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2019/3/27 19:30

プロ機たる所以をまざまざと実感! オリンパス「OM-D E-M1X」濃厚レビュー

2月22日に発売されたオリンパスのミラーレスカメラ「OM-D E-M1X」。従来から存在するOM-Dシリーズのプロフェッショナルモデル「OM-D E-M1 Mark II」と双璧をなす“もう1つのフラッグシップ機”という位置づけだが、両者の違いはどこにあるのだろうか? 本稿では、OM-D E-M1XとOM-D E-M1 Mark IIの違いや、OM-D E-M1Xに搭載された驚きの新機能を中心に紹介したい。

【今回紹介するカメラはコレ!】

オリンパス
OM-D E-M1X
実売価格36万980円(ボディ)

縦位置グリップ一体型の「OM-D E-M1X」。従来モデルの「OM-D E-M1 Mark II」よりも大きくて重いモデルになる。それでも、センサーサイズやミラーレス構造の関係もあってか、フルサイズ一眼レフの縦位置グリップ一体型モデル(キヤノン EOS-1D X Mark IIやニコン D5など)と比べると、ずいぶん軽く感じられる。

 

【外観】望遠レンズ装着時のバランスが良好! 細部にも工夫が

冒頭で挙げた従来からのフラッグシップ機「OM-D E-M1 Mark II」には、「パワーバッテリーホルダーHLD-9」というアクセサリーが用意されている。ボディにこれを装着すると、本体と合わせた計2個のバッテリーで、約880枚(CIPA試験基準)の撮影が可能になる。また、HLD-9には十字ボタンなども装備しているので、縦位置に持ち替えても横位置と同様の操作ができる。

 

今回新たに登場した「OM-D E-M1X」は、この「OM-D E-M1 Mark II+パワーバッテリーホルダーHLD-9」の組み合わせを一体化したようなカメラになる。これにより、大柄な望遠レンズなどを装着した際のバランスも、かなり良好になっている。また、1機能1ボタンにこだわったボタンレイアウトを採用し、ファインダー撮影に集中できる操作性を実現している。

↑上から見ると、グリップ部のボリューム感が目立つOM-D E-M1Xボディ。リアダイヤルは、背面の埋め込み型に変更(OM-D E-M1 Mark IIのリアダイヤルは上面に配置)。この埋め込み型のリアダイヤルは、クリック感が軽めなので不用意な回転には注意したい

 

↑縦位置グリップ一体型の大柄なボディなので、背面のボタンやダイヤルの配置もOM-D E-M1 Mark IIとは結構違う。液晶モニターの下には、カードセレクトボタンを新設。また、通常の縦位置ロック機能に加えて、ボタンやレバーなどのロックする操作部をカスタマイズできる(LOCK)ロックレバーも装備する

 

↑リアダイヤルやAFエリアの移動などに使用するマルチセレクターは、通常のモノとは別に、縦位置用も装備している。このように、全体として縦横どちらに構えても同じホールディング性が保てるボディ形状やボタン類の配置になっている

 

<作例①>

温室内の可愛らしいピンク色のランの花。細長い茎の特徴を伝えるため、縦位置に構えて撮影する。縦位置グリップ一体型のOM-D E-M1Xなら、横位置とさほど変わらないホールディングや操作感で撮影できる。

オリンパス OM-D E-M1X M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(100ミリで撮影) 絞り優先オート F4 1/125秒 WB:晴天 ISO800

 

↑2基装備するSDカードスロットは、どちらも高速なUHS-II対応。また、カードスロットのカバー開閉は、カバー下に配置されるカードカバーロックのキー操作(回転操作)によって行う(OM-D E-M1 Mark IIはカバースライド式)

 

↑約236万ドットの電子ビューファインダーは、非球面レンズや高屈折率ガラスを使った4枚構成の光学系を新たに採用することで、最高0.83倍(35mm判換算)という高倍率を実現。なお、この写真の表示スタイルは、画面上に各種情報表示を重ねないレイアウト表示(スタイル2)。それでも、OM-D E-M1 Mark IIの最高倍率と同じ大きさを確保している

【比較】「OM-D E-M1X」と「OM-D E-M1 Mark II」の違いをチェック!

