あなたがアラフォー以上なら、1996年に発売されたぺんてるのゲルインクボールペン「ハイブリッドミルキー」を覚えているかもしれない。売り上げは年間1億本オーバー、店頭在庫が追いつかずメーカーがお詫び広告を出す、など数々の伝説を持ち、まさに20世紀末のレジェンド文房具と言っても過言ではないだろう。
ペン型修正液の技術をもとに作られた特殊なパステルカラーインクは、黒い紙や写真印画紙に書き込みしてもくっきり発色するのが特徴。ほぼ同時代に登場した「プリント倶楽部」(プリクラ)やポラロイドカメラ「チェキ」などとの相性が良く、“コギャル”の必須アイテムとも呼ばれていたほどで、実際、筆者の体感として、当時の女子中高生の認知度は100%に近かったように思う。
残念ながら現在は廃番(2019年に数量限定で復刻したが、そちらも今やほぼ入手不可能)となっているが、あのミルキーなパステルカラーインクを楽しみたいのであれば、オススメの製品がある。なんと「ハイブリッドミルキー」の筆ペンバージョンが、新たに発売されたのだ。
伝説のミルキーインクで筆塗りできる「ミルキーブラッシュ」登場
実は昨今、画材として「筆ペン」が注目されているのをご存知だろうか? 多くのアーティストがカラーインクの筆ペン=カラーブラッシュを作品作りに使うなど、世界的に人気が高まっているのだ。
そんなカラーブラッシュブームの中、再びぺんてるから投入されたのが、あのミルキーインクと同様の不透明パステルインクを搭載した筆ペン「ミルキーブラッシュ」である。
ぺんてる
ミルキーブラッシュ
各500円(税別)
試しに書いてみると、間違いなく“ハイブリッドミルキーのあのインクっぽさ”を感じられるはずだ。黒い画用紙などの上に書いても下地をしっかり隠ぺいして、くっきりとミルキーな発色が楽しめるようになっている。
さらに、コシの強い筆先からグイグイと塗り広げていく楽しさもあって、かなり遊べそうな印象だ。
ただ、かつて実際に「ハイブリッドミルキー」を使っていたなら、塗ってみて「ちょっと色が薄い?」と感じるかも知れない。
というのも当然で、「ミルキーブラッシュ」用のインクは、当時の発色よりもかなりあっさりめにチューニングされているのだ。筆ペンはボールペンよりもインクの流量が大きいため、ミルキーインクをそのまま使うと濃すぎて大変なことになる。そのため、筆ペンで面塗りしやすい濃度、派手になりすぎない色味、最適な隠ぺい力といった最適化を施してあるというわけだ。
とはいっても、くっきりした強い発色が醍醐味ではあるので、筆塗りする前にはまず軸をしっかりシャカシャカと振っておきたい。インクの攪拌を入念に行うことで顔料を均質化し、ムラのない発色が発揮されるのだ。あとは、軸後端のノックボタンを何度か押して、しっかりインクを押し出すこと。特に黒など濃い色の紙に書く場合は、筆先にインクが溜まるぐらいノックした方が、隠ぺい力を発揮しやすい。
とにかくインクをリッチにドバッと使うのが、「ミルキーブラッシュ」を堪能するコツと言えそうだ。
筆ペンとしての書き心地は、さすがぺんてるといったところ。コシのある筆先は、細書きから大胆な広塗りまで自由に使い分けられる。ミルキーインクも粘りすぎず程よく塗り広げられるので、画材としても充分に実用的だ。
紙工作の彩色や、メッセージカード作りを派手に目立つよう仕上げたいのであれば、強くオススメできる。
ぺんてるといえば、修正液と筆ペンに関して高い技術を持つメーカー。つまり、修正液を元にしたミルキーインクと筆ペンの組み合わせは、まさに「作って当然」レベルの話なのである。
それでも、筆ペン用にインクを最適化するなど、完成までには5年の歳月がかかったという。「レジェンドボールペン直系の子孫」にぎゅっと詰まったぺんてるの技術を、ぜひ体験してみてほしい。