プロテインが注目されると同時に、植物性の高プロテイン食品として知る人ぞ知る存在になった「豆腐干(とうふかん)」。古来、中国や台湾で広く使われてきた食品です。今回は、この高プロテイン食品を日常の生活に取り入れられるよう、料理研究家の今別府靖子さんにレシピを考えていただきました。
豆腐干はグルテンフリーの高プロテイン食品
豆腐干は、100gあたり糖質1.8gに対しタンパク質が23gという、グルテンフリーかつ高プロテイン食品。大豆の良質なタンパク質を豊富に摂取できるうえ低糖質なので、麺の代替品としてもぴったりなのです。
「“豆腐” と聞くと柔らかそうに感じますが、しっかり歯応えのある食感です。食後の満腹感があって腹持ちがよく、いつも食べるパスタやうどんの代わりに使えるのも便利ですね」(料理研究家・今別府靖子さん、以下同)
本場中国では、千切りにしたきゅうりとあえて中華マリネにしたり、焼きそばのような味つけにしたりと、アレンジを加えながら日常的に食べられているおなじみの食品。現在日本で購入できるものは、ほとんどが冷凍したタイプなので、買ってストックしておきいつでも使えるのもメリットです。
豆腐干の扱い方は? おいしく茹でるコツ
冷凍してあれば自然解凍し、たっぷりのお湯で5分茹でます。あとは、ざるにあげて、パスタやそうめん、うどんなどと同じ容量で料理すればいいだけです。
※今回は優食の豆腐干を使って調理しています。下ごしらえや調理法は、購入した豆腐干のパッケージにしたがってください。
「コツは、熱湯に入れたあとはすぐにほぐさないこと。2〜3分たってから箸を入れてほぐします。こうすると、麺がぼろぼろになりません。また、豆腐干のいいところは、他の麺と違ってのびないこと! 水分を吸っていかないので、ちょっと前に茹でておいても大丈夫ですし、作ってから少し時間がたってしまっても、他の麺と比べると驚くほど変化がありません。慌てて食べなくてもいいのがうれしいところです」
さっぱりしたものが食べたい朝に。「豆腐干とサバ缶のバジルトマトスープ」
サバ缶を汁ごとたっぷり入れたトマトのスープは、食欲のない朝にぴったりのメニュー。トマトの酸味とサバのだしの旨みが、疲れた胃に沁み入ります。二日酔いの朝、なんとなくだるい! というジメッとした梅雨の朝に食べたいレシピです。
「バジルの香りを楽しみながら食べられる、さっぱりとしたスープです。普段とれない栄養をサバがしっかりサポートしてくれるので、疲れやすいこの時期にぜひ。前の日にスープを作っておいて、朝は豆腐干を茹でるだけにしておくのもいいですよね。お腹の空き具合によって、豆腐干の分量は変えてみてくださいね」
【材料(2人分)】
・豆腐干(細切り/短タイプを茹でてざるにあげておく)……100g
・玉ねぎ……1/2個
・トマト……1個
・にんにく……1かけ
・オリーブオイル……小さじ1
・さばの水煮缶……1缶
・水……400ml
・コンソメ(顆粒)……小さじ1
・塩、こしょう……各少々
・生バジル……2〜3枚
【作り方】
〈下準備〉
・玉ねぎは薄切り、トマトはざく切りにする。
・にんにくはみじん切りにする。
1.鍋にオリーブ油とにんにくを入れて、中火にかける。
「にんにくの香りが立ってきたら、野菜を加えます」
2.玉ねぎとトマトを加えて、2〜3分炒める。
「しんなりしてくるまで、混ぜながら炒めましょう」
3.水とコンソメ、茹でた豆腐干を加えて、ひと煮立ちさせる。
「豆腐干を入れてひと混ぜしたら、次に進みます」
4.サバ缶を加える。
「サバは崩れないよう、最後に入れてさっと混ぜて温まったら、火を止めます」
5.塩、こしょうで味をととのえ、器に盛りつけたらバジルを手でちぎって散らす。
「バジルは食べる直前に。お好みですが、たっぷり散らしてもおいしいですよ」
在宅ワークのランチにいかが?「豆腐干きのこたっぷりクリームパスタ」
平切りタイプを使ったクリームパスタのような豆腐干。同じ100gでも、平切りタイプはかなり食べ応えがあり、パスタよりも硬めで、食べた! という満足感があります。取り合わせたのは、クリームソース。豆腐干にソースが絡んでおいしい一品です。
