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2024/8/14 19:30

“美文字”研究第一人者・青山浩之先生が解説!手書きするときに意識したい美文字ロジックとは?

「文章を書く」となるとスマホやPCでの文字入力がメインとなり、手書きする機会が減った人は多いはず。そこへいざ手書きしてみると、思い通りに書けずに、自分の字が嫌いになって、やがて手書きしたくなくなる……という負のスパイラルに。でも心配はいりません。美しい文字は、いくつかのルールと手書きをサポートする文房具によって手に入れることができるのです。

 

書家であり、「美文字」研究の第一人者である青山浩之先生に、美文字を書く基本的なロジックを教えていただきました。また後編では、誰でも美文字に近づく文房具を紹介していただきます。

 

“美文字”研究第一人者・青山浩之先生が解説する、美文字に効く文房具11選

 

デジタル社会を生きる現代人は
今どんな手書き文字を書いている?

はじめに、デジタル機器を活用するシーンが増えている現代人の手書き文字にはどのような特徴がありますか?

 

「子どもの頃、私たちは紙と鉛筆を使った学習を通して文字を習ってきました。しかし社会人になるとパソコンなどデジタルを用いた仕事が多くなります。そうなってくると、手で書くという行為自体が習慣として減り、書く動作がぎこちなくなっていきます」(横浜国立大学教育学部教授・青山浩之さん、以下同)

 

例えば、下記のようなもの。いわゆる“雑な字”と言われているものです。

 

・書くときに線を止めるべきところで止めていない
・しっかりと止まってから折るべきところでも丸く書いてしまう
・線と線がくっついていないといけない箇所がちゃんとついていない

 

「このように、文字を書くための具体的な知識と意識がデジタル化の進んだ現代では薄らいでいっていますし、ペンの持ち方などもどこか不慣れな様子になりがちです」

 

また、デジタル文字に影響を受けてしまうこともあるそう。

 

「手書き文字というのは、止めたり、はねたり、はらったりして次の画にいく動作を繰り返し行う一連の流れで文字を表記します。一方、活字というのはさまざまな書体がありますが、書くことよりも読むことを重視した形となっています。
デジタルの文字になぞらえて手書きの文字を書こうとすれば、書きやすさベースと読みやすさベースの違いから矛盾が生じてしまい、余計に「雑な字」になりやすいのです。
文字の進化は書きやすさと読みやすさ両方の側面から進み、文字を扱う人間の経験と習慣の中で変容してきました。デジタル文字が多くなった現代では、書きやすさを大切にする意識が減ってきています」

 

美文字研究の第一人者が考える美しい字の定義とは?

では、青山先生の考える“美しい文字”とは、どのような文字なのでしょうか?

 

「美文字と言うと、みなさんはお手本のようにきれいな字を想像するのではないでしょうか? しかし、私の考える美文字とは、まず『その人らしい文字であること』。そして、その文字が読む人にとって読みやすいことも大切であると考えます。読みやすいということは読み手にとって心地よい文字であるということです。
文字というのは、その人のもともと備わっている感覚だけで書くものではなく、理屈で書くものです。美しい文字を書くためのルールに従って理屈で書く文字は、おのずと読みやすい文字になります」(美文字研究家・書家 青山浩之先生、以下同)

 

「ピタカクピト」を意識!
青山先生の美文字メソッド

自分の字を好きになり、手書きに臆さないようになるためにはどのような点に気をつけて文字を書けばいいのでしょうか?

 

「美文字になるということはつまり、自分の字をよい意味で自覚できることです。理屈を知れば、ていねいで形の整った文字を書くことは誰でもできるようになります。私はとくに次の2つを意識することをお伝えしています」

 

1.ピタカクピトを意識する

・「ピタ」
横画の終筆をピタッと止める。横画の最後を書き流すと乱雑な字に見えてしまいます。

横画の終筆をしっかりと止めて終わる。

 

・「カク」
線を折るところではカクッと折る。角が丸くなっている文字は幼く見えてしまいます。

折れ曲がる線は一度止めてから曲げる。

 

・「ピト」
他の線とくっつくところはピトッとつける。バラバラに見える文字は落ち着きが感じられません。

線と線が接する箇所は意識してつける。

 

2.隙間均等法を意識する

「線と線の間にできる隙間を均等にするように意識します。隣り合う隙間が均等であれば格段に読みやすくなります。人は文字を見るときに線を見ていると思いがちですが、実はその間の空間も見て判断しています。それらがバラバラであると読みにくさを感じてしまいます」

線と線との間のスペースは均等な間隔になるように意識する。

 

「これらを意識するだけでも、読みやすくていねいに見える文字となります。人から自分の書いた文字を褒めてもらえれば成功体験となり、さらに書いてみようという好循環が生まれます」

 

また「美文字には文房具選びもとても大切」と青山先生は語ります。

 

「筆圧をコントロールすることも美文字には欠かせません。そこで『しなるペン先』を搭載したボールペンを監修しました。筆圧をかける部分と抜く部分は従来のボールペンでは難しいのですが、こちらのしなるボールペン『ビモアボールペン』であれば、メリハリのある美しい文字を書くことができます。
自分の字に自信がつき、文字を書くことが好きになるきっかけにしてもらえたらうれしいです」

ZEBRA 「bimore」1100円(税込)

青山先生監修の練習帳とセットで美文字を叶えるボールペン。

 

「しなるペン先を搭載したビモアボールペンと、ビモア練習帳がセットになっています。ビモア練習帳には、わたしが直接指南する動画のQRコードがついており、スマホで簡単に筆圧コントロールの感覚を学ぶことができます。1日3分、7日間の練習をするだけで見違えるほどあなたらしい美しい文字になっていきます」

 

スマホとbimoreボールペンと専用練習帳があればどこでも簡単に練習ができます。(※写真提供=ゼブラ株式会社)

 

bimoreユーザーの文字を青山先生が添削。(※写真提供=ゼブラ株式会社)

 

このほか、後編では青山先生がお勧めする“美文字に効く”文房具を紹介します。

 

“美文字”研究第一人者・青山浩之先生が解説する、美文字に効く文房具11選

 

 

Profile

美文字研究家 / 青山 浩之

横浜国立大学教育学部教授。書家。全国大学書写書道教育学会常任理事。美文字を提唱する第一人者として、手書き文字の表現方法やスキルをわかりやすく解説し、書写や書道の魅力を広げている。メディアに数多く出演するほか、『“きれいな字”の絶対ルール』(日経BP)や『万年筆で極める美文字』(実務教育出版)など著書多数。
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『“きれいな字”の絶対ルール』青山浩之 著(日経BP)