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2015/6/5 8:00

本物のタイヤを使った アンプ内蔵スピーカー「SEALスピーカー」を聴いてきた

作ったのはタイヤをリサイクルしてエコ商品を生み出す「SEAL」ブランド

いま、オーディオ売り場で最も勢いを感じる製品といえば、Bluetoothスピーカーではないでしょうか? iPodなどの携帯オーディオプレイヤーと接続して使う、アンプ内蔵スピーカーです。売れ筋ジャンルだけに製品の種類も幅広く、およそ考えうる製品は出尽くした感がありました。しかし、そんなBluetoothスピーカー市場に、またしても驚くべき製品が登場しました。それが、廃タイヤを使った世界初となるBluetoothスピーカー「SEALスピーカー」です。

 

「SEAL」といえば、廃タイヤのチューブをリサイクル利用したバッグやiPhoneケースなどで注目されているブランド。今回はなんとそれがスピーカーに! なぜ! というわけで、「SEAL」ブランドを展開するモンドデザインを取材、代表取締役である堀池洋平さんにお話を伺いました。

 

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↑代表取締役の堀池洋平さん

 

 

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SEAL表参道本店。革製品がズラリ…と思いきや、すべてタイヤのインナーチューブを利用した製品です!

 

――なぜ、廃タイヤでBluetoothスピーカーを作ったのでしょう?

 

堀池さん「当社では2007年から、廃タイヤのインナーチューブを利用したリサイクル製品を販売してきました。実は廃棄されるタイヤの数というのはかなり多くて、なんとかそれをゴミにせず利用できないかと考えていたんです」

 

――たしかにタイヤって、あちこちに不法投棄されているのを見かける気がしますね。

 

堀池さん「廃タイヤの利用には、環境保護以外のメリットもたくさんあるんです。まず、タイヤパターンの跡や傷によって、ひとつひとつ異なるデザインになるということ。同じ名称の製品を買っても、それは世界でただ1つ、自分だけが持っているデザインの製品になります。また、なんといってもタイヤですから、頑丈そのもの。もちろん水を通すこともありません」

 

確かに店内にあるバッグをよく見ると、規格を表すマークがついていたり、パンクの修理痕があったりとオンリーワン感がビンビン! 気に入ったパターンの製品を見たらすぐに買ってしまわないと、後日買うときには別のパターンになっていた、ということもありそうです。

 

でも、スピーカーに廃タイヤってどこに使うんだろ?

企画意図やコンセプトはよくわかりました。確かにタイヤのインナーチューブはシート状になるので、バッグやケースに使うのは良い考えかも。しかし、Bluetoothスピーカーに廃タイヤって、どこに使うんでしょうか?  筐体の外張りかな? さっそく製品を見せてもらいましょう。

 

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↑これが「SEALスピーカー」!

 

そうきたか。タイヤを外張りするとかではなく、「外装そのもの」に使っちゃったんですね……。(スタンドは別売)

 

そう、「SEALスピーカー」とは、廃タイヤをまるごと使って、内部にアンプ内蔵スピーカーを押し込んだ製品だったのです。上で紹介したバッグやケースなどのSEAL製品にはタイヤのインナーチューブが使われていましたが、SEALスピーカーでは外側の部分、まさに「タイヤ」そのものを使っています。クルマ好きの人向けの面白グッズとして、「タイヤ風デザイン」のスピーカーは見たことがありました。しかしSEALスピーカーのタイヤは、本物のタイヤなのです。

 

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↑本物のタイヤなので、製品名やスペック表示も実際のもの。ちなみに「145R12-6PR」とは、幅145mm・内径12インチで、荷重指数が6であることを表します。写真のタイヤはスタッドレスタイヤですね

 

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↑もちろんメーカー表示もそのまま! この製品はヨコハマタイヤ

 

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↑実際に使われていたタイヤなので、傷がついていたり、小石が挟まっていることも。かえってリアル感が増して盛り上がります。

 

気がつくと、スピーカーとかアンプよりもまず、「単なる外装」であるはずのタイヤをじっくり眺めてしまっていました。クルマに詳しい人なら、スペックからあれこれ想像したりして、より楽しめるのかもしれませんね。

 

タイヤは東北地方で探している!

再び堀池さんに話を伺ってみます。

 

――ところで、これはかなり大きなクルマに装着されていたタイヤのようですね。しかも、スタッドレスとは!

 

堀池さん「使っているタイヤ、一般的な軽トラなどに使われているものを使っています。スタッドレスにしたのは、そのほうがゴツくてカッコいいから(笑)。普通のタイヤだと、置いたときに存在感が薄くなってしまうんですよ。スタッドレスを集めるためもあって、タイヤは東北地方で探しています」

 

――意外なのは、廃タイヤということで汚れや臭いを予想していたのですが、ほとんど新品のように黒々としていて、臭いもまったく感じません!