↑OM-D E-M1X(左)とOM-D E-M1 Mark II(右)

 

次の表はOM-D E-M1XとOM-D E-M1 Mark IIの主要スペックをまとめたもの。このように、有効画素数「約2037万画素」の4/3型Live MOSセンサーや、AF/AE追従「最高18コマ/秒」の高速連写など、プロフェッショナルモデルでまず重視される仕様では共通する部分も少なくない。

だがOM-D E-M1Xは画像処理エンジンの「TruePic VIII」が2基搭載されたことにより、スペック表にない部分として、起動やデータ書き込みなどの時間の短縮、あるいは後述する「手持ちハイレゾショット」「ライブND」「インテリジェント被写体認識 AF」といった、OM-D E-M1 Mark IIにはない先進機能の搭載を実現している。

 

この3つの新機能以外にも、OM-D E-M1Xの進化点は多い。OM-D E-M1 Mark IIで“世界最強”を謳っていた手ブレ補正機構が、さらにパワーアップした点もそのひとつだ。

 

なんと、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROとの組み合わせで世界最高となる「最高約7.5段」、ボディ単体でも「最高約7.0段」のブレ補正効果を達成したのである(OM-D E-M1 Mark IIは、最高約6.5段、ボディ単体で最高約6.0段)。この驚異的なブレ補正能力は、従来比5倍相当の手ブレ検出精度を持つ新開発のジャイロセンサーの搭載で実現できたそうだ。

<作例②>

OM-D E-M Xの“世界最高約7.5段”の手ブレ補正は、100mm(35mm判換算:200mm相当)くらいの望遠域だと、1秒くらいまで手持ちでシャープに写せそうだ。

オリンパス OM-D E-M1X M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(100ミリで撮影) シャッター優先オート F8 1秒 -0.7補正 WB:曇天 ISO200

 

ほかにも、AFターゲットモードに鳥や小動物などの撮影に有効な「グループ25点」が追加され、人工照明下でのフリッカーの影響を軽減する「フリッカーレス撮影」にも対応。……といった、新機能が追加されている。

 

なお、従来のOM-D E-M1 Mark IIも、今後のファームアップによってOM-D E-M1Xに搭載されている新機能のいくつかは実現されるだろう。しかし、上で挙げた時間短縮や、手持ちハイレゾショット、ライブND、インテリジェント被写体認識 AFなどは、「TruePic VIII」を2基するOM-D E-M1Xだからこそ実現できたもの。あるいは、2基装備するSDカードスロットの“UHS-II両対応”も、機構上の問題でOM-D E-M1 Mark IIは難しい。

↑新しく採用された機能、5タブ・7項目で計35項目が登録できる「マイメニュー」。こういったメニュー関連の機能は、OM-D E-M1 Mark IIでもファームアップによって実現される可能性が高い

【機能】「画像処理エンジン2機搭載」で実現した驚きの機能

上でも触れたように、OM-D E-M1Xは画像処理エンジンを2機搭載することでこれまでにはなかった画期的な機能を実現している。そのなかから特に注目したい3つの機能を紹介しよう。

 

新機能①「インテリジェント被写体認識AF」

OM-D E-M1Xでは、AI(人工知能)の一種であるディープラーニングテクノロジーを利用して開発したアルゴリズムを新たに搭載。それにより、「モータースポーツ」「飛行機」「鉄道」の3ジャンルの被写体を自動で検出してAF追従することが可能となった。

この追尾被写体設定により、モータースポーツならドライバーのヘルメット、鉄道なら車両や運転席、というように、カメラが自動的に最適なポイントにピントを合わせてくれるのだ。撮影者は構図調節やシャッターチャンスのタイミングに集中することができるようになるだろう。

<作例③>

遠方から向かってくる特急列車。画面内での大きさはまだ小さめで、しかも先頭部分は画面中央から大きく外れていて、周囲にはいろんな要素が写り込んでいる。だが、インテリジェント被写体認識AFの「鉄道」設定により、この段階から“列車の先頭部”を確実に自動認識し、しっかりAF追従してくれた。

オリンパス OM-D E-M1X M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(100mmで撮影) シャッター優先オート F4 1/1600秒 -0.3補正 WB:オート ISO320

 

<作例④>

もう少しで東京駅に到着する新幹線を、線路のやや下の位置から狙う。周囲や手前には、いろんな障害物があったが、この場面でもインテリジェント被写体認識AFは、列車の先頭車両(前面)をしっかり自動認識してAF追従した。

オリンパス OM-D E-M1X M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(75mmで撮影) シャッター優先オート F4.5 1/1000秒 -0.3補正 WB:オート ISO2500

