生成AIが人類を滅ぼす危険な存在だとしたら、赤ちゃんをAIに任せることなんて到底できないですよね? でも、世の中には「ベビーカーにAIを搭載したら、パパママは楽になるのではないか?」と考える人もいます。
それが、GlüxKind。カナダに拠点を置くスタートアップで、AIを搭載したベビーカーを開発しています。すでに欧米や日本でも注目度が高まっている企業で、3DEXPERIENCE WORLD 2024にも登場して反響を呼んでいました。
「Ella」と呼ばれるこのベビーカーは、センサーを搭載していることが特徴。これによって、AIがベビーカーの周囲を監視する仕組みで、例えば、クルマや自転車などの乗り物が近づき、AIが「危ない」と判断すれば、ユーザーにアラートを発します。また、ハンズフリーモードに設定した場合、赤ちゃんがベビーカーに乗らず親に抱っこしてもらうときにベビーカーが自動で前に進んだり、下り坂でユーザーが不意にEllaから手を離してしまったときに自動で止まったりします。さらに、Ellaは道路を機械学習するように設計されているので、ベビーカーでの移動がより安全になるとも同社のエンジニアは言います。
少し前まで子どもをベビーカーに乗せていた筆者も実際に試してみました。見た目はややゴツいのですが、ハンドルを握って動かしてみると、驚くほど軽やかに操作できます。動いている途中に手を放してみると、ベビーカーはピタッとストップ。
従来のベビーカーでは、ベビーカーが知らないうちに遠くへ行ってしまうのが怖くてハンドルから手を離せませんでしたが、Ellaでは親のそんなアラートモードをオフにすることもできます。ロックマイベイビー機能では、ベビーカーが前後に揺れて赤ちゃんを眠りへと誘い、その間、親はハンドルを握ることなく休むことができますが、これまでのベビーカーでそんなことはできませんでした。今まで感じたことがなかった未知の感触にびっくりしつつ、自分がこのベビーカーを使うとしたら、AIはお守り代わりになるかなと思いました。しかし、価格が1台50万円近くになると知って、ずいぶん高いお守りだなとすぐに考え直しました。
赤ちゃんをベビーカーに乗せて坂道を登ったり、親が荷物をたくさん持っていたりすると、ベビーカーは重くなり、親への負担が大きくなります。そこで、自身も育児中のGlüxKindの創業者でCEOのケヴィン・ファンさんはひらめきました。ベビーカーにAIを組み合わせることは容易ではなく、CADで何度もシミュレーションを行うなど試行錯誤したそうですが、そもそもAIに拒否反応を持っていたら、きっとこのアイデアを思い付かなかったでしょう。
ベビーカーを押すという役割が、パパママからAIに代わるのでしょうか? 筆者がそう質問すると、「あくまで親のアシスタントです」と同社のエンジニアは答えました。同社のウェブサイトにも「co-pilot」という言葉が並べてありますが、この新種のベビーカーの考え方は、ドライバーの運転を支援するように開発されているクルマの自動運転技術と同じなのですね。
育児の負担を軽くすることができそうなAI。Ellaのようなバギーは近い将来、珍しくない存在になるのかもしれませんが、今は価格がネックだけに、やっぱりおじいちゃん、おばあちゃんに頼むことになりそうです。