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2019/5/31 18:30

AirPodsとどっちがオススメ? Beats初の完全ワイヤレスイヤホン「Powerbeats Pro」レビュー

Beats by Dr. Dre初の完全ワイヤレスイヤホンとして話題の「Powerbeats Pro」を、発売よりもひと足早く試せる機会をゲットしました。アップル「AirPods」の最強のライバルとしても注目されている最新完全ワイヤレスイヤホンの実力を速報レポートしたいと思います。

↑Beats初の完全ワイヤレスイヤホン「Powerbeats Pro」

 

BeatsとAppleが共同開発したイヤホン

Powerbeats ProはBeatsとAppleがイチから共同開発した完全ワイヤレスイヤホンです。Appleが今年の3月に発売した完全ワイヤレスイヤホン「AirPods」と同じ、独自開発のBluetoothオーディオ用チップ「Apple H1」を載せて高い接続性能を実現。ハンズフリーで「Hey Siri」と話しかけるだけで音声アシスタントを起動できるようになりました。Powerbeatsシリーズといえば、アスリートに人気のワークアウト用イヤホンとしてもよく知られていますが、なぜBeats初の完全ワイヤレスイヤホンが同シリーズから誕生することになったのかなど、本機の開発に至るストーリーについてはBeatsのプレジデント、ルーク・ウッド氏に詳しくインタビューしていますので、ぜひ合わせて読んでみて下さい。

 

今回は従来の左右イヤホンがケーブルでつながっている「Powerbeats3 wireless」とのデザインや音の違いも確かめながら、Powerbeats Proのレビューに挑みたいと思います。

↑Powerbeats3 wireless(左)とPowerbeats Pro(右)を比較しつつレビューします

 

ケースは少し大きめ。ペアリングは超カンタン

商品パッケージを開けると充電用のLightningケーブルと交換用のイヤーピースが同梱されています。イヤーピースは全てシリコン製のS/M/Lサイズと、傘が2重になっているダブルフランジタイプのMが1ペア入っています。

 

Powerbeats Proの専用ケースはいまどきの完全ワイヤレスイヤホンに比べると少し大きめですが、イヤーフックタイプのデザインを採用するイヤホン本体を、フックを付けたまま収納できることを考えれば妥当なサイズ感であるといえます。ただ普段からワイヤレスイヤホンを持ち慣れている方にとってはやはり、ケースが大きくて重く感じられるかもしれません。

↑ケースは少し大きめに感じられますが、イヤーフック一体型のイヤホンを格納することを考えれば妥当なサイズ感といえます。内蔵するバッテリーはイヤホン単体で9時間の音楽再生が可能。ケースを合わせると24時間以上の音楽再生を楽しめます

 

↑ケースはLightningケーブルで充電します。Fast Fuel機能を使用すると5分間の充電で最大1時間半ぶん、15分の充電なら最大4時間半ぶんの再生が可能なバッテリーを急速にチャージできます

 

ケースのフタを開けると2つのイヤホンが“前向き駐車”の方向で整然と収納されています。イヤホンの底面に充電用のコネクタがあり、マグネットでカチっと装着。充電されます。イヤホン本体には電源ボタンがありません。ケースから取り出すと自動的に電源がオンになり、戻すとオフになって充電が始まる仕組みになります。iOSのBluetoothオーディオの機器設定から「自動耳検出」をオンにすると、ユーザーがイヤホンを身に着けていないことを、本体に内蔵するモーション加速度センサーが検知して音楽再生を停止。自動的にスリープモードに切り替わります。

↑ケースを開けるとイヤホンが前向きに装着されています

 

Beatsのラインナップには既にアップルのApple W1チップを搭載する「BeatsX」や「Powerbeats3 wireless」があるので、iPhoneなどiOSデバイスとのBluetoothペアリングがAirPodsと同様にワンタッチで簡単にできることは体験済みの方も多くいるのではないでしょうか。Powerbeats Proには最新のApple H1チップが搭載されているので、ペアリングのスピードが速くなっているようです。ただイヤーフックタイプのイヤホンなので、新しいAirPodsに比べるとどうしても耳に着ける時間が少しかかるため、装着が完了した時にはペアリングが完了しており、あとは音楽再生がいつでもスタートできる状態です。細かいことですが、ペアリングが完了した時にイヤホンから聞こえてくるチャイムがBeatsXの世代から変更されてフレーズが短くなりました。

