〜〜相鉄・東急新横浜線「新横浜駅」を報道公開(神奈川県)〜〜
来年3月に神奈川東部方面線最後の未開通区間「相鉄・東急新横浜線」が開業する。先日、ほぼ完成した新横浜駅が報道陣に公開された。
開業4か月前にもかかわらず、すでに新横浜駅への車両の乗り入れ試験が始められていた。この日に発表された運行の詳細をレポート、さらに期待高まる新横浜駅を探検気分でめぐってみた。
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【新駅探訪レポート①】神奈川東部方面線のこれまでの経緯
来春3月に開業するのは「相鉄・東急新横浜線」の営業キロ10kmの路線だ。内訳は相鉄新横浜線・羽沢横浜国大駅〜新横浜駅間(営業キロ:4.2km)と、東急新横浜線・新横浜駅〜日吉駅間(営業キロ:5.8km)で、新横浜駅が2社の境界駅となり、列車の相互乗り入れが行われる。
この相鉄・東急新横浜線は「神奈川東部方面線」の一部区間として計画された。「神奈川東部方面線」の概要を見ておこう。
「神奈川東部方面線」は2000(平成12)年に運輸政策審議会で、相模鉄道の二俣川駅〜新横浜駅〜東急東横線の大倉山駅間の路線計画が発表されたことに始まる。2006(平成18)年6月には国土交通省が「相鉄・JR直通線」を、ついで「相鉄・東急直通線(相鉄・東急新横浜線)」の営業構想を認定する。2010(平成22)年3月25日には神奈川東部方面線の「相鉄・JR直通線」の起工式が行われ、2013(平成25)年2月には「相鉄・東急直通線」の土木工事が着手された。
「相鉄・JR直通線」の工事が先に進められたこともあり、2019(令和元)年11月30日に、相鉄の西谷駅とJR東海道貨物線の横浜羽沢駅(貨物駅)付近を結ぶ路線が開業し、JR線と相鉄線との間で相互乗り入れ運転が開始された。
「相鉄・JR直通線」の開通時に、JR貨物の横浜羽沢駅に隣接して羽沢横浜国大駅が開業。同駅の先に分岐ポイントが設けられ、新横浜駅方面へ「相鉄・東急新横浜線」の延伸工事が進められた。
ちなみに、「神奈川東部方面線」は都市鉄道の利便性をより高めようと設けられた『都市鉄道等利便増進法』に基づく整備路線として計画された。『都市鉄道等利便増進法』では「受益活用型上下分離方式」というシステムが取り入れられ、鉄道事業者のみに大きな負担がかかることのないように考慮されている。
今回の新路線建設では、国と地方自治体がそれぞれ総事業費の3分の1を補助、残り3分の1を整備主体(「神奈川東部方面線」の場合は『鉄道建設・運輸施設整備支援機構』)が資金調達して鉄道施設の整備を行った。完成後に列車運行を行う鉄道事業者は、整備主体(『鉄道建設・運輸施設整備支援機構』)に、受益相当額の施設使用料を支払うシステムで、都市鉄道をより造りやすくし、また利便性を高めるため取り入れられた制度だ。
一見すると難しく感じるシステムだが、要は鉄道を建設し設備を所有する持ち主と、運行する鉄道事業者が異なるということ。鉄道事業者は、持ち主に施設使用料を払って列車を運行するわけである。
上の写真は羽沢横浜国大駅が開業する前の2019(令和元)年3月28日の報道陣に公開された時のもの。現在は同位置に施設が建ち撮影できないが、分岐ポイントがよく分かる。4本の線路のうち、「相鉄・JR直通線」は左右両端の線路で、分岐して中央のトンネルへ入る2本の線路が、来春に開業する「相鉄・東急新横浜線」の線路だ。
