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2024/9/17 20:45

島根富士通開催の「パソコン組み立て教室」に参加。キッズに交じって「パソコン組み立て」! 体験を通じ、「匠の技」の凄みに触れる

日本最先端の工場で
パソコン組み立てに挑戦

 

今回で通算17回目の開催となる「富士通FMVパソコン組み立て教室」に、GetNavi web特派記者・松井謙介が参戦を果たした。このイベントは、次世代を担う小中学生に社会学習の機会を提供し、パソコンの組み立てや工場見学などを通じ、ICT技術への興味や関心の育成、および地域への社会貢献を目的にしたもの。しかし、この特派記者だけは違う。50歳を目前に控え、完全なるリスキリング目的。記事制作からパソコン制作へ。このまま老いさらばえていくのなら、文字の羅列なんかではなく、形に残る何かを作り後世に残したい――そんな熱い思いを胸に抱き、8月24日、「日帰り出張申請」を会社に提出しつつ、工場のある出雲へと飛んだ(昨年に続き二年連続出場)。

↑島根富士通に悠然とはためくFusitsuフラッグ。「ああ、来年からここで働くことになるかもなぁ」と、勝手な胸の高ぶりを覚えつつ、工場へと歩を進めた

 

そんな48歳児の思いはいったん関係なく、本イベントはあくまで次世代を担うキッズたちのためのもの。合計20組のキッズとその家族を島根富士通に迎え、富士通クライアントコンピューティング株式会社(FCCL)の代表取締役社長・大隈健史さんの挨拶とともに開会が告げられた。大隈社長は「島根富士通は、日本で一番先進的なパソコン工場だと自負している。パソコン組み立てを通じ、みなさんにも島根と、この島根富士通のパワーを感じ取っていただければ嬉しい」とコメント。また、大隈社長も作業着を身に付け、部分的に組み立てに参加されていた。こういうカジュアルさ、親密さはFCCLならでは。20名のキッズたちも、憧れのパソコンを作っている会社の社長と一緒に組み立てを楽しめる、というのは、きっといい思い出になったに違いない。

↑パソコン組み立てと真摯に向き合う大隈社長。「小さいねじが扱いにくくなってきたんですよねぇ……」と言いながらも、てきぱきと組み立て

 

パソコンの品質を
最後に担保するのは「人」

 

今回の組み立て教室では、14.0型ワイド液晶搭載ノートパソコンとして世界最軽量(約689g)を実現した「LIFEBOOK UHシリーズ」より、「LIFEBOOK WU-X/H1」と「LIFEBOOK WU2/H1」の2機種をピックアップ。参加ファミリーはどちらか一台をチョイスし、ネジ締めやケーブル配線などの組み立てにチャレンジした。もちろんこの「組み立て教室」用にカスタムされた組み立て工程だが、基本の流れは実際の組み立てと同じ。キーボードのネジ締めからメインボードの取り付け、さらには液晶パネルやSSDの取り付けまで、手先の器用さが問われる作業に取り組んだ。

 

さて、48歳児である、昨年すでに一通りの工程を体験済みのせいか、妙な自信をもって組み立てテーブルに着席。指導員である武部さんに「じゃあ、よろしく」と挨拶をかまし、「私、本気で取り組みますから。最後に採点してくださいね」と嫌なオーダーをぶつける。本来なら武部さんも次代を担うキッズたちの指導をしたかったはず、と思うとなんとも申し訳ないが、それはそれ。私だってリスキリングに本気なのである。

↑武部さんと筆者。難易度の高い工程では、文字通り手取り足取りサポ―トしてくれた

 

通常は250点強の部品を組み込むパソコン組み立てだが、今回はそのうち40点程度に挑戦。最初の作業は、頭の直径が1~2mm程度の極小ネジのネジ締めから。ドライバーとネジはマグネットで接着する仕様だが、いかんせん目が霞んで上手くいかない。武部さんの「落ち着いてやってみてくださいね」という声がけを受け止めつつ、なんとか作業を進めていく。メインボードの取り付けを終えると、次はキーボードの接続。この工程は、フレキケーブルという主に電子基板と電子基板の電気的接続のために使用する薄いケーブルを、パソコン内のフラップに差し込み、ロックするという作業だ。

 

このフレキケーブルの接続が難しい。キーボード以外にも電源フレキなどを接続していくのだが、どうも「手ごたえ」が薄い。カチっと音がなるわけでもなく、感触で接続具合を確かめていくのだが、これが実にセンシティブ。パソコンの内部はいろいろなケーブルがはい回り、整線にも気を使う。「これでつながりましたでしょうか」と、一工程ずつ指導員に確認しながらの作業が続く。「この辺の作業は、やっぱり今どきはロボットがやるものですか?」と聞くと、武部さん曰く「いえ、人間の手作業ですね」とのこと。どれだけ工場が先進的な設備であろうとも、パソコンの品質を最後に担保するのは職人の丁寧さである、ということを実感することができた。

 

子どもたちの意識の高い
パソコン使用用途に驚愕

 

