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2017/10/27 15:30

フルサイズ一眼は「“高値”の花」ではない! 6万円の高倍率ズームで写真生活が激変【実写レビュー】

カメラに興味があれば誰しも一度は憧れる、フルサイズ一眼カメラ。画質や機能性に優れた機種が多い一方、レンズも含めて機材は大きく、重く、そして何より高価で、「高嶺の花」ならぬ「高値の花」というイメージが強い。しかし、そんな印象を覆してくれるのが、「高倍率ズームレンズ」の存在だ。

 

広い焦点距離を1本でカバーし、日常の撮影から旅先での撮影まで便利に使える高倍率ズームレンズは、APS-Cサイズ機(※1)用のジャンルで人気だが、35mm判フルサイズ機(※2)用の高倍率ズームレンズも少なからず存在する。

※1:APS-Cサイズ機・・・APS-Cサイズというのは、撮像素子(イメージセンサー)のサイズ規格のこと。エントリー~ミドルクラスのモデルに多く、フルサイズよりもカメラ本体を小型化できるメリットがある

 

※2:35mm判フルサイズ機・・・APS-Cサイズより大きいセンサーを搭載したカメラで、ハイアマチュア~プロ向けモデルに多い。一般的に同じ画素数であればセンサーサイズが大きいほど階調表現や高感度特性などに優れるとされるが、本体や対応レンズが大きく、重くなりがち

 

実際のところ、APS-Cサイズ一眼レフはボディが比較的軽量でレンズも小型化しやすいため、単に重さという面に限ればダブルズームキットのレンズで持ち歩きが大変ということはあまりない。しかし、前述のとおりフルサイズ一眼レフはボディが大きく重いだけでなく、レンズも同様に大きく重くなりがちで、機材の軽量化という面ではAPS-Cサイズ機以上に高倍率ズームレンズが重宝する。そこで今回は、フルサイズ対応の高倍率ズームレンズのなかでも長い歴史をもつ、タムロンの28~300mmレンズをレビューしつつ、その魅力を紹介しよう。

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↑タムロン 28~300mm F3.5-6.3 Di VC PZD。540gと軽量で大きさも96×74.4mm(長さ×最大径)と小型で実売価格も6万円台と手ごろ。APS-Cサイズ一眼レフと組み合わせて42~450mm相当前後の望遠ズームとして活用できるのも魅力。参考価格/6万940円(2017年10月執筆時点)

 

標準ズームレンズと変わらない変わらない驚異的な小型モデル

タムロンの28~300mmの交換レンズは、フィルム時代の1999年に発売された「AF 28~300mm F3.5-6.3 LD Aspherical IF MACRO」が初代。その後、2004年に登場した3代目でデジタル一眼レフに対応した。今回紹介する「28~300mm F3.5-6.3 Di VC PZD」は5代目にあたる製品で、2014年に発売された。

 

このレンズは、手ブレ補正「VC」やAFが高速で作動音も静かな超音波モーター「PZD」を採用。特殊ガラスや非球面レンズを多用することで、小型化と高画質化を実現している。特に大きさは、高倍率にも関わらず一般的なフルサイズ用標準ズームレンズと変わらない大きさで、他社の同等の製品と比べても極めて小さく軽量だ。

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↑タムロンの28~300mm(右)と、同社のAPS-Cサイズ用高倍率ズームである16~300mm(左)、18~400mm(中央)を並べてみた。ズーム倍率に差はあるものの、16~300mmよりもわずかながら小型で質量は同等。フルサイズ用としては驚異的な小ささだ

 

風景撮影から夜景や小物撮影まで幅広く使える1本

フルサイズ機用ということでAPS-Cサイズ機以上に画質が気になるユーザーも多いと思うが、実際に撮影してみると画面の四隅で多少像の流れが気になる場合があるものの、2000万画素クラスのカメラなら解像感も十分。3000万画素クラスを超えると、もう少し解像してほしいと感じるケースもあるが、それはピクセル等倍で見た場合の話。大幅にトリミングしたりA3ノビを超える大きさでプリントしたりするのでなければ、ほとんどの場合で問題にならないはずだ。それ以上にレンズが小さくハンドリングしやすいことのメリットが大きく、持ち歩きが億劫になりがちなフルサイズ一眼レフを気軽に持ち歩けるようになるのがうれしい。