 

堀池さん「それはかなり気にしていまして、徹底的に洗浄しています。小石が挟まっていることに興味を持っていただだきましたが、それも本当は残らず除去しているつもりだったのです(笑)」

 

軽トラックのタイヤは、業務用のためか交換時期が早いようで、それも綺麗さの理由なのかもしれません。トレッドパターン(溝)も、まだ使えるのではないかと思うくらい残っていました。本物のタイヤだから、もちろんメーカーもいろいろ。多いのはヨコハマタイヤですが、トーヨータイヤやブリジストンになることもあるそう。そしてなんと、たまにではありますがミシュランタイヤになることもあるとか! 好きなメーカーのタイヤが入荷するまで待ってみるのもいいかもしれませんね!

 

遅ればせながら音を聴いてみる。

さて、すっかりタイヤ部分で盛り上がってしまいましたが、この製品は本来スピーカーでした。いまさらながら、音を聴いてみましょう。付け足しみたいになってしまいましたが、もちろん本気で聴きます!

 

視聴してまず感じたのは、カドの取れた丸みのある音質です。音を大きめにしたとき、ビリッとした歪みが発生することもありません。これは、周囲が巨大なゴムで覆われていることで、不要な振動が吸収されているからでしょう。

 

音の輪郭はやや柔らかめで、「楽器の1つ1つの音がクッキリ聴こえてくる」というものではありませんでした。解像度が甘いといえばそうなのかもしれませんが、これはこれでレトロスピーカーのような雰囲気ある音になっていました。モノラルであることも、その柔らかな音質の雰囲気を盛り上げます。

 

レトロといっても、音の迫力が物足りないということはありません。Bluetoothスピーカーとしては群を抜いた大口径スピーカーのおかげで、柔らかい音がどっしりと響く、そんなスピーカーです。激しいロックより、ジャズやクラシックをゆったりと流しておくのに適しているでしょう。
面白いのは、スピーカーとアンプが別体であること。見かけ上は「アンプ内蔵スピーカー」ですが、実際にはスピーカーユニットの背面にアンプが貼り付いており、スピーカーケーブルで接続されています。つまりこの製品は、「タイヤ型スピーカー」に「Bluetooth内蔵アンプ」がケーブル接続されたセット商品である、ともいえるわけです。

 

そのため、SEALスピーカーを2台用意して接続すれば、ステレオ再生をすることもできます。また、元のアンプを使わずに、他のアンプをスピーカー部分につなげて使うこともできるわけです。本格的なアンプにつなげてみてもいいですし、スピーカー端子を持ったポータブルアンプを背面に貼り付けて使ってみてもいいでしょう。

 

ステレオで使うと、絵づら的には「タイヤが2本転がっている」状態になるわけで、いっそう「オーディオじゃない感じ」になって面白そうな気がします。

 

 

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↑アンプはスピーカーユニットの背面の貼り付けられています
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↑一般的なスピーカー端子なので、他のアンプにつなぎ替えることも可能。音声入力にはBluetoothだけでなく、オーディオケーブルを使うこともできます

 

 

個人的にはこんな使い方がしたいという妄想が掻き立てられる

さて、そんなSEALスピーカーを、自分だったらどんな使い方をしたいか考えてみました。真っ先に思いついたのは、海岸での使用。筆者は誰もいない海岸で泳ぐという趣味を持っているのですが、そんなときの休憩中にも音楽は聴いていたいもの。しかし、たとえ防水・耐衝撃スピーカーであっても、綺麗な外装が岩場や砂で傷ついてしまうのは気になります。
SEALスピーカーなら、そもそも地面をゴロゴロ転がっていたタイヤが外装なわけですから、荒れた岩場にも無造作に置けます(ただし、SEALスピーカー全体としては防水・耐衝撃ではないのでご注意を)。かなり大きいものの、タイヤだけに転がして運べるのも大きなメリット。なんといってもスタッドレスですから、雪の上を転がしてもさぞかし安定するのでは?

 

また、これは妄想になりますが、自分のクルマのタイヤを使えたらと思いました。あちこちの土地を一緒に踏んだタイヤが、今度はスピーカーとして自室で音楽を奏でてくれたら楽しいだろうなあ。現在はスピーカーユニットの大きさが決まっているので、使われるタイヤの規格もそれに合わせて決まっているのですが。

 

オーディオ好きにも、クルマ好きにも、アウトドア好きにも、もちろんそれら全部が好きな人にはなおのこと、いままでにない楽しみを与えてくれるスピーカー。それがSEALスピーカーといえるでしょう。

 

SEALスピーカー

モンドデザイン