筆ペンを最後に使ったのが、いつのことだったかを覚えている人は少ないはずだ。最大にしてほぼ唯一の機会だったのが、年賀状だろう。それも宛先がプリントラベルになったり、そもそも年賀状そのものを出さなくなったり。筆ペンを使うことなんかもうないよ、と放り出してしまう気持ちも分かる。
ただ、筆者の個人的な好みで言えば、筆ペンはけっこう面白い筆記具だと思う。もちろん、手帳を書いたり納品書にサインしたりするには適さないが、勢いのいいグワッとした文字が大きく書けるという性質は、実はアイデア出しなど思考のアウトプットをするのにも、意外と適しているのである。
そういったノートに文章を書くのに使いやすい、最新の筆ペンを紹介したい。コレ、筆ペンを放り出しちゃった人でも気軽に使えて難しくない、かなり特異な筆ペンなのだ。
毛筆が苦手でも書きやすくなった、新しい毛筆タイプ筆ペン「ふではじめ」
筆ペンには大別して「毛筆タイプ」と、ウレタンなど樹脂チップの「硬筆/軟筆タイプ」がある。
後者の硬筆/軟筆タイプは、ざっくり言えばサインペンの亜種みたいなもので、誰でも簡単に“筆文字っぽい字”が書けて使いやすい。圧倒的に初心者向けだ。
対して毛筆タイプは、表現の幅が広いが、筆先をコントロールするのが難しくて熟練者向け……だったはずが、2022年7月に発売された「ふではじめ」は、毛筆タイプにして初心者にも書きやすい工夫がされているのである。
ぺんてる
ぺんてる筆 ふではじめ
400円(税別)
その最大のポイントは、新開発の穂先(ほさき)にある。お馴染みの中字筆ペンと比較すると、サイズは長さ・太さともに1/2程度。かなり小さく、つまり文字を書く際の小回りが利くということになる。
さらに樹脂毛自体も従来から3倍ほど硬い(メーカー公称値)とのことで、実際に書いてみるとかなりの弾力が感じられる。いわゆる“コシが強い”というやつだ。
筆ペン初心者が毛筆タイプで苦労する原因は、穂先が長くてコントロールしづらく、弾力がなくてやわらかすぎるから安定感がない、というのが大半である。ならばその逆で、短くてコントロールしやすく、コシがあって安定した穂先ならば、書きやすくなって当然、という話なのだ。(筆者の個人的な好みからすると、もうちょっとコシ強めでもいいんだけど。)
ただ、そうなってくると「硬筆/軟筆タイプとなにが違うの?」と思われるかもしれない。しかし「ふではじめ」はあくまでも毛筆タイプ。樹脂毛を束ねた穂先なので、ウレタンチップと比べると弾力は少ない。その代わり、毛筆タイプのメリットである抑揚のつけやすさは充分にあるのだ。
並べてみると、
・書きやすさ……硬筆 > 軟筆 >「ふではじめ」> 毛筆
・抑揚のつけやすさ……毛筆 >「ふではじめ」> 軟筆 > 硬筆
という順なので、つまりはこれまでの毛筆と硬筆/軟筆の間をイイ感じに埋める存在、という形になるわけだ。
さらに、速乾インクで扱いやすい
書き心地に加えて、特筆すべき点がある。これは最近の筆ペン全体のトレンドでもあるのだが、染料系の速乾インクを搭載しているのだ。
書いてから1秒ほどで乾いてしまう速乾インクは、インクだくだくの筆ペンとの相性が非常に良い。筆跡をうっかりこすって汚れが発生する確率が低くなるだけでも、使いやすさは大幅アップとなる。
特にアイデア出しなどでノートに文章をつらつらと書き連ねる場合は、手でこすっても問題ない速乾インクのありがたみを感じるはずだ。
最後に、個人的に「へぇー」と感心したのが、購入してキャップを外したらすぐ書き始められたこと。ほとんどの毛筆タイプは、初期状態ではインクカートリッジと穂先が接していないため、ユーザーが使い始めにインクを浸透させる作業が必要となる。そういった手間なく、開封して即使える仕組みはユーザーフレンドリーだろう。これも筆ペン初心者には嬉しい仕組みだ。
少なくとも現行品の毛筆タイプの中では、この「ふではじめ」が最もカンタンに書ける筆ペンだと思う。