新線の工事は、2021(令和3)年4月にまず土木構造物がつながり、今年の7月に新横浜駅でレール締結式が行われた。さらに工事は進められ、工事の着手からちょうど10年となる来春3月(開業日は未発表)に相鉄・東急新横浜線が開業することになる。
【新駅探訪レポート②】西口の円形歩道橋下に開業する新横浜駅
11月24日に報道公開されたのは相鉄・東急新横浜線の新横浜駅だ。地下駅のため地上からは新しい駅がどこに設けられているか分かりづらい。
筆者は何度か工事中に新横浜駅前に足を運んだが、道路上で工事が行われていたものの、どのあたりが駅になるのか見当がつかなかった。今回の公開でそうした道路下の駅の姿が明らかになった。
駅が設けられるのは、新横浜駅の西側に並行して走る環状2号線(主要地方道)と宮内新横浜線(都市計画道路)が交差する「新横浜駅交差点」附近。JR新横浜駅の新幹線側駅前広場の2階部分につながる歩行者デッキ(ペデストリアンデッキ)の「円形歩道橋」が目印となる。「円形歩道橋」を下りると、新横浜駅への入り口がいくつか設けられていた。今回は交差点の北西側にある7番出口から地下へ入る。エレベーター、エスカレーターの稼働前ということもあり、地下駅へ階段をひたすら降りて行くことになった。
「相鉄・東急新横浜線」の新横浜駅は地下4層構造になっている。ちょうど横浜市営地下鉄ブルーラインの新横浜駅ホームが地下2階にあるため、新しい駅のホームはさらに2階ほど掘り下げた深さ35mの地下4階部分に設けられた。
環状2号線の中央部などから掘り進め、地上を走る車などの走行に影響のないように、徐々に地下4層の新駅造りが行われていたわけである。
【新駅探訪レポート③】新幹線・横浜線の乗換えは南改札から
地上から入ると地下1階に改札口がある。新駅の改札口は北と南にあり、北改札が東急、南改札が相鉄の管理運営スペースに分けられている。報道陣はまず東急側の北改札から入ることになった。案内板などを含めてほとんどの内装工事が終了していたが、自動改札機の設置はこれからとなる。
新横浜駅で東海道新幹線やJR横浜線に乗り換える時は、相鉄線側の南改札口の利用が便利で、地上部に出て歩行者デッキを上がって行き来することになる。また、横浜市営地下鉄との乗り換え用に新しい改札口も設けられた。
ちなみに、南改札と北改札では内装が異なる。羽沢横浜国大側の南改札は「レンガ+ダークグレー」。日吉側の改札口、北改札は「ライン照明+白色基調のデザイン」で表現されていて、それぞれお洒落な造りとなっている。
【新駅探訪レポート④】相鉄・東急の直通運転ルートが発表される
報道陣はまず北改札から地下2階に降りた。ここには機械室や配電室、空調室等が設けられていて、エスカレーター、エレベーターで通り抜けるフロアだ。
さらに地下3階へ。やや広い空間となっていて、このフロアで新線、新駅の工事概要、および開業後の運転計画などが発表された。
発表された新線の運行ポイントをあげておこう。
◇1時間あたりの最多本数
・相鉄11本(各線の本数:相鉄本線4本、いずみ野線7本)
・東急16本(各線の本数:東横線4本、目黒線12本)
相鉄ではいずみ野線、東急では目黒線からの新線乗り入れが多くなることが明らかになった。相鉄線からは新横浜駅行き、新横浜駅発の相鉄線行きの列車も設定される。また東急目黒線へ直通する12本のうち最大5本が新横浜駅始発と発表された。
◇相鉄・東急間の乗り入れパターン