休憩を控え、キッズたちにインタビューを実施。本組み立て教室は、組み立てたパソコンを実際に自分で使えるということで「パソコンでどんなことをしたい?」とヒアリング。その答えがまさに「次代を担う」感満載で「学校のオンライン授業に活用したい」「いろいろな調べ学習に使う予定」「読書感想文などの長文に使いたい」と、どの子も実に頼もしい。一方筆者と言えば、休憩中にお手洗いに向かい、一人で勝手に迷子になり、いつの間にか組み立て会場に戻る自動ドアが開けられなくなり、締め出される始末。たまたま見つけてくれた大隈社長にドアを開けてもらうという、「次代を担いきれない感」満載で後半戦に向かった。

 

↑てきぱきと組み立てを進める子どもたち。難易度の高い液晶パネルケーブルの整線も問題なくクリアしていく

 

組み立ても終盤戦に向かい、SSDやバッテリーをパソコン本体とつなぐ。最後にパソコンの底面にあたる「Dカバー」のネジ締めをして終了。すべてのパーツが接続・装備され、いよいよ電源オンの儀式である。キッズたちと48歳児は幾分緊張した面持ちで、カウントダウンとともに電源をON! FUJITSUロゴの表示が終わり、ディスプレイ画面が目の前に飛び込む。そこにはなんと、工場入場時に撮影いただいた、自身の写真が壁紙として表示されているではないか! これは感無量である。

 

子どもたちの歓声が上がる中、リスキリング目的の筆者は、指導員である武部さんに採点をお願いした。以下がその成績である。

 

●センス ★★★★★
●スピード ★★★★
●正確さ ★★★★★
●就職可能性 ★

 

センス、スピード、正確さまでは、口滑らかに「いや、結構良かったっすよ!」と言ってくれた武部さんだが、最後の項目だけは、筆者の年齢のせいか、急に真顔で「★ひとつです」と断言。シビアな現実を思い知らされた。

 

恥を捨てて大声で
WE LOVE IZUMO!

 

組み立てが終わってもイベントは目白押し。最初は、組み立てたばかりのパソコンを用い、簡易的な動画編集にチャレンジさせていただく。テーマは「WE LOVE IZUMO♡」。実際に動画制作を行われているTSKエンタープライズDC株式会社の方を講師に迎え、15秒程度のプロモーション動画を作成。動画に音源をのせたり、つなぎ目にエフェクト処理を施したりと、正直これが楽しすぎ。48歳児は会場内で「WE LOVE IZUMO-!」と動画用に奇声を張り上げ、周囲から冷たい目線をいただいた。

↑動画編集にのめり込む参加者。45分の時間があったが「もっとこだわりたい!」という声が聞こえた

 

その後も富士通クライアントコンピューティング独自開発のAIアシスタント「ふくまろ」との対話、ネジ締め体験イベント、工場内でのプリント基板見学など、盛りだくさんのメニューをこなし、参加ファミリーはニコニコの大満足笑顔。

 

最後は、株式会社島根富士通の表取締役社長・神門明さんがキッズたちに下記のメッセージをお届け。「島根富士通スタッフ一同、皆さんに楽しんでFMVの組み立てを体験してもらえるよう、しっかりと準備をしてきました。おかげさまで、すべてのパソコンがみごとに一回で電源がはいりました。皆さんの笑顔が見られたことがたいへん喜ばしいです!」。教える側、組み立てる側、全員笑顔。ハッピームード満開での散会となった。

↑ふくまろとの対話を実践! 「夏休みの宿題が終わってないのだけれどどうしたらいい?」と切実な問いかけも

 

モノづくりの面白さ、
大変さを実感した半日

 

ほぼ半日に及ぶイベントを終え、感じたこと。それは、「モノづくりってやっぱり面白い」ということだ。これは、リスキリング~就職を目指す筆者だけの感想ではない。作っている子どのたちの真剣な表情、そしてモニターがパッと点灯したときのうれしそうな笑顔が、何よりも雄弁に、その事実を物語っている。

 

ふくまろに代表されるように、世の中は「大AI時代」であり、本記事のようなコンテンツは、(質の良しあしはあるが)誰にでも量産できる時代になった。しかし、そのAIを動かすパソコンは、あくまでも職人の魂の結晶。簡単になんでも生成できるこの時代に、「モノづくり」の大変さと楽しさが体験できたのは、参加者にとっては超有意義だったはず。きっとその後の人生に影響与えるほどの、素敵なイベントだったのではないだろうか。

 

参加者は20組。本来ならば、全国の小中学生に参画してもらい、日本のモノづくり復権を担う旗手になっていただきたいものだが、規模の問題もある。その意味では、拙いながらも本稿が、ほんの少しでも「モノづくり」のエキサイティングな一面を伝えられているといい。

 

最後にもう一度。「モノづくりは、熱い。そして楽しい」。48歳児の入職はならなかったが、子どもたちの取り組む姿勢を見るに、日本の未来は安泰だ、と思った次第だ。

 

WE LOVE IZUMO! どこまでも素敵な一日だった!