↑ケースを開けるとiPhoneの画面にペアリング設定のポップアップが表示されます。Apple H1チップを搭載するイヤホンだからこその簡単ペアリングが魅力

 

↑AndroidスマホやPCとペアリングする場合はケース内側のボタンを長押ししてペアリングモードに入ります

 

イヤーフックが痛くない。期待通りの高い遮音性

イヤーフック付きのイヤホンは装着が面倒に思えるかもしれませんが、装着感がとても安定するメリットがあります。Powerbeats Proの場合、イヤーフックでポジションを安定させて、ビーツの狙い通りのサウンドをユーザーに楽しんでもらうことも狙っているのだとウッド氏がPowerbeats Proのデザインを決めた理由を語っていました。

↑シリコン製のイヤーフック。Powerbeats3 wirelessのイヤーフックより少し硬めに感じられますが、しっかりと耳もとにフィットします

 

身につけてみるとイヤホンのハウジング、ボディやイヤーフックの“アタリ”がほぼ皆無でストレスフリーな装着感に驚きます。Powerbeats3 wirelessに比べると、本体を少し薄く縦長にして緩やかなカーブを付けて、耳に当たらないように設計されていることがわかります。

↑Powerbeats Pro(左)とPowerbeats3 wireless(右)でイヤーフックの形状が少し変わっていることが並べるとわかります

 

装着した状態は、Powerbeats3 wirelessが耳に対して横一文字に見えるのに対して、Powerbeats Proは斜めに掛かっているようなスタイルになります。イヤーフックの素材はPowerbeats3 wirelessよりわずかに硬めに感じられますが、肌へのアタリはとてもソフト。メガネともぶつからないので痛くありません。心地よい装着感が持続します。イヤホンのノズルの向きがPowerbeats3 wirelessよりも少し斜めに傾いて長くなっています。これも素直でプレッシャーの少ない装着感が得られる理由のひとつです。

↑Powerbeats Proを装着したイメージ。本体が斜めに掛かっているようなルックスになります

 

↑こちらはPowerbeats3 wireless。本体が耳に対して真横に向くデザインです

 

Powerbeats Proは体を激しく動かしても耳から外れません。本機はアップル独自の評価基準による厳しい耐久テストをパスした耐汗・防沫対応のイヤホンなので、ジムなどでワークアウトを楽しみながら音楽を聴く用途にも最適です。イヤーフックで装着が固定されると、例えば人にぶつかられても簡単には外れません。通勤・通学の時にも安心して満員電車に乗りながら音楽が聴けます。密閉型構造なので、よほどボリュームを上げない限り周りに音も漏れにくいでしょう。

 

遮音性がとても高いので、例えば飛行機の中で音楽を聴く用途にも十分使えそうです。ただ反対に身に着けると外の音があまり聞こえなくなります。賑やかな昼間のカフェで試してみたところ、音楽再生を始めてしまうとまわりのざわつく声がほぼ気にならなくなる反面、これは外で歩きながら使う時には音楽のボリュームを下げる必要もありそうです。マイクで外の音を集音して取り込めるヒアスルー機能が欲しいと感じました。少し気の早い話ですが、Beatsの完全ワイヤレスイヤホン第2弾以降にぜひ実現して欲しいです。

 

リモコン操作が覚えやすい・迷わない

完全ワイヤレスイヤホンが多機能になるほど、本体に搭載するリモコンボタンの操作が複雑化しています。例えば「早送りは左側のボタンを●回」「音量アップは右側を●秒押し込む」といったコマンドを、1台のイヤホンで覚えるだけでも大変なのに、複数のイヤホンを使い回すようになると、特にイヤホンどうしで共通のルールがあるわけではないため、またそれぞれのコマンドを苦労して覚えなければなりません。

 

