『リング』『スマホを落としただけなのに』シリーズの中田秀夫監督による『禁じられた遊び』(9月8日(金)公開)で、不慮の事故死から怨霊として蘇る“最凶モンスター”美雪を演じるファーストサマーウイカさん。毒舌キャラでブレイクしたバラエティ番組はもちろん、来年の大河ドラマ「光る君へ」など、女優としても大躍進の彼女が挑んだ渾身の役作りについて聞きました。
【ファーストサマーウイカさん撮り下ろし写真】
美雪の気持ちがすごく理解できるんですよ(笑)
──“最凶怨霊モンスター”と呼ばれる美雪役として、出演オファーがあったときの感想は?
ウイカ 美雪は『リング』でいうところの貞子のポジションですし、『リング』と同じ中田秀夫監督の新作ということもあり、「本当に私でいいのかな?」という気持ちが頭をよぎりました。しかも、こういう役って、ミステリアスな雰囲気の方が演じることが多いと思うんですが、私はバラエティ番組の印象が強いですし、やけに長いカタカナ名ですし! なので「本当に私でいいんですか?」と確認しました(笑)。
──そんな美雪のキャラ作りについては?
ウイカ 美雪は生きているときから、いろんなものを抱えていたという悲しいバックグラウンドを汲み取りつつ、地面からよみがえり、這って走って人を襲うパワフルな怨霊なので、私自身は生命力を感じられる気持ちで演じようと思いました。さらに、分かりやすく言えば、年始に売られる福袋を目指して、開店したばかりのデパートを全力疾走する感覚。「どう走ろう?」とか考えずに、本能のまま、狙った獲物を追いかけました(笑)。
──また、美雪の原動力には、重岡大毅さんが演じる夫・直人に思いを寄せた、橋本環奈さん演じる比呂子に対する“嫉妬”が挙げられます。
ウイカ 「あの人、あの作品に出られていいなぁ」「あの子、かわいいなぁ」というように、私にとっての原動力というか、嫉妬もガソリンなので、美雪の気持ちがすごく理解できるんですよ(笑)。息子の呪文というきっかけをもらって生き返って、理性や抑圧されたものがない分、彼女の一番の本能が色濃く出たんだと思います。
──中田監督の演出はいかがでしたか?
ウイカ 事細かくというよりは、イメージの共有みたいなことをしていました。例えば、ビジュアル撮影のときに、「歯を出さない方がいい」とか「ゾンビっぽくならない方がいい」とか話し合ったのですが、監督のこだわりを一番感じたのはネイルの色でした。美雪は指先が印象的に撮られるシーンが多いので、中田監督に「ネイル、どうしますか?」と聞いたら、「黄色のラメで!」と言われたんです。三十路越えた控えめキレイめタイプのファッションの母親が一番選ばない色だと思うんですが、その違和感がよかったらしいんです。私は最後まで、それを理解できませんでしたが、完成した作品を観たら、爬虫類のような気持ち悪い配色になっていて、ゾッとしつつも、納得しました。
シンプルに、フィジカルがしんどかった特殊メイク
──怨霊になった美雪の声については?
ウイカ 現場でもアフレコでも、いろんなパターンをたくさん録りました。かわいい声を出すより、デスボイスみたいに今にも吐きそうな声を出す方が得意なので、「もうちょっと高く」「もうちょっと低く」みたいに、中田監督の要望に応えさせてもらいました。美雪は三形態以上あるんですが、まるでスタジオで歌録りしているようでした(笑)。
──そして、なによりも苦労されたと思われる特殊メイクについては?
ウイカ 4人のスタッフさんと一緒に4時間ぐらいかかる特殊メイクでしたが、現場に入った後、エアスプレーで全身真っ白に塗るんですが、汗をかいたら崩れてしまうし、擦れないよう、行動も最小限に留めていました。そして、お風呂に入って落とすのですが、これが1時間半ぐらい。完成した状態で待機して、撮影が1時間で終わるときもあったので、都度ON/OFFできないと言いますか、ONの時間ばかりでした。いい経験をさせてもらいましたが、シンプルに、フィジカルがしんどかったです(笑)。
──重岡さんや橋本さんらとの現場でのエピソードは?
