【発売前レビュー】ほとんど真っ暗な「ND1000」って何に使うの?
通常のNDフィルターは、前にも記したようにND8~ND64程度までの濃さの異なる製品が用意されているのですが、3月に行われた「CP+2018」でマルミ光機が発表した「EXUS NDフィルター」(2018年夏頃発売予定)は、ND4~64までの製品のほかに「ND500」「ND1000」という製品を用意。ほとんど真っ暗なND1000ですが、いったいどんな場面に有効で、どんな仕上がりになるのでしょうか? 発売前の製品をお借りすることができたので、早速使ってみました。
まずND1000の使用感ですが、とにかく濃度が濃く、一眼レフの光学ファインダーでは、視野を確認するのが難しくなります。そのためEVF搭載のミラーレスカメラか、ライブビューでの撮影がおすすめ。するとカメラの側で明るさを調整(ゲインアップ)してくれるので、AFを含めてほぼ問題なく撮影できます。どうしても光学ファインダーで撮るという場合は、フィルターなしで構図合わせやピント合わせを行い、撮影直前にフィルターを装着して撮るとよいでしょう。
今回はオリンパスのミラーレスカメラ「OM-D E-M1 MarkⅡ」にこのフィルターを使用して撮影しました。すると、自動露出ではやや暗めに写るケースはありましたが、その場合も露出補正やマニュアル露出を使用することで、問題なく撮影できました。
このフィルターを使うと、日中でも15秒や60秒といった長時間露光が可能になります。具体的には、効果がシャッター速度にして約10段分なので、1/60秒の露光がフィルターの使用で15秒の長時間露光になるといった具合です。この長時間露光によって、水の流れは極めてなだらかな写りになりますし、大きく波打つ海は、凪の海のように写せます。
いちばん上の写真は、プログラムオートで撮影したもの。ISO感度設定もオートにしているため、感度が上がりシャッター速度は1/160秒で川が波打つ様子が確認できます。2番目の写真は、ISO感度を下げて絞りを絞って、シャッター速度を1/6秒にして撮影。波打つ水面がぶれているのがわかります。3番目は、ND1000フィルターを使用して、シャッター速度を60秒にして撮影。水面は波が無数にぶれ、かなり滑らかな状態で写っています。
ND1000を使った長時間露光なら、水の流れだけでなく、こんな使い方も可能。街を歩く人がかなり消えて、街並みそのものが際立ってきます。
上の写真は、NDフィルターなしでシャッター速度1/15秒で撮影しています。街行く人々が数多く写っています。下の写真はND1000を使用してシャッター速度は60秒。立ち止まっている人以外はほとんど消えてしまい、クルマもテールライトの光跡のみとなっています。このように、低速シャッター使えば、街を行き交う人が急にいなくなってしまったような不思議な描写も可能です。
NDフィルターの選び方と注意点
このように低速シャッターにより、変化に富んだ写真が撮れるNDフィルターですが、購入の際には少し注意点があります。
まず、使用するレンズに合ったフィルター径の製品を選ぶことは、ほかのフィルター類と同様。次に滝の撮影など水辺のシーンで使うことの多いフィルターなので、撥水コーティングや防汚コーティングが施され、水滴や汚れが素早く拭えるもにしておくと安心です。
このほか、フィルター枠などの光の乱反射を抑えたデジタルカメラ対応の製品だと、逆光などのシーンでもコントラストの低下が抑えられます。今回使用した、マルミ光機の「EXUSシリーズ」の製品などは、こうした条件をクリアしていておすすめです。
NDフィルターで表現の幅がグッと広がる!
低速シャッターでの撮影は、手ブレやカメラブレに気を付けて撮れば、肉眼では見ることのできないユニークなシーンを撮れるのが魅力。その際、NDフィルターがあれば、より長時間の露光が可能になって効果を強調できます。
また、一眼カメラで動画を撮影する際に滑らかな映りにするには、シャッター速度を概ね1/100秒以下に設定する必要があるのですが、そうした場合にもNDフィルターは活躍します。
そのほか、大口径レンズを絞り解放にして撮影する場合にシャッター速度を最高速(1/4000秒や1/8000秒)にしても、露出オーバーになってしまうケースが少なくありません。そうしたシーンも、NDフィルターが活躍します。
さすがにND1000のフィルターを常時持っておく必要はないと思いますが、ユニークな表現をしたい場合にはおすすめ。普段使いとしては、ND8~64のものを2種類程度持っておくと、低速シャッターによる写りの変化が手軽に試せて、写真撮影をより楽しいものにすることができます。