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2017/7/16 15:37

「ポタフェス」で発見! 2017年後半の注目ポータブルオーディオはこれだ!!

東京の秋葉原では7月15日・16日の2日間に渡って、イヤホン・ヘッドホンの専門店・e☆イヤホンが主催するイベント「ポタフェス2017」が開催されています。

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ポタフェスは今年から全国展開を加速させてきましたが、もともとは毎年夏と冬には東京で盛大にイベントが開催されてきました。半年間のポータブルオーディオの動きを総括しながら、イベント後に発表・発売される新製品のお披露目の場所としてポタフェスは大いに注目されています。今夏のイベントにはどんな注目製品が登場したのでしょうか。

 

1万円台のBTイヤホン注目株。オーディオテクニカのワイヤレス版「CKRシリーズ」

ポタフェスの会場はJR秋葉原駅の電気街口を出てすぐの場所にあるベルサール秋葉原。今年は1階のエントランスにオーディオテクニカが出展。巨大なヘッドホンのオブジェが秋葉原の街を行く人々の目を釘付けにしていました。

 

オーディオテクニカは今年の夏に発売した“Sound Reality Series”のBluetoothイヤホン「ATH-CKR75BT」など新製品を出展。イヤホン端子が省略されたiPhone 7シリーズ以来、多くの音楽ファンに注目を浴びる「1万円台のワイヤレスイヤホン」の売れ筋モデルの試聴コーナーに大勢の来場者が集まっていました。

↑ポタフェス2017の会場、正面にブースを構えたオーディオテクニカは巨大なヘッドホンのオブジェを展示
↑ポタフェス2017の会場、正面にブースを構えたオーディオテクニカは巨大なヘッドホンのオブジェを展示

 

↑オーディオテクニカはBluetooth対応のヘッドホン&イヤホンを一押しで紹介
↑オーディオテクニカはBluetooth対応のヘッドホン&イヤホンを一押しで紹介

 

高音質が評判!コウォンのハイレゾDAP入門機「PLENUE R」

解像度が高く、澄み切った低ノイズのサウンドが高評価を受けるコウォンのハイレゾDAP「PLENUE(プレニュー)」シリーズに、エントリークラスの新顔「PLENUE R」が登場します。夏のポタフェスでデビューを果たしました。

↑コウォンの新しいハイレゾDAP「PLENUE R」
↑コウォンの新しいハイレゾDAP「PLENUE R」

 

昨年秋に発売された「PLENUE M2」(直販サイト価格は約8.5万円)と、コンパクトなエントリーモデルの「PLENUE D」(直販サイト価格は約3.3万円)の間に位置づけられる「PLENUE R」は、「日本での販売価格は6~7万円の間になる見込み」(コウォンジャパン担当者)というハイCPモデル。DACのICチップにはバー・ブラウンのPCM5242を採用。持参したイヤホンで音質を聴いてみたところ、PLENUEシリーズらしい抜けの良い中高域と音場の広いサウンドが楽しめました。ハイレゾ再生は192kHz/24bitのリニアPCM系ファイルのネイティブ再生に対応。リニアPCM変換でDSD音源の再生も可能です。3.7インチの有機ELタッチディスプレイは反応も機敏。「JetEffect 7& BBE+」による多彩なイコライザー機能によるサウンドのカスタマイズも楽しむことができます。

↑バランス接続にも対応
↑バランス接続にも対応

 

コウォンは初のイヤホン「PLENUE X40」の発売も予定しています。4つのBA型ドライバー(高1/中1/低2基)を搭載する3ウェイ・マルチドライバー構成のイヤホン。再生周波数帯域は20Hz~22kHzをカバーします。2ピンコネクターのリケーブルにも対応。中低域に厚みのあるしなやかなサウンドが特徴です。今回のイベントに出展されたものはまだ発売時期や価格が未定のプロトタイプですが、近く正式なアナウンスがあることを期待したいと思います。

↑ブランド初のイヤホン「PLENUE X40」
↑ブランド初のイヤホン「PLENUE X40」

 

↑2ピンタイプのリケーブル端子を採用
↑2ピンタイプのリケーブル端子を採用

 

魔法使いが作ったNoble Audioのイヤホン

アメリカにはその音質とデザイン、技術の革新性において特に多くのポータブルオーディオファンから注目されているいくつかのブランドがあります。アメリカでは聴覚学の専門資格として広く知られている「オーディオロジスト」を取得したジョン・モールトン博士が、製品の開発・設計、および音質のチューニングを手がけるNoble Audio(ノーブル・オーディオ)も屈指のブランドのひとつ。これまでマルチドライバー構成をベースにした個性豊かな音質のイヤホンを多数発表してきたモールトン氏は、世界のイヤホンファンから「ウィザード(魔法使い)」と呼ばれている人物です。