ウイカ ホラー映画の現場って、どこかシリアスでピリピリしているのかなという勝手なイメージを持っていたんですが、まるでコメディを撮っているような明るくて、笑いが絶えない現場でした。そもそも中田監督がいつもニコニコしていて、癒し系な方なので(笑)。それに加えて、重岡さんや橋本さんはほぼ一発OKみたいな集中力というかスイッチのON/OFFがすごかったです。森のシーンではキャンプに来たかのように楽しかったのですが、蚊に刺されないようにするのが大変でしたね。
──生前から“第六感”も持っていた美雪のように、ウイカさん自身「直感が鋭いかも?」と思われたことは?
ウイカ 例えば、スタイリストさんとテレビ番組の衣装を決めるとき、「これは隣の出演者の方と被るかも?」と思って確認してもらうと、本当に被っていたりするんです。あと、大きなお仕事とオーディションが重なって、あえてオーディションを受けたら、落ちてしまったんです。そしたら、今までにないぐらい大きなお仕事が入ってきたりとか、ある分岐点に立たされたときの選択肢から、何かしらの匂いを感じ取れるかもしれません。これを自由自在に操れたら、ホントいいんですが……(笑)。
必要とされているものと、自分がやりたいことをかけ合わせる
──2013年にアイドルグループ、BiSのメンバーに新加入してから10年ほど経ちましたが、女優を中心に活躍している現状をどのように捉えていますか?
ウイカ 10年前に、BiSの新メンバーとして入ったとき、そのときグループにはいないキャラと私のキャラをかけ合わせれば、新規のファンを得られるんじゃないかと思っていたんです。その後も常に、その場において必要とされているものと、自分がやりたいことをかけ合わせることを考えながら、ここまできた気がします。今回の美雪に関しても、私をオファーしてくださったということは、私が持っている要素を出すのが正解だと思ったので、例えば「なんとか売れてやる!」と必死だったときの眼力を生かしました(笑)。
──主演映画『炎上する君』(公開中)のおさげキャラ・浜中のように、さまざまな役に挑んでいることに関しては?
ウイカ 作品ごとの監督やプロジェクトの皆さんに、パブリックイメージから、遠のいた私を見いだしてもらうと言いますか、新しい引き出しを開けてもらっている気がしますし、自分もそれに応えたい気持ちが強いです。「パブリックイメージが素の自分か?」と言われたら、そうとは言い難いんですが(笑)、とにかく楽しいですし、やりがいでもあります。
──撮影現場に必ず持っていくモノ・アイテムを教えてください。
ウイカ プロのネイリストさんが使っている大きいメイクバッグです。私、メイクに毎回2時間かかるんですが、メイクさんにやってもらうと、その都度、顔が変わってしまうんです(笑)。ファッション誌などでテーマが決まっているときはメイクさんにお任せなのですが、舞台出身だったこともあって、バラエティ番組など、自分として出るときは自分でメイクしています。あまりの重さで、肩が壊れないようにキャリーに入れています。実は今回の美雪のいろんなパターンのアイメイクも、自分でやっているんです!
禁じられた遊び
9月8日(金)より全国公開
【映画「禁じられた遊び」よりシーン写真】
(STAFF&CAST)
監督:中田秀夫
原作:清水カルマ
脚本:杉原憲明
出演:橋本環奈 重岡大毅(ジャニーズWEST)
堀田真由 倉 悠貴 正垣湊都 猪塚健太 新納慎也・MEGUMI 清水ミチコ
長谷川 忍(シソンヌ) ファーストサマーウイカ
(STORY)
愛する妻・美雪(ウイカ)と息子・春翔(正垣)と共に幸せな生活を送っていた直人(重岡)。だが、突然の悲劇が一家を襲い、美雪は帰らぬ人に……。直人の元同僚の映像ディレクターの比呂子(橋本)は、直人の家で庭の盛り土に向かって、呪文を繰り返し唱え続ける春翔の姿を発見。その呪文は春翔の他愛ない質問に、直人が冗談で教えたものだったが、子どもの純粋な願いは恐ろしい怪異を呼び覚まし、比呂子と直人に襲いかかる。
(C)2023映画「禁じられた遊び」製作委員会
撮影/映美 取材・文/くれい響 ヘアメイク/近藤伊代 スタイリスト/山本絵里子 衣装協力/KLOSET