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カメラ
2018/6/20 20:20

「ズーム全域F1.8」が与えた衝撃――シグマの革命的レンズ「18-35mm F1.8 DC HSM」再評価レビュー

吉森信哉のレンズ語り~~語り継ぎたい名作レンズたち~~ 第4回「シグマ ズーム全域F1.8の大口径ズーム」

 

現在、多くのカメラのレンズキット(カメラボディとレンズを組み合わせた商品)に選ばれているのはズームレンズである。ズーム操作によって写す範囲を即座に変えられる、その利便性やメリットは、あえて説明するまでもないだろう。

 

ただし、利便性の高いズームレンズにも、いくつかの泣き所はある。そのなかでも特に写りに影響を及ぼしてくるのが、同じ焦点距離(ズーム域に含まれる焦点距離)の単焦点レンズよりも“開放F値が暗い”という点である。たとえば、50mm相当(相当=35mm判フルサイズ換算。以降同様)の標準域は、単焦点レンズだとF1.4やF1.8と非常に明るい製品が一般的。一方、標準ズームだと明るい製品でも「ズーム全域F2.8」である。

 

だが、今回紹介するシグマの標準ズームは「ズーム全域F1.8」という驚きの開放F値を実現した製品である。単焦点レンズ並の明るさを持つズームレンズ。それによって、どんな表現やパフォーマンスが可能になるだろうか?

 

【今回ご紹介するレンズはコレ!】

蓄積したノウハウと最新技術で“全域F1.8ズーム”を実現

シグマ
18-35mm F1.8 DC HSM
実売価格7万8650円

デジタル一眼レフ用の交換レンズで、世界で初めて(※)「ズーム全域F1.8」の開放F値を実現した、APS-C用の大口径標準ズームレンズ。開放F値を明るくすると、通常は球面収差をはじめとする各収差(軸上色収差、非点収差、像面湾曲など)の収差補正が極めて困難になる。だが、これまで製品化してきた「12-24mm F4.5-5.6 II DG HSM」や「8-16mm F4.5-5.6 DC HSM」などの超広角ズームで培った収差補正や機構的なノウハウなどをもとに、各収差を抑制しながら大口径化を実現。そして、長年シグマで蓄積されてきた設計ノウハウと最新の加工技術により、絞り開放から優れた描写性能を発揮する、驚異の“全域F1.8ズーム”を完成させた。2013年6月発売。

※デジタル一眼レフカメラ用交換レンズにおいて

●焦点距離:18-35mm ●レンズ構成:12群17枚 ●最短撮影距離:0.28m ●最大撮影倍率:約0.23倍 ●絞り羽根:9枚(円形絞り) ●最小絞り:F16 ●フィルター径:72mm ●最大径×全長:78mm×121mm ●質量:810g ●その他:※数値はシグマ用。対応マウント:シグママウント/ソニーAマウント/ニコンマウント/ペンタックスマウント/キヤノンマウント(数値はいずれもシグマ用)

 

衝撃的な明るさの大口径ズームたち

近年のズームレンズを見返してみると、高性能で高価な製品は“高画質設計+大口径(※)”であることが多い。……とはいえ、大口径に関しては、ほとんどの製品が「ズーム全域F2.8」である(前述のとおり、標準域の単焦点レンズだと、F1.4やF1.8とさらに明るい製品が多く存在する)。

※大口径:開放F値の数値が小さくて明るいレンズのこと。明るいレンズのほうがより大きなボケを生かした写真が撮れるほか、光量の乏しい室内や夜間といったシーンでも、シャッター速度を速くできるというメリットがある。デメリットとしては、一般的に大きく重く、そして高価になりがちな点が挙げられる

 

だが、2008年に発売されたオリンパスの「ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD」は、標準ズームレンズとして極めて画期的な「ズーム全域F2.0」を実現。この大口径標準ズームの登場は、多くのカメラユーザー&ファンに強烈なインパクトを与えた。ちなみに望遠ズームとしては、同社から2005年に「ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0」という、ズーム全域F2.0の大口径望遠ズームが登場している。

↑28-70mm相当をカバーする、フォーサーズ規格の大口径標準ズーム「ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD」。2008年発売

 

2013年には、今回紹介する「シグマ 18-35mm F1.8 DC HSM」が世界初の「ズーム全域F1.8」として登場し、大きな驚きを与えた。2016年には、同じ明るさの大口径望遠ズーム「シグマ 50-100mm F1.8 DC HSM」も発売されている。

↑75-150mm相当をカバーする、APS-C用の大口径望遠ズームレンズ「シグマ 50-100mm F1.8 DC HSM」。2016年発売。実売価格は10万8070円

 

シグマ 18-35mm F1.8 DC HSMの「操作性」をチェック!

シグマ 18-35mm F1.8 DC HSMは、鏡筒の材質感(外観、触感)の上質さや、質量810gの重みによって、重厚で存在感のある大口径標準ズームに仕上がっている。もちろん、その“重厚さ”がデメリットになる場合もある。だが、キヤノン「EOS 7D Mark Ⅱ」やニコン「D500」といったAPS-Cサイズ機の上位モデルと組み合わせた際の“外観や重量のバランス”は良好。それゆえに、自然と気合いを入れて撮影したくなる(個人的な感想だが)。

↑質量800g以上の重めの標準ズームだが、前枠も含めて全体的にフラットな形状なので、個人的には外観的にさほど威圧感は感じない

 

↑付属の花形フード「LH780-06」を装着した状態。その堂々としたスタイルは、少し大柄なAPS-Cサイズの上位モデルにジャストフィットする

 

サイズや重量のほかに操作性のチェックポイントに挙げられるのが、ズームリングやフォーカスリングの動きだろう。そういった部分の良し悪しに、レンズのグレードや高級感が反映されてくる。本レンズはハイグレードな製品らしく、どちらのリングも動きが滑らかだ。特に、ズームリングの動きの滑らかさは素晴らしい。適度なトルクがありながら、動きのムラや擦れる感じは皆無! また、AF駆動には超音波モーター(HSM)を採用しているので、AF時の作動音もほとんどなく、快適なAF撮影を行うことができる。

↑前方がフォーカスリングで(その前には付属のフードを装着)、マウント部に近いのがズームリング。どちらのリングもゴム素材で指掛かりがいい。フォーカスモード切換えスイッチも、操作しやすい大きさ&形状だ
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