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2023/12/1 20:30

ブルックスを代表する名ランシュー「ゴースト」のエントリーモデル見参!/大田原 透の「ランニングシューズ戦線異状なし」

ギョーカイ“猛者”が走って、試して、書き尽くす! ランニングシューズ戦線異状なし

2023「ブルックス」冬の陣②「ゴーストマックス」の巻(前編)

 

北米のランニング専門店で圧倒的なシェアを誇る「ブルックス(BROOKS)」。日本での知名度こそ高くないが、70年代のジョギングブームを経て、2000年代の選択と集中により、アメリカのランナーでブルックスの名を知らぬ者はいないブランドに成長している。

 

そのブルックスを代表するモデルと言えば、「ゴースト(GHOST)」。2023年にシリーズ15代目が登場し、安定した走りが得られるクッション性の高いモデルとして、ゴーストは体格の大柄なアメリカのランナーたちからも高い評価を得ている。

 

今回GetNavi web読者にブルックスが薦めてくれたのは、「ゴーストマックス(GHOST MAX)」という「ゴースト」のエントリーモデル。日本では2023年10月末から展開の、ピカピカの最新モデルだ。詳細な紹介は後述するが、ゴーストマックス最大の特徴は、昨今の厚底ブームにも象徴される、ぶ厚いミッドソールである。

↑「ゴーストマックス」1万9800円(税込)。カラー:4色展開(メンズ)、4色展開(ウイメンズ)。サイズ:25~29㎝(メンズ)、23~26㎝(ウイメンズ)。重量:285g(27㎝片足)。ミッドソールドロップ6㎜

 

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EVAの可能性を、世界で最初に見出したブルックス

「70年代に互いに競い合うことで開発レベルを上げたアメリカのランニングシューズメーカーたちは、各社で自分たちのストロングポイントが違いました。そうしたなかでブルックスは、ケガの防止に効果的なクッションの役目を持つ、ミッドソールに着目してきました」

 

と前回に引き続き語るのは、ブルックスの日本総販売代理店であるアキレスの栗岩克明さんである。自身も市民ランナーとしてフルマラソンなどを走りながら、ブルックスの日本での展開の采配を行っているギョーカイ“猛者”のひとりである。

 

「ブルックスが、ミッドソールの素材として注目したのは、当時の最先端素材のEVAです。EVAは、軽量で耐久性に富み、加工しやすい上に安全性も高く、何より柔軟性と弾力性に富んでいます。まさに、ランニングシューズのクッション材として、EVAはうってつけの素材でした」(栗岩さん)

↑ブルックスの日本総販売代理店であるアキレスの栗岩克明さん(右)。2019年からアキレスがブルックスを扱うにあたり、日本での展開の采配を行っている。左は、2019年以前にもブルックスを履いてきた筆者(左)

 

着地衝撃の大きさに応じて反発性が変化する

ゴーストマックスに搭載されたミッドソールも、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)である。ブルックスが世界で最初にEVAをランニングシューズに採用するのは1977年。その後もEVAの研究開発を行い、2010年にはブルックス独自のクッショニングテクノロジーの「DNA」を発表している。

 

現在も進化し続けるブルックスのDNAは、着地衝撃の大きさに応じて反発性が変化するミッドソール機構で、素材の配合や発泡時のガスの成分などを変えながらさまざまなシーンでランナーの走りをサポートしている。

 

「ゴーストマックスに使われているDNAは、EVAにラバーを加え、エアで発泡させた『DNA  LOFT v2』を使用しています。衝撃吸収性に優れ、耐久性にも富んでいるため、へたり難く長持ちします」(栗岩さん)

↑足と靴底(アウトソール)の中間の部材がミッドソール(全部黒いので分かりにくいが、光沢のある部材)。ブルックス史上最も柔らかいクッション素材DNA LOFTの進化版となるDNA LOFT v2がたっぷり

 

歩いても良し、走っても良し!

ミッドソールにこだわり抜くブルックスが、ブランドの顔とも言えるゴーストの名前を冠にした厚底モデル。となると、ゴーストマックスは、単に厚底ブームだから……というモデルではないことが分かる。ゴーストマックスこそ、世の厚底ブームに対し、ミッドソールにこだわり抜いたブルックスの並々ならぬ意気込みを込めた一足なのだ。

 

「アメリカ本国では、よりエントリー層向けにプロモーションを行っています。そのためウォーク&ラン、フィットネスウォーカー、コミューターパス(通勤用)などと表現されており、ゴーストマックスを実際に履くと、歩いても良し、走っても良しと感じていただけます」(栗岩さん)

 

栗岩さん曰く、ゴースト マックスのラグ(靴裏の凸凹のパターン)は、ウォーキングシューズに近いフラットなパターンだそう。加えて、屈曲性にも富んでいるため、ランニングにも十分に対応できるのだとか。

↑上から見ると、ソールが張り出し、安定性に優れた幅広い踏み面であることが分かる。足の甲を包み込むアッパーには、エンジニアドメッシュを採用している

 

ただの厚底ではない“ゴーストらしさ”

「ゴーストマックスが目指したのは、オリジナルであるゴーストの安定感です。かかとの食いつきの良いホールド感は、まさにゴーストそのものです。着地から中足部、そして蹴り出しまでの重心移動がスムーズなのも、ゴーストの特徴です。走りやすいという評価も、ゴースト同様にいただいています」(栗岩さん)

 

しかしゴーストマックスは、ただの厚底ゴーストには収まらない。最大の違いは、「グライドロールロッカー」と言われるソールの構造だ。ゴーストマックスは、かかとから爪先にかけて、揺りかごのようなラウンドがあり、着地から蹴り出しまで、ぶ厚いミッドソールで転がるように足を前に出せる。

 

しかも、靴がそうさせる……という極端なロッカーではなく、あくまでマイルド。さらに、かかととつま先の高低差を示すドロップは6㎜と、これまたマイルド(ちなみに、ゴースト15のドロップは12㎜)。設計の方向性や、ミッドソールの素材こそ共有しているが、目指す着地点が“ゴーストらしさ”だからこそ、そのアプローチは敢えて変えているのだ。

↑ 靴裏(アウトソール)はフラット。横に切られた溝があることで屈曲するため、着地から蹴り出しまでスムーズになる。ロッカーもあまり感じさせない、マイルドな味付けだ

 

「ゴーストマックスは、LSDに最適です」

「ゴーストマックスは、足にも身体にも負担が少ないため、長時間ゆっくり距離をかせぐLSD(ロング・スロー・ディスタンスの頭文字の略称)に最適です。ジョギング目的や、初めてのフルマラソン挑戦、もちろんウォーキングや普段履きにもお使いいただけます」(栗岩さん)

↑ 栗岩さんの背景に並ぶのは、ブルックスのクッション系のシューズたち。レースでも履けるモデルでも、普段履きでも使いやすいモノトーン系のカラバリが用意されている

 

ということで、次回は、いよいよゴーストマックスを実際に履いて、走って試してみることに。ゴースト以上にゴーストらしい、ゴーストマックス。その実力のほどを、存分にレポートしたい。

 

撮影/中田 悟

 

 

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