Powerbeats Proは左右のイヤホンに同じ形のリモコンボタンが乗っていて、どちら側からでも同じ操作ができます。特に使う頻度が高い、ボリュームのアップ・ダウンが個別のボタンに切り出されて配置されていることが素晴らしいと思います。サイドパネルの「b」ボタンのシングルクリックが音楽の再生・一時停止、ハンズフリー通話の受話・終話になっています。ダブルクリックが早送り、トリプルクリックは早戻し。ボタンの長押しとハンズフリーの呼び出しでSiriが起動します。これだけ覚えておけば、左でも右でも同じ操作ができるので、迷う要素はグンと低くなります。なおAndroidスマホとペアリングした場合もボタンの操作は一緒。長押しで音声アシスタントが起動します。ボタンの感度は鋭すぎず、鈍くもないレベルにほどよくチューニングされているので、誤操作は低く抑えられると思います。

↑本体の側面。ブランドロゴがリモコンボタンになっています。左右のボタンともに同じ操作が割り当てられているので、迷うことなく操作ができます

 

↑トップのボタンが音量のアップダウン。前後が個別にクリックできます

 

格段に進化した上質な低音。ワークアウトにも最適

音質をチェックするため、iPhone XにペアリングしてApple Musicの曲を再生しながら確かめてみました。一聴してわかるのは厚みとスピード感のバランスがとてもよいこと。そして特に質の高い低音再生。中低域のつながりがとてもスムーズで、音楽再生のグルーヴ感が一味違います。低音の打ち込みが鋭く、音像はふくよかで弾力にも富んでいます。Powerbeats3 wirelessもクールで爽やかな中高域を特徴としていましたが、Powerbeats Proはこれに豊かな低域を加えた感じのサウンドです。広い音場感はそのままに、ボーカルや楽器の定位がますます鮮明になっています。

↑iPhone Xにペアリングして試聴。自動耳検出の設定が切り替えられます

 

試聴した楽曲の中では例えばCOMPLEXの名曲「恋をとめないで」がとてもよくハマりました。吉川晃司のパワフルなボーカルが前のめりに張り出してきて、スピード感あふれるベースとドラムスの低音がどっしりと演奏の足場を固めます。布袋寅泰のエレキもハイトーンが炸裂。広々としたステージの様子を堂々と描いてくれました。tofubeatsの「クラシカロイド モーツァルト ムジーク」から冒頭の楽曲「アイネクライネ・夜のムジーク」も星咲花那のボーカルがとてもイキイキとしていて、リアルな存在感を目と鼻の先の距離に感じられます。伸びやかな開放感と繊細なニュアンスの高い表現力に引き込まれることうけあいです。

 

厚みのあるバンドサウンドがこんもりとダマにならず、ボーカルや楽器の音の定位をビシッと描いてくれるので、例えばほかにも上原ひろみのピアノトリオや、クラシックのオーケストラにも力負けせず、スケールの大きな景色をゆったりと見せてくれます。一方で音調がややドライなので、落ち着いたピアノのソロやアコースティックなバラード系のボーカルを再生すると、もう少ししっとりとした艶っぽい質感も欲しくなりました。

 

ジムでワークアウトをしながらアップテンポな音楽も聴いてみました。やはりリズムが足元から勢いよく立ち上がるような迫力がたまりません。ボーカルの色鮮やかさも疲れた体を前に突き動かしてくれます。遮音性が高いので、自分が聴いている音楽の世界に深く没入できます。たいへんに頼もしいワークアウトイヤホンだと思います。きっとこれから多くのアスリートに選ばれるでしょう。

↑ジムで汗を流すときにも密閉型のPowerbeats Proならいっそうトレーニングに集中できます

 

カラバリは夏ごろ登場予定

AirPodsの装着感や遮音性に不満があった皆様には、対極の魅力を前面に打ち出してきたBeats初の完全ワイヤレスイヤホンは待ち望んでいた愛機になると思います。発売時はブラックから先行されますが、後に続くアイボリー/モス/ネイビーを合わせた4色のカラバリ展開も予定されています。2019年を代表する強力な完全ワイヤレスイヤホンのメガヒット誕生の予感がしています。

↑カラバリも夏ごろに登場予定