船に乗り込んで、世界中に広がっていったそうです。世界中の家猫の遺伝子を調べると、リビアヤマネコにつながるという話もあります。ところで、表情以外のシグナルを発しているのは、猫だけではありませんよね?
伊豫:イルカとかクジラの鯨類は、イルカのソナーと言われる超音波で感知して、どこに餌となる魚がいるか確かめてそこに向かうことがあります。ボディーランゲージもあるのですが、クジラソングという形で声を媒体としたコミュニケーションを取っているといわれています。多くの動物が、ホイッスルやソングなどエコロケーションと言われる音を使ってコミュニケーションをしていると思います。うちの猫様たちも、お腹が空いて甘える時の声と、そうではない時の声は違います。人間に何かを伝えたい時には声を使い分けるのです。
私に対してのコミュニケーションと、うちの他の社員に対するコミュニケーションも全然違います。この人は家族ということを猫様も認識していて、それはたぶん顔もそうでしょうし、声もそうでしょうし、あとは匂いとか、複合的なものを彼らなりに判断して、この人はいつも一緒にいる人だと認識しているのだと思います。
三上:α波の研究で有名な志賀一雄先生が、猫がゴロゴロ音を立てている時に皮膚の振動を測定したら、7.8ヘルツという数値を得ました。これはシューマン波です。7.8ヘルツというのは基本的には人間の可聴領域ではないのですが、出せる人もいるようです。この音域の音を出せる歌手の人が声を出すと、クジラとかイルカが寄ってくるといいます。
中村:渡り鳥が地球の地磁気を感じて、飛ぶ方向を決めているようなメカニズムは、人間にはわかりません。
三上:たとえば、動物と会話できる能力があることで有名なハイジという超能力者がいます。彼女は音ではなく、別の感覚で感じ取っているのかもしれません。ちなみにハイジは元警察官で、捜査をしている時に犯人が逃げ出して行方が分からなくなってしまって、そこにいた馬に「どこ行った?」と尋ねたら走っていった方向を教えてくれたそうです。
植物同士も話をしているといいますね。ある意味、人間の能力以上のものは普通にあるわけです。人間の普通のコミュニケーションにはないものを感じ取ることもあるでしょう。
パワーストーンをはじめとして、パワーが入っていると言われるものがあります。表現としてはそういうものがあると思うのですが、科学的に言うと、たとえば無機物に何かを記録することは可能です。メモリーとかハードディスクと同じですね。ということは、記録して読み込むことができる方法があれば、すでにある記憶を読み取ることもできるわけです。今はシリコンも記録媒体として使われています。
80年代のガイア理論は地球生命生物圏という考え方で、生態系の概念の延長ですね。生態系が一つの恒常性を持っていて、生物の基本とみなすことができるという考え方です。そこから一歩進めて、そもそも地球が生物であるという考え方もあります。古代のシャーマニズムは、原始的な社会においては、地球が生きているのは当たり前だという考え方でした。
−−今回のテーマは、コミュニケーションという言葉に尽きると思います。コミュニケーションにおいて、Catlogをよりよい形で活かしていくための具体的なアドバイスをいただけますか?
伊豫:実際の診療に役立てていただいている獣医さんもいらっしゃいます。首輪はだめでも、Catlog Boardのほうはどなたでも使っていただけます。体調管理のためのデータ取得を意識しなくてもCatlogやCatlog Boardを通していろいろな情報が蓄積されていきます。
デバイスを実際につけるのは猫様なのですが、飼い主さんが猫様につけてあげたいと感じるかが非常に大事です。コットンやシルクといったさまざまな素材や50以上の色のバリエーションを用意していて、デザイン性も大事にしています。大切な人にかっこ悪いものはつけてもらいたくありません。CatlogもCatlog Boardも、飼い主さんが猫様につけたくなるようなデバイスであること、そして猫様にとってまったく負担にならないということを一番に考えて作っています。
中村:きちんとした形のトラッキングで得られたデータがあるからこそ変化がわかるし、さまざまな活用法が考えられると思います。データは、それをどう分析するか、それとユースケースが大切です。データがあるだけでは意味がないので、飼い主が積極的に分析に関わって活用するものだということになれば、日本そのものも、もう少し元気になる気がします。
ひと昔前、ペットという言葉には愛玩動物というニュアンスが多分に含まれていた。しかし今は、家族という意味が第一義になっているのではないだろうか。大切な家族とはさまざまな形で関わり合いたいし、思いを伝え合いたい。言語やボディーランゲージの部分では、飼い主のオリジナリティが発揮できるだろう。
しかし、医療にまで役立てることができるデータ取得に関しては、Catlogがデバイスとしての能力をいかんなく発揮してくれるはずだ。飼い主も猫様も元気で暮らし、健やかな関係性を保ちながら日々の暮らしを楽しんでいく上で、大きな役割を果たしてくれるにちがいない。
(構成・執筆:宇佐和通/撮影:我妻慶一)
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