相互乗り入れは相鉄本線と東急目黒線、相鉄いずみ野線と東急東横線を基本とする。ただし、このパターンは朝の通勤時間帯の一部列車は除くとされた。
◇西谷駅始発列車を設定
相鉄本線と新線が分岐する西谷駅での接続をスムーズにするため、西谷駅始発の横浜駅行き、また横浜駅発の西谷駅行き列車を設定する。
相鉄本線、相鉄いずみ野線では、これまで横浜駅との間を走る列車がメインだったものの、横浜駅方面へ行く場合には、西谷駅で乗り換えが必要な列車が多くなることに。どのぐらいの本数になるか発表はなかったが、ふだん横浜駅を通勤・通学で利用する人にとって気になるポイントになりそうだ。
◇主な駅間の所要時間(最速列車の場合)
・相鉄線内から新線方面:二俣川駅〜新横浜駅11分、海老名駅〜目黒駅53分、湘南台駅〜渋谷駅51分。
・新線〜東急方面:新横浜駅〜目黒駅23分、新横浜駅〜渋谷駅25分、新横浜駅〜自由が丘駅15分
新線を使えば、相鉄線から新横浜駅への行き来がかなり便利になる。また山手線沿線、東急沿線から新横浜駅へ行きやすくなる。東海道新幹線の新横浜駅の乗降客は今でも多いが、さらに増えることになるのだろう。
◇他社からの乗り入れ列車
相鉄・東急間はこのように乗り入れに関して基本方針がまとまったが、東急東横線、東急目黒線には他社からの乗り入れる列車が多く走っている。この他社の車両の乗り入れ列車がどのくらいになるのかは最終調整中だそうだ。
【新駅探訪レポート⑤】ホーム2面に線路3本という駅の構成
さて、新線の運行形態などが発表された後に、新駅で最も気になるエリア、地下4階のホーム階へ降りてきた。ホーム全長は205m、幅は最大約30mと巨大な駅空間が広がる。
ホームは島式で2面3線構造だ。つまり中央の1線は左右にホームがある構造となっている。2番・3番線の間の線路は、折返しおよび始発列車用なのであろう。ホームの長さは205mということなので、最長10両編成の列車の着発が可能となっている。相鉄および東急の車両の最長編成10両に対応しているわけだ。ちなみに相鉄の車両は20000系が10両で、21000系が8両。東急の車両は東横線が8両か10両、目黒線の車両は6両か8両となっている。
【新駅探訪レポート⑥】トンネルの先の光とポイントが気になる
日吉駅側と羽沢横浜国大駅側の両方のトンネルがどのように延びているのか気になるので、ホーム先端部まで行ってみた。
新横浜駅から先、東急電鉄の路線となる日吉駅側はポイントが複雑に交差しており、中央の線路から左右の路線へ切り替わるポイントでは信号機が青、赤、黄色に光っていた。線路は次の新綱島駅へ向けて、坂を上がっていく。
一方の相鉄、羽沢横浜国大駅方面は駅の先で大きくカーブしており、トンネル内には均等に照明が設置されているが、こちらには信号機がないせいかモノトーンな世界だった。
ちなみに、「相鉄・東急新横浜線」の工事では新技術が用いられている。新横浜駅〜羽沢横浜国大駅間の羽沢トンネルで用いられた手法と、新横浜駅の工事で使われた道路・地下鉄直下での施工方法が土木学会技術賞に輝いたそうだ。それだけの最新技術が用いられて新線と新駅が造られているわけだ。
羽沢横浜国大駅側のトンネルを望遠撮影していたところ、暗い中、ヨコハマネイビーブルーのお洒落な相鉄20000系が近づいてきた。20000系は10両編成で東急東横線への乗り入れが可能な車両である。
【新駅探訪レポート⑦】この日入線した東急・相鉄線の車両は?