 

新機能②「ライブND」

複数の画像を合成して疑似的に露光時間を延ばすことで、低速シャッターの効果を使った表現が可能になる新機能「ライブND」。この画期的な新機能を活用すれば、NDフィルターの携行や着脱の手間が省け、フィルター装着が困難なレンズでもNDフィルターと同様の作画効果を得ることができるのだ。また、その際に「LVシミュレーション」をONに設定しておけば、設定した低速シャッターでの仕上がり具合を事前に確認することもできる。

なお、この「ライブND」の機能は、露出モードがSまたはMの場合に使用できる。そして、使用できるシャッター速度の上限値は、設定するND段数によって変わってくる(ND2:1/30秒~ND32:1/2秒)。

<作例⑤>

春の強風に揺れるマグノリアの花を下から見上げ、上空の太陽と絡めながら撮影する。この明るい状況だと、ISO感度をどんなに下げても、あまり遅いシャッターは使えない(露出オーバーになるため)。だが、ここではライブNDの機能を使用して、ND16(4EV)に設定。これにより、1/4秒という低速シャッターが余裕で使えるようになり、風による花のブレを存分に表現できた。

オリンパス OM-D E-M1X M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO(12mmで撮影) シャッター優先オート F14 1/4秒 WB:オート ISO64

 

新機能③「手持ちハイレゾショット」

「ハイレゾショット」は、OM-D E-M1 Mark IIなどにも搭載されている機能で、0.5ピクセル単位でセンサーを動かしながら8回撮影し、その画像をもとに50M(5000万画素)相当の高解像画像を生成することができるというもの。そして、今回のOM-D E-M1Xでは、従来の「三脚ハイレゾショット」に加えて(現在のOM-D E-M1 Mark IIのメニューには「三脚」の表記はないが)、三脚を使わずに撮影できる「手持ちハイレゾショット」も実現したのである。

影中に発生する、わずかな位置ずれを利用して16回撮影し、その画像をもとに50M相当の高解像写真を生成するのである。これによって、三脚が使用できない場所や、三脚を設置する時間的に余裕のない状況でも、通常の20Mよりも高解像な画像を得ることができるのだ。

<作例⑥>

「手持ちハイレゾショット」で撮影(※編集部注:サイトへのアップ時にリサイズしています)。2枚目は1枚目の画像の一部を切り出したものだが、細部までしっかり解像していることがわかる。

オリンパス OM-D E-M1X M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(12ミリで撮影) 絞り優先オート F8 1/640秒 -0.3補正 WB:オート ISO200

 

↑「手持ちハイレゾショット」からの切り出し

 

【まとめ】基本性能も信頼性もまさにプロフェッショナルなモデル

OM-D E-M1Xは、OM-D E-M1 Mark IIと同様にプロユースを想定したカメラだが、その基本性能(仕様)や撮影機能を見る限り“よりハイレベルなプロフェッショナルモデル”という印象を受ける。それは、プロフェッショナルモデルの必須条件である“信頼性の高さ”も同様である。

 

例えば、防塵・防滴・-10℃耐低温性能を持つOM-D E-M1 Mark IIから、OM-D E-M1Xはさらにレベルアップ。従来(IPX1)よりもはるかに厳しい防滴試験を実施し、より過酷な環境下でも使用できる防塵・防滴・耐低温構造を実現しているのだ。そして、シャッターの耐久性に関しても、OM-D E-M1 Mark IIの20万回を大きく超える、40万回の作動試験をクリアした高耐久シャッターユニットが搭載されている

 

OM-D E-M1 Mark IIは、プロフェッショナル仕様でありながら、抜群に小型で軽量(装備重量約574g、本体のみ約498g)なモデルである。だから、撮影ジャンルや被写体を選ばない、オールマイティーな使い方ができる。

 

一方、OM-D E-M1Xは、縦位置グリップ一体型のボディで、安定したホールディング性や高い操作性を実現。そして、2個のバッテリーが装填できて、約870枚の撮影が可能になる。これらの特徴や「インテリジェント被写体認識AF」機能の搭載により、高性能な望遠レンズを使用した動体撮影などに最適なカメラと言えるだろう。とはいえ、最高約7.5段の手ブレ補正や、手持ちハイレゾショット、ライブNDなどを見るに、風景撮影などでも使いたくなるのも確かだ。