【実写チェック①】開放F1.8の大きなボケ効果を堪能
多くの標準ズームは、70mm~105mmくらいの中望遠域までカバーするが、本製品がカバーしているのは52.5mm相当の標準域まで。この点をどう捉えるかは人によって異なるだろうが、28mm相当や35mm相当あたりの広角域の使用頻度の高い人(広角派)ならば、望遠端が標準域でもさほど気にならないだろう。ちなみに、筆者も広角派。以前はフルサイズ対応の広角ズーム(16-35mm F2.8など)を、APS-Cサイズ機で標準ズーム代わりに常用していた。
35mm相当前後の広角域は、自然な広さや遠近感が得られる使いやすい画角。次の写真では、幹線道路沿いの公園の端から、公園のツツジの花を画面に入れながら、横切る自転車を意識してシャッターを切った。その先にある歩道橋の見え方(大きさや遠近感)も自然である。

続いて、52.5mm相当のズーム望遠端(標準域)で、開放F1.8と一般的な大口径ズームの開放F2.8を撮り比べてみた。F2.8でも適度にボケるが、1・1/3段明るいF1.8だと、さらに大きなボケ効果を得ることができる。上の写真がF1.8、下の写真がF2.8で撮ったものだが、背景の上半分(シルエット調の木の輪郭)などを見比べると、そのことががよくわかるだろう。


最短撮影距離はズーム全域0.28mで、最大撮影倍率は約0.23倍(35mm判換算だと約0.35倍)。この値は、多くの単焦点の標準レンズよりも高倍率である。その高めの撮影倍率と開放F1.8設定によって、ボケ効果を極めた印象的なクローズアップ撮影が堪能できる。ただし、ピント合わせには細心の注意が必要だ。

【実写チェック②】“ボケ”と“シャープさ”、どちらも魅力
シグマ 18-35mm F1.8 DC HSMの最大の特徴が、ズーム全域F1.8による“大きなボケ効果”や“シャッターの高速化”なのは間違いない。だが、本レンズの特徴はそれだけではない。画面全域で高い解像性能や安定した描写が得られるのも、本製品の大きな魅力だ。
小型軽量設計の安価なズームレンズだと、画面の中央付近は絞り開放からシャープだが周辺部をチェックすると像の乱れ(流れやボケなど)が見られる……という弱点が露呈する製品も少なくない。しかし、高画質設計で高品位なズームレンズだと、そんな画質に対する不安が少ないのである。当然、シグマ 18-35mm F1.8 DC HSMも後者に属するレンズ。広角域で広い範囲を写し込んだり、ボケ効果とは無縁の遠景の撮影で画面全体をシャープに描写したりできる。つまり、F1.8による大きなボケ効果を生かした描写と、画面の隅々までシャープな描写、その両方が楽しめるのである。


作例をいくつか見ていこう。
菅原道真公を祀った天満宮でお馴染みの「撫牛」。その牛の像に広角域で接近し、広い画角で周囲の様子も写し込む。だが、主役はあくまでも撫牛なので、開放F1.8のボケ効果によって周囲を大きくぼかした。

神社の本殿前の「鈴緒」が、夕日を浴びてとても美しく見えた。ここでも広角域で接近し、背後に見える本殿の建物部分を大きくぼかしている。

撮影時の留意点としては、本レンズには手ブレ補正機構がないこと(ボディ内に手ブレ補正機構を搭載するカメラは別として)。そのため、あまり明るくない場所で絞りを絞って撮影(手持ち撮影)する際には、シャッターの低速化によるカメラブレに注意が必要だ。ISO感度を上げるなどして“1/焦点距離(35mm判換算)秒”以上のシャッター速度をキープしたい。

【まとめ】単焦点レンズ複数本分、と考えればむしろ軽快
ズーム域は、27mm相当の広角から52.5mm相当の標準までとあまり広くなく、大きさや重さも気になってくるかもしれない。それでも、広角から標準まで複数(2、3本)の単焦点レンズを持参することを考えると、この「シグマ 18-35mm F1.8 DC HSM」なら1本で軽快かつ快適に大口径レンズの撮影が楽しめる。ズームレンズの場合、明るい製品でも“全域F2.8止まり”。その従来製品の壁を打ち破った本製品なら、ワンランク上の描写や表現が期待できるだろう。