「ポイントは、干し椎茸(どんこ)を使うこと。生のきのこだけでも作れますが、干し椎茸と、その戻し汁を入れることで、ポルチーニのような旨みと深みがぐっと出るんです。干し椎茸のなかでも肉厚で弾力があるどんこがおすすめですが、お手持ちのものでもかまいません。ベーコンなどを入れてもおいしいですよ」
【材料(2人分)】
・豆腐干(平切りタイプを茹でてざるにあげておく)……200g
・干し椎茸(どんこ)……4個
・まいたけ……100g
・しめじ……100g
・にんにく……1かけ
・バター……20g
・干し椎茸の戻し汁……50ml
・生クリーム……150ml
・塩……小さじ1/3
・粗挽き黒こしょう……適量
・パセリ、粉チーズ……適宜
【作り方】
〈下準備〉
・まいたけとしめじは小房に分ける。
・にんにくとパセリはみじん切りにする。
1.干ししいたけは表示通りに戻し、1cmに切る。
「干ししいたけは、汁気を絞ってから7〜8mm幅に切ります。戻し汁も使うので、捨てないように気をつけて!」
2.フライパンにバターを溶かし、にんにくを加えて香りがたつまで炒めたら、きのこを加える。
「しんなりするまでよく炒めます」
3.干し椎茸の戻し汁と生クリームを加える。
「煮立たせないよう、さっと混ぜます」
4.豆腐干を加え、軽く混ぜ合わせる。
「仕上げに、塩と胡椒で味をととのえます。器に盛りつけたら、パセリと粉チーズをふりましょう」
ヘルシーに済ませたい夕食に。「ニラたっぷり坦々豆腐干」
豆乳で作るスープに、にらやねぎ、にんにくなどの旨みがぎゅっと詰まった坦々風。もはやこれが豆腐で作ったものとは思えない! という驚きの豆腐干レシピです。
「調味料が多いので大変! というイメージがあるかもしれませんが、作り方はいたってシンプル。練りごまがなければ、擦りごまでも代用できます。にんにくやしょうがはチューブのものでも大丈夫。豆腐干を茹でてしまえば、ワンパン(フライパンひとつ)でできてしまうので、ぜひ作ってみてください」
【材料(2人分)】
・豆腐干(細切り/長タイプを茹でてざるにあげておく)……200g
・にら……20g
・豚ひき肉……150g
・ごま油……小さじ1
・長ねぎ……10cm
・にんにく、しょうが……各1かけ
・水……200ml
・みりん、練りごま……各大さじ1
・味噌……大さじ1/2
・豆板醤……小さじ2
・鶏ガラスープの素、しょうゆ……各小さじ1
・無調整豆乳……200ml
・ラー油……お好み
【作り方】
〈下準備〉
・にらは細かく刻み、長ねぎとしょうが、にんにくはみじん切りにする。
・みりん、練りごみ、味噌、豆板醤、鶏がらスープは混ぜて合わせておく(A)。
1.フライパンにごま油としょうが、にんにくを入れて中火にかけ、炒める。
「慌てず、香りが立つまで炒めるのがおいしさのポイントです」
2.豚ひき肉を加えて炒め、ポロポロしてきたら長ねぎを加えてさらに炒める。
「ひき肉がお団子にならないように、崩しながら炒めます」
3.水、A、豆腐干の順に加えながら、1〜2分煮る。
「豆乳は、加熱すると固まってきてしまうので、先に水でしっかり煮込んでおいてから、最後に豆乳を加えます」
4.豆乳を加えてさっと煮立てたら、最後にニラを加えてひと煮たちさせる。
「器に盛りつけたあと、お好みでラー油をかけていただきましょう」ラー油をかけると彩りも鮮やかに。ごまと味噌のコクで、お店のような仕上がりです。
ボディメイクや疲労回復、栄養のことなどが気になってくるこの季節、豆腐干で体のバランスを整えたいものです。体を冷やしがちな夏、温かいレシピでほっとできたらいいですね。
プロフィール
料理研究家 / 今別府靖子
健康と美味しいを基本としたレシピ開発から撮影、コーディネートまで行う。各メディアを始め料理教室やイベントなどでも広く活動。米粉に関しては、娘の小麦アレルギーをきっかけに1999年頃からレシピ開発を始める。震災後の宮城県南三陸町、福島県相馬市への米粉シチューなど炊き出し、学校給食関係者や一般向者向けの料理講習会、米粉食品コンテストの審査員を努めるなど各地で講演やイベント、料理講習会を通して米粉普及活動を行っている。また、米粉のレシピ本と電子書籍も出版している。農水省主体の東京米粉普及推進連絡会(とうきょう米粉ネットワーク)・栃木県米粉食品普及推進協議会に所属。
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