筆者は知らなかったが、すでに新横浜駅への車両の入線が始まっていた。最初の駅への入線は10月10日の深夜のことだったそうだ。11月3日からは乗務員訓練などのために「習熟運転」が始められていた。
地上駅、地上路線ならば、鉄道ファンがSNS等でアップして、一般の人たちにも広く知られることになるのだが、立ち入ることが出来ない未公開の地下の路線、地下の駅ともなるとそうした情報も流れない。試運転の開始から営業開始に至る5か月間、長い期間をかけてさまざまな運転確認が行われている。新線の開業まで地道な作業が続けられているというわけである。
報道公開があった日、報道陣の前に姿を現した車両を見ておこう。1時間ほどの間に3編成の入線があった。まずは相鉄20000系。
さらに東急の5050系4000番台。5050系は東急東横線用の車両で、10両編成の場合には4000番台となり4000〜という数字が正面に記される。この日に入線してきたのは5050系4000番台の中の4110編成「Shibuya Hikarie号」。渋谷ヒカリエの開業に合わせた1編成のみのラッピング車両で、ゴールドカラーが特徴の編成だ。レアな車両で鉄道ファンの人気も高いが、報道公開にあわせて東急電鉄が車両選択をしたような粋な計らいだったように思う。
【新駅探訪レポート⑧】それぞれ新線入線に向け準備が進む
「Shibuya Hikarie号」が東急線側に戻った後に入ってきたのは東急3000系。東急目黒線から東京メトロ南北線や都営三田線へ乗り入れる車両だ。入線してきた3000系はこれまでの車両とやや異なる編成だった。
東急目黒線を走る東急車両は3000系、3020系、5080系の3タイプがある。このうち3020系、5080系(すべて8両化済み)は新線開業に向けて6両から8両化する工事が順調に進められてきた。3000系の8両化は他の2タイプに比べてやや遅れ気味だったが、この日に入線してきた3109編成をはじめ徐々に8両化が進められようとしている。
8両化にあたり4号車と5号車が新製されたのだが、在来車は座席がえんじ色、新しい車両は座席が明るい緑色に変更され、床も木目調の2色とお洒落な姿に変更されている。
【新駅探訪レポート⑨】新線開業日は3月のいつになるのか?
さて、新しい新横浜駅を訪れて気になったことが2つある。
1つは3月開業予定とは言われているものの、正式な開業日が発表されなかった。4か月前とすぐ先のように感じるのだが、改めて広報担当者に聞いてみると「詳細が決まりましたら改めて」という話だった。
これはJRグループの春のダイヤ改正日と同じ日にしているためと考えてよいのだろう。例年12月中旬(第3金曜日が多い)にダイヤ改正日が発表される。その前には各社間の〝協定〟によって発表ができない。例年3月の第2・第3土曜日が通例のため、来年の3月11日(土曜日)もしくは3月18日(土曜日)ということになりそうだ。
もう1つは、相鉄、東急車両以外の会社の車両がどのぐらい新線に乗り入れるかであろう。今年の3月31日に東急電鉄の元住吉運転区で「鉄道7社局の車両撮影会」が報道陣に向けて行われたが、そこにずらりと並んだ車両が、乗り入れる車両のヒントになりそうだ。
この日に集まったのは埼玉高速鉄道2000系、都営三田線6500形、東京メトロ9000系(上記写真の左から)。そして東急電鉄3020系、相模鉄道20000系、東武鉄道50070型と西武鉄道40000系が並んだ。このうち西武鉄道の車両はこの時点で乗り入れはないと発表されており、となると相鉄、東急以外の4社局の車両が、少なくとも新横浜駅までは乗り入れることになりそうだ。
ちなみに新横浜駅の報道公開の時、撮影時間終了後に東京メトロ南北線の9000系が入線し、その車内では機器の調整などをする様子がうかがえた。この東京メトロ南北線の車両も間違いなく新線に入線してきそうである。
いずれにしても、「相鉄・東急新横浜線」の開業は、東京、神奈川東部の人の流れを大きく変えそうだ。東海道新幹線の新横浜駅を利用する時にも非常に便利になる。さらに相鉄と東急両沿線で目新しい車両が走り出しそうで、鉄道好きにとっては楽しみな3月となりそうだ。