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2022/11/19 21:00

連なる鳥居に宍道湖の眺め、そして出雲大社−−“映える”「ばたでん」歴史&美景散歩

おもしろローカル線の旅99〜〜一畑電車(島根県)〜〜

 

連なる赤い鳥居の先を横切る電車、背景には低山と青空が写り込む。ばたでんこと島根県を走る一畑電車らしい光景である。こうした〝映える〟光景が点在する一畑電車の沿線。今回は北松江線の一畑口駅から終点の松江しんじ湖温泉駅までの区間と、大社線の川跡駅(かわとえき)から出雲大社前駅間の注目ポイントをめぐってみたい。

*2011(平成23)年8月1日、2015(平成27)年8月23日、2017(平成29)年10月2日、2022(令和4)年10月29日の現地取材でまとめました。一部写真は現在と異なっています。

 

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この時代に増便?平地なのにスイッチバック?ナゾ多き出雲の私鉄「ばたでん」こと一畑電車の背景を探る

 

【ばたでん旅が続く①】斬新な券売機に悪戦苦闘!

一畑口駅は前回紹介したように、平地なのにスイッチバックする珍しい駅である。この駅から松江しんじ湖温泉方面への電車に乗ろうと駅舎へ。筆者は「1日フリー乗車券」を購入したので、切符を新たに買う必要がなかったが、高齢の女性が券売機の前で困り果てていたので手助けすることに。

 

一畑電車の主要駅には最新型の券売機が取り付けられている。筆者も初めて目にした券売機だったが、手助けしようとしてスムーズいかずにまごついてしまった。一畑口駅へやってくる前にも、電鉄出雲市駅でも切符が購入できず駅員に聞いている女性を見かけたのだが、なぜだろう。

 

考えられるのは、切符を買うまでの選択が多いことだ。まずは片道か往復かのボタン選択。次に行先の駅にタッチすると何枚必要か画面に表示されるので、1人ならば「1」を押す。筆者もここまではできたのだが、今度はコイン投入口にお金が入らない。この後に現金かカードかの選択ボタンを押す必要があったのだ。

 

さらに、この券売機は指で画面に触れずとも近づけるだけで感知する。これもとまどう理由だろう。慣れればそう難しくなさそうだが、この券売機が初めての人や高齢者はややてこずる可能性があると思った。

↑趣ある木造駅舎の一畑口駅。一畑薬師の最寄り駅でもある。駅舎内には最新式の券売機が設置されていた(左)

 

さて、無事に切符購入の手伝いも終えて松江しんじ湖温泉駅の電車に乗り込む。電鉄出雲市駅方面からやってきた電車は前後が変わり、この駅からは後ろが先頭になって走り始める。駅からは左に大きくカーブしてまずは宍道湖を進行方向右手に見ながら、次の伊野灘駅(いのなだえき)に向かった。

↑一畑口駅(手前)を発車すると左カーブして松江しんじ湖温泉駅方面へ向かう。民家の間から宍道湖のきらめく湖面が見通せた

 

【ばたでん旅が続く②】映画の舞台になった趣満点の伊野灘駅

ホームが一つの伊野灘駅は映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(以下『RAILWAYS』と略)で主要な舞台として登場した駅だった。駅の入口は国道431号とは逆側にあり、細い道をたどりレトロな石段を上がる。小さな待合室の手前には桜の木が1本あって、春先はさぞや絵になるだろう。

 

映画『RAILWAYS』の主人公の故郷の駅という設定で、映画の舞台としてもぴったりの駅だ。国道側から見ると草が生い茂りホームが良く見えないが、裏に回ってみるとこの駅の魅力が分かるはずである。

↑伊野灘駅に近づく3000系(すでに引退)。写真の左下から駅ホームに入る。右側には国道431号が並行して走っている

 

【ばたでん旅が続く③】北松江線のハイライト!宍道湖の美景

一畑口駅から伊野灘駅を過ぎてしばらくは、右手に宍道湖を横に見ての行程となる。あくまで国道431号越しだが、国道よりも線路が高い位置を通っている区間からは、湖の眺望がよりきれいに見える。

 

周囲約45kmの宍道湖は全国で7番目に大きな湖とされる。淡水湖ではなく、わずかに塩分を含む汽水湖で、他では見られない魚介類が生息している。収穫されるのはスズキ、シラウオ、コイ、ウナギ、モロゲエビ、アマサギ、シジミ。この7つの魚介類は「宍道湖七珍(しんじこしっちん)」と呼ばれ、珍重されている。

 

一畑電車の車内からも、小船が係留されている港が見える。見る場所によって宍道湖の景色が微妙に異なり、湖ならではの穏やかな風景が続く。

↑宍道湖の風景は場所ごとに趣が異なる。写真は津ノ森駅〜高ノ宮駅間で、湖畔に小船が一隻のみ引き上げられていた

 

北松江線は伊野灘駅〜津ノ森駅間で出雲市から松江市へ入る。津ノ森駅近くには「ワカサギふ化場」もあり、小船が何艘も係留されている様子が車内から見えた。

 

宍道湖を見ながら進むと、松江フォーゲルパーク駅に到着した。駅の向かいに「松江フォーゲルパーク」の入口があり、駅前が同パークの駐車場になっている。“湖畔に広がる花と鳥の楽園”がPR文句で、国内最大級の大温室には一年を通して花が満開で、約90種類の世界中の鳥たちともふれあうことができる。入園料は大人1500円で、開園は9時〜17時(4/1〜9/30は17時30分まで)、年中無休で営業している。何より駅前というのがうれしい。

 

松江フォーゲルパーク駅、秋鹿町駅(あいかまちえき)、長江駅と、宍道湖の眺めを楽しみながらの旅が続くが、長江駅を過ぎると車窓風景が変わっていく。

↑秋鹿町を発車して長江駅へ向かう5000系。宍道湖側から国道431号、一畑電車、そして民家が並ぶ風景がしばらく続く

 

長江駅を過ぎると北松江線は湖畔から離れ、朝日ヶ丘駅へ到着する。駅の北側には新興住宅地が連なり、南には家庭菜園が楽しめる湖北ファミリー農園という施設も広がる。

 

【ばたでん旅が続く④】最後の一駅間に沿線の魅力が凝縮される

朝日ヶ丘駅の次は松江イングリッシュガーデン駅という、観光施設の駅名となっている。当初、庭園美術館が設けられたが、後に日本有数のイングリッシュガーデンに模様替えされた。だが、現在は同ガーデンが休園となり再開の目処はたっていない。同沿線では「松江フォーゲルパーク」があり、なかなか営業面での難しさがあったのかもしれない。なおガーデンに隣接するカフェレストランなどは営業している。

 

松江イングリッシュガーデン駅から、終点の松江しんじ湖温泉駅まで4.3kmとやや距離がある。松江イングリッシュガーデン駅付近に建ち並んでいた民家は途切れ、再び国道431号と並行して北松江線が走るようになる。宍道湖が南西側に位置し、天気の良い日中は光が順光になるため、湖面と湖を挟んだ対岸が良く見渡せる区間となる。この駅間は変化に富み、北松江線の魅力が凝縮されているようだ。

↑松江イングリッシュガーデン駅〜松江しんじ湖温泉駅間を走る2100系(色変更前のもの)。宍道湖の風景もこのあたりが見納めとなる

 

再び住宅地が見え始めると、間もなく湖側に大型の温泉ホテルが建ち並び始め、電車は終点の松江しんじ湖温泉駅のホームに滑り込んだ。始発の電鉄出雲市駅からは約1時間、一畑口駅からは約30分だった。

 

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