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↑122mm、F11で撮影。画面の四隅では多少像が流れているものの、中央部は十分にシャープ。ボケも高倍率ズームレンズとしては優秀な描写といえる

 

また、近接撮影に強く、最短撮影距離は49cmで最大撮影倍率(※3)は約0.29倍。風景撮影はもちろん、花や小物撮影も十分楽しめるレンズとなっている。同社のAPS-Cサイズ機用高倍率ズーム「16~300mm F3.5-6.3 Di Ⅱ VC PZD MACRO」の最大撮影倍率(約0.34倍、35mm判換算では0.52倍前後相当)などに比べると少し物足りなく感じるかもしれないが、画質を保ちながらフルサイズでこの倍率を実現しているのは立派だ。さらに高い倍率がほしい場合は、実質的にトリミングした状態にはなるものの、APS-Cサイズ機を用いたり、クロップ機能を使ったりすれば約0.44倍相当で使用できる(この場合は、35mm判換算で450mm相当前後の望遠効果も得られる)。

※3:最大撮影倍率・・・被写体をどれだけ大きく写せるかという指標。撮像素子上に写る被写体の大きさが実物と同じなら1倍、実物の半分なら0.5倍というように表す

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↑最短撮影距離付近で撮影。本格的なマクロレンズほどではないものの、望遠側で近づくことで被写体を大きく撮れる。開放絞り付近を使用すれば、背景が大きくぼけて花などを引き立てることが可能だ

 

このほか手ブレ補正も優秀で、広角~標準域を用いれば室内撮影や夕景などでも手持ち撮影が可能だ。300mmの望遠域でも手持ち撮影が行いやすいほか、ファインダー像が安定するため構図決定や低速シャッターを用いての流し撮りなども行いやすい。

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↑夜の東京タワーを28mmで撮影。ISO400でシャッター速度は1/6秒となったが、手持ちでぶれなく撮影できた

 

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↑300mmで電車を流し撮りしてみた。手持ちで電車を追いながらの撮影だが、手ブレ補正の効果でファインダー像が安定し、超音波モーター採用によりAFもスムーズ。1/40秒で背景を大きく流すことができた

 

300mm域は開放絞りでF6.3とやや暗くなるものの、被写体に近づくことで適度な背景のボケ描写も得られるので、ポートレート撮影などにも活用できる。

 

ニコン・キヤノンのレンズと比較

フルサイズ対応の高倍率ズームレンズとしては、キヤノン「EF28~300mm F3.5-5.6L IS USM」やニコン「AF-S NIKKOR 28~300mm F3.5-5.6G ED VR」などのレンズもある。タムロンの28~300mmと比べると、いずれも望遠側の開放絞りがF5.6と明るいメリットがある一方で、サイズは大きく、重い。それなりに性能差もある(特にキヤノンの28~300mmは高性重視の「Lレンズ」だ)が、価格差も大きいのでそのあたりも考慮して選択するといいだろう。

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↑キヤノン EF28~300mm F3.5-5.6L IS USM。高画質設計の「Lレンズ」で、高倍率ズームながら収差の少ない優秀な写りが得られる点が魅力。そのぶん鏡筒が大きく重いので、持ち歩いて撮影するには気合が必要だ

 

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↑ニコン AF-S NIKKOR 28~300mm F3.5-5.6G ED VR。常用レンズとして持ち歩ける大きさで、望遠側の開放絞りがF5.6とタムロンの28~300mmよりも1/3段明るいのが魅力。ニコン D610などのキットレンズとしても採用されている

 

フルサイズ一眼レフは高画素モデルが多く、レンズ性能を重要視するのは当然だ。しかし、レンズ性能だけを追い求めてしまうと、大きく重いレンズばかりになってしまって機動力に乏しいだけでなく、結果的に機材を持ち出すのが億劫になって撮影から遠のいてしまうというのもよく聞く話。その点、比較的小型タイプの高倍率ズームレンズなら実用的な性能を確保しつつ、1本で広角から望遠、マクロ域まで対応可能なので、機動力に富んだ撮影が楽しめる。しかも、タムロンの28~300mmは価格も約6万円と手ごろなため、フルサイズ機の入門用としてもぴったり。“憧れのフルサイズ”へのハードルがグンと低くなるはずだ。