筆者はラインを引きながら読書することが多く、ラインマーカーの使用頻度はけっこう高い。電車やバスで移動する際にも本を読むので、本来なら移動中にもラインマーカーを使いたいのだが、これがなかなか手間がかかる。
片手で本を開いたまま、もう片方の手でマーカーのキャップを開け、次にマーカーを握ったままキャップを(ペン先が服につかないよう注意しつつ)いったんポケットに入れる。それでいよいよラインを引いたと思ったら、またポケットからキャップを取り出して閉めて……という作業は、揺れ動く車内ではあまりにも難易度が高すぎる。実際、恥ずかしながら今はいているジーンズのポケット周りには、蛍光ピンクのインク染みが何か所も残っていたりするのだ。
つまり、普通のラインマーカーを机の上以外の場所で使うのは、それぐらい難しいというわけ。それであれば試してみたいのが、キャップ不要のノック式ラインマーカーである。
ラインマーカーはノック式が圧倒的に便利
ゼブラ「クリックブライト」は、片手ノックで簡単にペン先チップを出し入れできるラインマーカー。カラーラインナップは、ピンク・オレンジ・黄・緑・ライトブルー・紫と、普段使いしやすいベーシックな6色展開となっている。
ゼブラ
クリックブライト
各120円(税別)
6色展開
一般的にラインマーカーはチップの表面積が大きいため、油断していると簡単にドライアップ(インクが乾いてしまう)しがち。そのため、どうしても気密性の高いキャップが必要となっていた。これまでにも他社製品のノック式ラインマーカーは存在したものの、チップ収納時にペン先を密閉するためには、ノックに連動する複雑なシャッター機構が必要となる。そのため軸が太くなったり、価格が少々お高くなったりするなどのデメリットがあったのだ。
それを解決したのが、ゼブラ独自開発の「モイストキープインク」。このインクは、空気中の湿度を吸収することで自ら乾燥を防ぐという、どこか魔法のような特性を持つ。ペン先収納状態なら、なんと52週間はドライアップしない(気温20℃・湿度60%の条件下)ので、これなら、シャッター機構による密閉などがなくてもドライアップ知らずで書き続けることが可能だ。
モイストキープインクは、2019年発売のノック式サインペン「クリッカート」から採用されたインクだが、ようやくラインマーカーにも搭載される運びとなった。ラインマーカーを多用する身としては、まさに「待ってました!」という、待望の製品なのである。
細かい文字にマーキングしやすいハーフラインチップ
このクリックブライトには、もうひとつ語るべきポイントがある。それが、一般的なラインマーカーチップの約半分幅という、小さなハーフラインチップだ。ペン先の幅は約2mm。実際にノックでペン先を出して見ると、他にあまり見かけないその小ささに「おっ」と軽い驚きがある。
例えば、文庫本やカタログなどの小さい文字列をマーキングすると、その左右両隣の行にまで塗りがはみ出してしまうのは、よくあることだろう。一般的に文庫本の文字サイズが2.8mm~3mm角ぐらい。従来のマーカーチップが4mm幅なので、少しズレただけで隣の行にまでかかってしまうこともありうる。後から読み返した際にどこをマーキングしたのかが分かりづらくなってしまっては本末転倒だが、クリックブライトの普通より幅が狭いペン先ならその問題も解消される、というわけ。
さらに、雑誌の写真キャプション(画像の下に入る説明書き)のような極少文字にもマーキングできるというのは、従来のマーカーではまずできなかったこと。もちろん、手帳への細かい書き込みをマーキングするときにも使いやすそうだ。ラインマーカ―の幅に関しては「大は小を兼ねる」とはいかないだけに、他では代え難い性能と言えるだろう。一方で、文字の下にアンダーラインを引く場合は、目立ちやすい太め(2mm幅)の線が引けるマーカーだと考えれば、使い道が増えそうだ。
個人的には、暖色系(ピンク/オレンジ)はちょっとインク色が濃すぎて下の文字の視認性が落ちるかな? と、気になる部分もなくはない。とはいえ、ノック式の優れた携行性とハーフラインチップの独自性を考えれば、筆者以外にも「こういうラインマーカー待ってた!」と感じる人はわりと多いのではないだろうか。