本・書籍
2022/12/21 21:30

大掃除前に読んで欲しい! おいでやす小田さんのエッセイ『僕はどうしても捨てられない。』

大掃除の時期になると、去年も捨てられなかったなぁ〜と思うモノが顔をのぞかせます。私にも、大学生時代から着ている穴あきのジャージ、私が生まれた時に母親が買ったラック、手紙や写真など多くのアイテムが、毎年大掃除の時期をかい潜り生き残っています。

 

今回ご紹介する一冊は、2022年も大活躍だったおいでやす小田さんのエッセイ『僕はどうしても捨てられない。』(おいでやす小田・著/ワニブックス・刊)。ひたすら捨てられないモノが紹介されているだけの本なのですが(笑)、愛おしくなってしまう一冊でした。

「物持ちがいい」の次元を超えているモノたち

『僕はどうしても捨てられない。』には、40種類の捨てられないモノたちが紹介されています。目次だけみていると、キングオブコントのTシャツやファンレター、ネタ帳など、さすが芸人さんな逸品も。しかし、読んでいくうちに「これって捨てていいやつでは?」と思うようなモノが登場してきます。最初に登場するのが、ガス式の炊飯器なのですが、20年以上使い続けているモノなのだとか。

 

テレビで有吉(弘行)さんと櫻井(翔)くんにこの炊飯器を見せたら、ドン引きされたんですよ。僕は「すげえ〜! 年代ものだね」とか、「こんなのまだ使ってるのかよ〜(笑)」っていうリアクションを期待してたんですけど、「いや、これはダメだよ……」って冷静に言われまして。それで「あっ、これはさすがに見た目的にあかんねや。普通にこんなん、使えへんねや……」って気づきました。けっこうショックでしたよ。

(『僕はどうしても捨てられない。』より引用)

 

本書には、この炊飯器の写真も掲載されているので、ぜひご覧ください! 私も正直、引きました(笑)。でも、ガスで炊くご飯は絶品なのだとか。おいしく食べているなら、せめて見た目を綺麗にしたり、大事に使ったりすればいいのに……。小田さんの優しさも伝わりますが、ちょっと抜けているところも小田さんらしいと感じてしまうのでした。

 

インクのなくなったペンも、捨てられない?

いろんなモノに愛情を込めて捨てずにいる小田さんですが、さすがに「これは捨てていいよ」と思ってしまったのが、書けなくなったペン。小田さん的には、いつか奇跡が起こって書けると、残しているそうです。

 

太いマジックも同じです。カスカスになってインクが出そうにないんですけど、天気によってはにじみ出てくるかもしれないし、奇跡的に1年に1日だけ復活するかもしれない。オカルトみたいな話になってますけど(笑)。

(『僕はどうしても捨てられない。』より引用)

 

いや、捨ててぇぇ〜〜〜〜〜!! と、小田さんを超える大声で叫んでしまった一文でした。奇跡的に1年に1日だけ復活するペンがあったら逆に欲しいですけどね(笑)。正直、ペンって100円程度で買えるじゃないですか。小田さん的には、新しいペンがあれば便利という気持ちより、捨てるのがかわいそうな気持ちが優っているのかもしれません。捨てるのは一瞬ですが、とっておくのは一生。この葛藤を胸の中でずっと抱えているのが小田さんなのかな? と思いました。

 

自分の家の中のモノたちも振り返りたくなる

帯には、ダウンタウンの浜田さんが『アホちゃうか、この本まず捨てろ!』と書かれてありますが、40種類ものモノに対して、「まだ捨てられないな〜」「もしかしたら〇〇するかも」と書き続けられていくと、そんな気持ちになるのもわかります(笑)。

 

しかし、どれもちゃんと捨てない理由があるんですよね。ペンみたいにとっぴな理由もありますが、小田さんなりのポリシーで取ってあることがわかります。

 

大掃除前に『僕はどうしても捨てられない。』を読むと、2つのタイプに分かれるかもしれません。1つが、私も捨てられないと大掃除しない人。もう1つが、浜田さんのようにイライラしてしまい、大掃除に拍車がかかってしまう人。ある種、踏み絵のような一冊かもしれません!

 

小田さんのエッセイは語りかけるように優しい言葉が多く、脳内で小田さんの声が勝手に再生されるような文体です。師走の疲れ切った体でもすんなり読めますので、ぜひ一読いただき、心の大掃除もしちゃいましょう!

 

【書籍情報】

 

僕はどうしても捨てられない。

著者:おいでやす小田
発行:ワニブックス

苦節20年、長かった下積み時代。モノも人生も捨てたもんじゃないーモノを捨てられない男の愛着と哀愁の半世紀。

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