乗り物
2024/11/2 19:00

「乗らない理由」がなくなった! 免許返納後に使いたい新モビリティ「WHILL Model R」乗ってわかった3つのポイント

電動車椅子開発で知られるWHILL(ウィル)は9月3日、小回り性能を飛躍的に高めたスクーター型の新型車両「WHILL Model R」(以下、Model R)を発表し、同日より全国1500の自動車販売店で発売を開始しました。発表によれば、使いやすさを第一に訴求したモデルとなっているとのこと。さっそく実車に試乗してみることにしました。

 

免許返納後の新たなモビリティ

Model Rは、日常の移動に支障を来している高齢者や障害者などが乗ることができる“シニアカー”のカテゴリーに入る電動車椅子となります。最高速度6km/hの歩行領域で利用でき、免許なしで誰でも運転できることから免許返納した際の新たなモビリティとしても位置付けられます。

↑「WHILL Model R」。フロアは基本的にフラットだが、前輪の上を盛り上げることで足が踏ん張れるよう配慮した。サイズは全長1160×全幅535〜635×全高868〜925mm、重量56.8kg

 

WHILLによれば、「高齢化が加速する中、500m以上歩くことにつらさや困難さを抱える歳以上人口は1200万人を超えている」とのこと。一方で、スクーター型電動車椅子の国内出荷台数は年間1.6万台にとどまっている現状もあります。その理由としてあるのが、「ガレージにコンセントがなく、保管や充電が難しい」「マンション住まいで通路幅が狭く、駐車や保有がしづらい」との声が上がっていたそうです。

↑シート下には収納カゴを用意。後端には車体を持ち上げるのに便利なグリップも装備した

 

Model Rはそんな声に応えるべく、様々な生活環境にマッチする新機能を搭載し、乗り心地をさらに向上させたモデルとして誕生したのです。

 

国内最小クラスの小回り性能で狭い場所でも取り回し楽々

その第一のポイントが、「国内最小クラスの小回り性能」です。運転席に座ってステアリングを切ると、前輪がほぼ直角に曲がり、後輪を軸にグルッとその場で旋回ができるのです。その最小回転半径は国内最小クラスの97cm! これなら狭い駐車場や混雑した市街地でも歩行者の通行を妨げずスマートに走行できそうです。

↑前輪はほぼ直角に曲がり、後輪を軸として位置をそのままにグルリと回ることができる

 

↑取り回しがとてもラクなので、バックする際も思い通りの位置へ簡単に移動することができた

 

ただ、真っ直ぐ走っているところからハンドルを切ると、減速と同時に少しギクシャクとした動きを見せます。これは急ハンドルをした際に舵角センサーがステアリング操作を検知し、転倒を未然に防いでくれているから。そこで、一旦停止させてアクセルレバーを操作してみると、そこからは面白いようにスムーズに旋回してくれました。

↑前輪はほぼ直角に曲がり、後輪を軸として位置をそのままにグルリと回ることができる

 

これが実現できたのは、左右の後輪にインホイールモーターを組み込んでいるからです。舵角センサーからステアリングの角度を受け取ると、それに合わせて左右の車輪の回転を制御。これがカーブだけでなく、ステアリングを直角に曲げてもスムーズに回転できる秘密なのです。

↑専用のスタビライザーを組み込んだリアサスペンションにより、路面の振動を抑えた快適な乗り心地を実現した

 

なお、走行する際は右レバーを握ると前進し、左レバーを握ると後退する簡単な操作で対応できます。しかも、そのレバーは左右でシーソー式につながっており、そのうえで後退時はブザーでそれを知らせるので、誤操作することはほとんどありません。

↑ステアリング部中央のコントロール部では、車速の限度を変更できるほか、ライト/ホーンボタンが用意されている

 

自宅コンセントで充電できる着脱式バッテリーの採用

第二のポイントとなるのが、着脱式バッテリーの採用です。これまでシニアカーは搭載バッテリーに直接、電源ケーブルをつないで充電するのが一般的でした。となれば、車体そのものをコンセントのある場所へ移動させなければ充電はできません。これでは戸建てでガレージがあるような場合でないと対応は難しかったのです。

 

その点、Model Rは車両の後方からワンタッチバッテリーだけを取り出して自宅のコンセントで充電できるようになり、車体の置き場所を選ばなくなりました。これは使い勝手のうえで大きな進化といっていいでしょう。

↑脱着式バッテリーを採用したことで、バッテリーだけを自宅に持ち込んで充電することができる

 

バッテリーは重さが2.7kgで、大きさも電動アシスト自転車のバッテリー並み。このサイズなら自宅にも片手で持ち込め、日常生活の中でストレスなく充電ができるというわけです。ちなみに充電は100Vコンセントで行えて、満充電までの所要時間は5時間。満充電時の航続距離は17.2kmになります。

↑バッテリー部の充電用端子。専用充電器が付属する

 

独自のスタビライザーを組み込んだサスがもたらす快適な乗り心地

そして、第三のポイントが快適な乗り心地です。車体にはロールを抑制して安定旋回させるリアスタビライザーや、あらゆる路面状況でも各車輪が個別に地面に接地するフロント&リアサスペンションを搭載。車重はシニアカーとしては比較的軽めの56.8kgとなっていますが、これらの組み合わせにより走行時の不快な振動を抑えているのです。

↑様々な生活環境にマッチする新機能を搭載したWHILL Model R。歩行領域で前進最高速度6km/hで走行できる。ちなみに後進は最高速度2km/h

 

試乗はウッドデッキとアスファルトの路面で行いました。ウッドデッキでは予想通り、フンワリとしたまろやかな乗り心地。ステアリングのアングルも最適なアングルに調整できるので、楽に運転ができました。続いてアスファルトでは、ステアリングにこそ荒れた路面の状況が伝わってくるものの、シートにはほとんどそれがありません。

 

発進は車体が軽めということもあってか、軽やかでスムーズな印象です。段差乗り越え性能は5cmとなっており、この日も車道から歩道への乗り込みが楽にできました。また、試乗して気付いたのが足元の広さ。しかもフロアが前輪の上まで伸びていて、その位置は盛り上がっていて足の踏ん張りが利くようになっているのです。このちょっとした工夫が楽な運転姿勢を生み出していたともいえるでしょう。

 

カラーリング全4色。専用アプリでスマホでのバッテリー管理も

その他、ステアリング部にはUSBポートが用意されているほか、バッテリー管理などがスマホで行える専用アプリも用意されています。このアプリを使えば、バッテリー残量だけでなく、電源のON/OFFも遠隔で操作できます。これはセキュリティの面でも役に立ちそうですね。また、Model R本体は主要部ごとに5分割することができ、車載で運ぶことも可能ということです。

 

カラーリングはステアリングポールに4色を用意。アイコニックホワイトが35万7000円(税込)と最も安く、シルキーブロンズ/ガーネットレッド/ラビスブルーが37万2000円(税込)。販売網は全国の自動車ディーラー120社1500店舗と提携したほか、大手家電量販店でも取り扱っています。また、日額での短期レンタルにも対応しているとのことで、興味のある方は、まずはレンタルで試してみるのもアリですね。取り回ししやすいうえ、充電しやすく、乗り心地も快適なModel R。免許返納後、歩くのがつらい高齢者の悩みを解決するアイテムとして、大いに注目したいところです。

↑アイコニックホワイト、シルキーブロンズ、ガーネットレッド、ラビスブルーの4色を用意

 

撮影/茂呂幸正

 

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