コロナ禍以降、働き方が著しく多様化している中、イギリスでは最近、「週に4日働いて、残りの3日は休み」となる週休3日制に関する大規模な実験が行われました。一般的な週休2日制から3日制に変わることで、企業の生産性や従業員の心身にどのような変化が見られたのでしょうか?
今回の実証実験は2022年6月から12月までの6か月間、イギリスにある61の企業で働く約2900人を対象として行われました。これまでの週休2日制に休暇をもう1日どのように追加するかは、業界や企業によって変わり、例えば、金曜日を休みにして、金曜・土曜・日曜は3連休とする企業もあれば、追加の休暇は週の半ばに設定する企業もあります。ただし、どの企業でも従業員に支払われる給料は週休2日制のときと同じ金額でした。
6か月後、ストレスレベルや睡眠などの状態を確認したところ、39%の従業員がストレスを感じにくくなり、被験者の71%で燃え尽き症候群のレベルが低下。不安や疲労感も減少したことが判明したのです。仕事に携わる時間が減ることで、仕事で生じるストレスや疲労を感じにくくなるのは当然と言えるかもしれません。さらに、時間的な余裕が生まれたことで、ワークライフバランスが改善することも判明。「仕事と家庭のことを両立しやすくなった」と答えた人は54%にのぼりました。
週休3日制は従業員にとって多くのメリットがあることがわかりますが、企業側の視点で見ると、週休3日制に移行することで売り上げが低下することが懸念されるかもしれません。しかし実験期間中、参加企業の売上高は1.4%増とほぼ横ばいのまま。前年同月と比べると、売り上げは平均で35%も増加していることがわかりました。2021年のイギリス経済は、パンデミックの影響で経済活動が停滞した2020年より9.4%回復していることから、今回の結果で平均売り上げが35%増加したことは、週休3日制の影響が大きいと言えるかもしれません。加えて、実験に参加した企業を退職しようと考えている人の数が57%減少したことも明らかになりました。
つまり、企業にとってもメリットが大きいと言えるのです。実際、実験終了後も、週休3日制の継続を決めた企業が61社中56社と92%に及び、そのうち18社は恒久的に週休3日制にすることを決めました。
現在、当たり前になっている週休2日制ですが、日本における歴史はそこまで古くありません。国家公務員に完全週休2日制が導入されたのは1992年。それまでは週休1日が一般的でした。また、全国の公立学校が完全週5日制になったのは2002年からで、それ以前は生徒も週に6日通学していました。
それから数十年のときを経て、現在生まれている週休3日制の試み。今回の実験結果を受け、欧米を中心に週休3日制を導入する動きが広がっていく可能性があります。将来、AIなどの最新テクノロジーなどを駆使して、人の仕事をより効率化できた場合、諸外国から「働き過ぎる」と揶揄される日本でさえも、週休3日制の導入について議論しているかもしれません。
【出典】
Autonomy. The UK’s Four-day Week Pilot. February 2023.