↑Noble Audioのジョン・モールトン氏も来日。製品の魅力を解説した
↑Noble Audioのジョン・モールトン氏も来日。製品の魅力を解説した

 

Noble Audioの製品は過去にも日本国内で紹介されてきましたが、今後は新たにエミライがユニバーサルタイプのイヤホンを取り扱うことになりました。販売されるモデルは「Katana」「Kaiser Encore」「Django」「Dulce Bass」「Sage」「Savanna」「Trident」の7機種になります。

 

全モデルはパッケージをスタイリッシュに一新。これまで1万4500円でオプションとして販売されていた高音質ケーブルが標準添付されるほか、新たに丸型のハードケースが付属します。KatanaとKaiser Encore、Sageの3機種は従来の販売価格から1万円ほど値下げされるほか、他のモデルは新しいアクセサリーを付属しながら販売価格は据え置きになります。

 

7つのモデルは、モールトン氏がそれぞれ専用にデザインした個性豊かなサウンドが特徴で、それぞれにモニター志向の「Reference Family」と、音楽性の豊かな「Musical Family」に分類されています。筆者は特に高解像で立体的な描写力の高い、片側10基のBA型ドライバーを搭載するMusical Familiyの「Kaiser Encore」がお気に入りです。本機にはBA型ドライバーの大手メーカーKnowlesに仕様を特注した「Noble Driver」が搭載されています。価格はオープンですが、想定される実売価格は19万8000円前後。もっと手軽にNoble Audioの音に触れてみたい方には、バランスのよいReference Familyの「Savanna」(実売想定価格5万9000円前後)もおすすめ。

↑10基の「Noble Driver」(BA型)を搭載する「Kaiser Encore」
↑10基の「Noble Driver」(BA型)を搭載する「Kaiser Encore」

 

↑9基の「Noble Driver」を搭載したMusical Familyの「Katana」
↑9基の「Noble Driver」を搭載したMusical Familyの「Katana」

 

↑すべてのモデルにハードタイプのキャリングケースが付属する
↑すべてのモデルにハードタイプのキャリングケースが付属する

 

ヤマハが提案する“聴くVR”とは

ヤマハはポータブルオーディオのための新しいサラウンド技術をポタフェスで発表。「聴くVR(バーチャル・リアリティ)」として展示しました。ヤマハはホームシアター向けAVサラウンドアンプの銘機を数多く排出してきた老舗ですが、そのアンプに搭載されてきた「シネマDSP」という独自の音場創生技術を、ポータブルオーディオでも楽しめるようにチューニングした技術が「聴くVR」であると、同社のスタッフが説明しています。

 

会場には“聴くVR”の技術を組み込んだ据え置き型ヘッドホンアンプの試作機が展示され、通常のオーディオヘッドホンでリスニング感を確かめることができました。“聴くVR”の試作機では2chのステレオ音声で収録されたコンテンツを5.1chのマルチチャンネルに拡張したうえで、さらに空間情報を加えてリアリティを演出。ヘッドホンによる自然なリスニング感が得られるよう、音場を頭の外に定位させる技術を組み込んでいます。

↑ヤマハが展示した「聴くVR」。据え置き型のヘッドホンアンプを試作、展示した
↑ヤマハが展示した「聴くVR」。据え置き型のヘッドホンアンプを試作、展示した

 

宇多田ヒカルの音楽ライブは広々とした空間再現と自然な没入感を体験。機能のON/OFFを切り替えながら聴いてみるとその差がはっきりとわかります。アニメのコンテンツではキャラクターのセリフがセンターにどっしりと定位して、とても聴きやすくなります。

 

ヤマハでは据え置き型だけでなく、“聴くVR”の技術を組み込んだポータブルタイプのヘッドホンアンプを試作中。今回はその音を聴くことはできなかったものの、デザインのプロトタイプはお披露目されました。通常のポタアンとあまり変わらないサイズ感なので、このリアルな“VR感”がアウトドアで楽しめるようになれば相当話題を呼ぶのではないでしょうか。ヤマハでは「これからイベントに出展して反応をみながら、来年の製品化を目標に開発を進めていく予定」とのこと。これまでにもゲームや映画向けのサラウンドヘッドホンは色々なブランドから発売されてきましたが、YouTubeやステレオのオーディオソースをスマホやタブレットで再生しながら手軽に楽しめるようになれば、ポータブルオーディオの可能性にもっと広がりが見えてくると思います。

↑こちらは「聴くVR」テクノロジーを搭載するポタアンの試作機。このサイズなら手軽に持ち歩くことができそうだ
↑こちらは「聴くVR」テクノロジーを搭載するポタアンの試作機。このサイズなら手軽に持ち歩くことができそうだ

 

