日本三大祭りの一つで、1100年を超える歴史を持つ祇園祭は、日本国内はもちろん海外でも広く知られている祭礼です。海外でもユネスコ無形文化遺産に「山・鉾・屋台行事」の一つとして2009年に登録されており、諸外国にも広く知られています。
平安時代の「祇園御霊会(ごりょうえ)」が起源。全国に流行した疫病の病魔退散を祈願したことが始まりで、初夏の京都で1か月にわたり祭事が繰り広げられます。長い歴史の中で騒乱や戦争、大火などで中断した時期もありますが、1000年を超えて受け継がれてきた壮大な祭礼では、古今東西の芸術の粋を極め、人々の祈りが込められた神輿や山鉾などが都大路を彩ります。
祇園祭の名称は京都の八坂神社が過去に祇園社の呼称であったことに由来。日本全国に2000社以上の八坂神社が存在していると言われています。日本全国津々浦々まで広がる主祭神「スサノオノミコト」を祀る祇園信仰は、各地の神事として日本人の精神に深く根付いてきました。
京都市では2023年3月以降に文化庁が本格稼働を開始する予定。明治時代以降初の省庁移転であり、文化の力による地方創生・地域文化の掘り起こしによる文化芸術の振興などに大きな期待が寄せられています。京都は海外の旅行誌や観光専門家からも非常に高い評価を得ていますが、アジア圏内はもちろんのこと世界各地の著名観光地と比較しても群を抜いた存在。その中で祇園祭は世界中の京都ファンが一度は目にしたいと憧れるものです。
コロナ禍の祇園祭は、日本各地の他のお祭りや行事と同様に、感染防止のため縮小催行を余儀なくされました(2年連続で山鉾巡行が中止)。また、度重なる国内旅行者の移動制限や海外旅行者の入国制限により、関連する観光産業にも大きなダメージが。
しかし2022年、山鉾巡行が約3年ぶりに執り行われました。これは、復活に向け祇園祭に携わる人々の不断の尽力があればこそ。多くの市民や観光客らが待ち望んでいたことが、当日の人出や有料観覧席がほぼ満席であったことからも伺えます。
祇園祭の完全復活を心待ちにしていたのは日本人だけではありません。山鉾巡行を観覧していたフランス人観光客は、外国人入国制限下において、この記念すべき日に足を運べた幸運をかみしめていました。日本の観光業は長期間コロナ禍で苦しみましたが、日本政府は2022年10月に外国人観光客の個人旅行を解禁し、空港の水際対策を大幅に緩和。今後もさまざまな感染症の発生やコロナ禍の再燃可能性も当然残されていますが、1000年を超えて疫病退散を祈ってきた祇園祭の復活は、日本の文化を形づくる全国のさまざまな祭りにもプラスの影響があったのではないでしょうか?