スコットランドのプレミアムブランド、RHA初のBluetoothイヤホン

スコットランドのRHAは、ハイエンドからエントリーまで独自のこだわりを盛り込んだ多彩なイヤホンを展開する新鋭イヤホンブランドです。今年の春に発表されたブランド初のBluetoothワイヤレスイヤホン、「MA750 Wireless」と「MA650 Wireless」が国内のオーディオイベントに初めて出展されました。

↑RHA初のBluetoothワイヤレスイヤホン「MA750 Wireless」
↑RHA初のBluetoothワイヤレスイヤホン「MA750 Wireless」

 

↑耳掛けタイプの装着スタイル
↑耳掛けタイプの装着スタイル

 

どちらもRHA独自のダイナミック型ドライバーを1基搭載。MA750はステンレススチール、MA650はハイグレードアルミを採用する、メタルエンクロージャーの響きを活かしたクリアでパワフルなサウンドが大きな魅力。会場でそれぞれの実機を試聴することができましたが、どちらのモデルも従来のBluetoothイヤホン全般のイメージを覆すほど、分離の良い明瞭なサウンドが共通の特徴。ワイヤレスイヤホンを使っていることを忘れてしまいそうです。MA750はパンチ力のある低音、MA650は開放型イヤホンのような爽やかさを個性として加えています。

↑兄弟機の「MA650 Wireless」。想定売価が1万1500円前後という価格設定も魅力的
↑兄弟機の「MA650 Wireless」。想定売価が1万1500円前後という価格設定も魅力的

 

Bluetoothの高音質コーデックはaptX/AACの両方に対応。本体はIPX4相当の防水設計です。柔軟かつ強靱な素材でつくられているネックバンドはコンパクトに束ねて、付属するコンパクトなキャリングポーチに入れて持ち歩くことができるので、デイリーユースのBluetoothイヤホンにも最適。価格はどちらもオープンですが、MA750が1万9500円前後、MA650が1万1500円前後で8月に発売予定。取りあえずお試しとして5000円から1万円ぐらいのBluetoothイヤホンを買ってみたけれど、音質や機能性に満足できていないという方はRHAのニューフェースに乗り換えを検討してみては?

 

ウルトラゾーン初のハイレゾ対応ポケットDAC「NAOS」

ドイツのULTRASONE(ウルトラゾーン)は10万円台を超えるプレミアムヘッドホンの先駆者として、多くのマニアにリスペクトされているブランドです。そのウルトラゾーンが、ブランド初のUSBヘッドホンアンプ「NAOS」を発売します。

↑ULTRASONEのポケットサイズのUSB-DAC内蔵ヘッドホンアンプ「NAOS」
↑ULTRASONEのポケットサイズのUSB-DAC内蔵ヘッドホンアンプ「NAOS」

 

板ガムを数枚重ねたほどのコンパクトでスリムなNAOSは、192kHz/24bitのPCM系ハイレゾ音源のネイティブ再生に対応しています。もっと大きな特徴は、スマホからのバスパワー給電で駆動するため、付属する4種類のケーブルでiPhoneやAndroidスマホ、PCなどにダイレクトで接続するだけで、最もコンパクトなハイレゾ再生環境を構築することができるところです。

 

付属するケーブルはLightning/USB Type-C/USB micro B/USB Type-Aの4種類。iPhone 7シリーズはイヤホン端子を持たない代わりに、本体のパッケージにLightning/3.5mmイヤホン端子変換アダプターが付属しています。ただ、このアダプターの音質があまり良くないという声もあり、そもそもハイレゾ再生も楽しめるなら持ち歩く手間も変わらないNAOSの方が魅力的だよね、と思いました。価格はオープンですが想定売価は2万4000円前後。今年の夏に発売予定です。

↑iPhoneに接続してバスパワー給電で駆動する
↑iPhoneに接続してバスパワー給電で駆動する

 

このほかにも、ポタフェス2017の会場で見つけた魅力的な製品をフォトレポート形式で紹介したいと思います。

 

元祖・完全ワイヤレスイヤホンの最新モデル「EARIN M-2」

2015年冬に発売された初代「EARIN」がパワーアップ。左右イヤホンの接続をより安定化させるMiGLO(NFMI:近距離磁界誘導)に対応。カラーバリエーションはブラックとシルバーの2色展開で8月末から発売を予定しています。

↑欧州ベンチャー企業の完全ワイヤレスイヤホン第2弾「EARIN M-2」
↑欧州ベンチャー企業の完全ワイヤレスイヤホン第2弾「EARIN M-2」

 

イヤホン向け高音質化技術「HDSS」を搭載するNUARLのハイレゾイヤホン

NUARL(ヌアール)はエム・ティ・アイが手がける日本のオーディオブランド。米TBI Audio Systemsが提唱する吸音材を活用したイヤホン向けのチューニング技術「HDSS(High Definition Sound Standard)」を搭載する、コスパの高いハイレゾ対応イヤホン「NXシリーズ」が6月に発売されました。ポタフェスではHDSSを初めて搭載したBluetoothイヤホン「X45 HDSS Wireless Earphones」や、同社初の完全ワイヤレスイヤホン「X40 True Wireless Earphones」の試作機を公開。「後発のブランドなので、新製品もまた他社にない独自の魅力を加えて発売したい」と同社のスタッフが語っていました。

↑NUARLのハイレゾ対応イヤホン「NX01A」(左)と「NX110A」。上は70kHzまでの広帯域をカバーしている
↑NUARLのハイレゾ対応イヤホン「NX01A」(左)と「NX110A」。上は70kHzまでの広帯域をカバーしている

 

↑HDSS(High Definition Sound Standard)を採用する初のBluetoothイヤホン「X45」(写真左)と、完全ワイヤレスイヤホン「X40」の試作機を展示
↑HDSS(High Definition Sound Standard)を採用する初のBluetoothイヤホン「X45」(写真左)と、完全ワイヤレスイヤホン「X40」の試作機を展示

 

ゼンハイザーのネックバンド型BTイヤホン入門機

ゼンハイザーから7月の上旬にネックバンド型のBluetoothイヤホン「Momentum In-Ear Wireless」が発売されたばかりですが、本機の使い勝手はそのままに、コスパを高めた「CX 7.00BT」が8月上旬に日本で発売予定です。Bluetoothの高音質コーデックはaptXに対応。ハンズフリー通話機能を備えて2万円弱が見込まれています。

 

↑ゼンハイザーはスタンダードクラスのネックバンド型Bluetoothイヤホン「CX 7.00BT」を出展
↑ゼンハイザーはスタンダードクラスのネックバンド型Bluetoothイヤホン「CX 7.00BT」を出展

 

ハウジングに液体合金金属を採用したMother Audioのプレミアムイヤホン

大手スピーカーブランドのOEMとして高品位なオーディオ製品を手がけてきた北日本音響の自社ブランド、Mother Audioが今夏に立ち上がりました。初のイヤホン「ME8」はエンクロージャーに“液体合金金属”という独自の素材を使って個性的な音に仕上げています。弟機には真鍮製エンクロージャーの「ME5」もあり、金属ならではの豊かな響きを追求したME5に比べて、ME8は鳴きを抑えた原音に忠実なサウンドを特徴としています。e☆イヤホンの各店舗で販売中。

↑液体合金金属を採用する上位の「ME8」
↑液体合金金属を採用する上位の「ME8」

 

↑真鍮エンクロージャーの「ME5」
↑真鍮エンクロージャーの「ME5」

 

フォステクスはプレミアムヘッドホン「TH610」のオープンエア機を開発中

フォステクスが昨年の夏に発売したプレミアムヘッドホン「TH610」の開放型モデルを開発中です。磁束密度1テスラの50mmネオジウムドライバーユニットをそのまま搭載しながら、開放型のウッド製エンクロージャーと組み合わせて年内の商品化に向けた開発を進めているところ。価格はTH610よりもやや高値になるそうです。このほかにも平面型ヘッドホンの定番入門機「T50RP mk3n」に改良を加えた「T50RP mk3g」が新たに発売されます。

↑フォステクスが開発を進めている開放型プレミアムヘッドホンの試作機(写真右)
↑フォステクスが開発を進めている開放型プレミアムヘッドホンの試作機(写真右)

 

↑改良を加えた平面型ヘッドホン「T50RP mk3g」
↑改良を加えた平面型ヘッドホン「T50RP mk3g」

 

自作機器でいい音が楽しめるラズパイオーディオ

Raspberry PiはARMプロセッサを搭載するシングルボードのコンピューター。IoTやロボティクスなど多方面にその用途が展開するなかで、オーディオ機器のコアとして活用しながら、一般のオーディオファンが周辺パーツを自分で選択、組み立てながら理想とする“いい音”を追求できる楽しみとして、いわゆる“ラズパイオーディオ”がいま注目されています。バリュートレードのブースには、IT/A&Vコラムニストの海上忍氏がプロデュースしたDACボードの換装に対応するRaspberry Pi用オリジナルケースの改良版が出展されていました。

↑DACボードの装着性を高めた、海上氏プロデュースによるラズパイオーディオ用ケースを出展
↑DACボードの装着性を高めた、海上氏プロデュースによるラズパイオーディオ用ケースを出展

 

ポタフェス 2017は、本日16日の18時まで開催中(入場は17時30分まで)。気になるアイテムをいち早く試聴してみたい方は、いますぐ秋葉原へ向かいましょう!