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2019/6/18 18:00

激戦のワイヤレスヘッドホン市場にまた新たな刺客参戦! Jabra「Elite 85h」は忠実な音作りが真摯

Jabraから初のアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載したワイヤレスヘッドホン「Jabra Elite 85h」が発売されました。6月中旬に海外へ出かける機会があったので、早速旅のシーンでElite 85hの実力を試してみました。

↑Jabra初のANC搭載ワイヤレスヘッドホン「Jabra Elite 85h」を海外取材の道中で使ってみました

 

Jabra

Jabra Elite 85h

実売価格3万7800円

 

AIテクノロジーを活かした「SmartSound」を採用

Elite 85hは今年初にラスベガスで開催されたエレクトロニクスショー、CES2019でJabraが発表した製品です。筆者はブースで実機に触れて興味を持ち、ぜひ日本発売の折には最大の特徴であるAIテクノロジーを活かした「SmartSound」を体験してみたいと思いました。CESの時にはもうひとつのハイライトとして、本体に触れず音声操作だけでスマホのAIアシスタントが起動できる「ハンズフリー・ボイスアシスタントコントロール」(最新AirPodsのハンズフリーで使えるHey Siriみたいなもの)は搭載のアナウンスがありませんが、またアップデートで追加実装された時にでもぜひ試せればと思います。

 

Elite 85hは見た目にも北欧のブランドであるJabraらしい、ファブリック素材の質感を活かした高級感のあるデザインが魅力です。今回はネイビーのカラバリモデルを借りて試しました。シングルカラーに統一されたミニマルなルックスは男女を問わず使えそう。カジュアルからフォーマルまで様々な服装にマッチしてくれるシンプルなスタイルです。

↑ファブリック調の外装を採用。全体を同じ色合いに統一したシングルカラーのスタイリッシュなデザインです

 

手に取ってみるとヘッドバンドがやや硬めに感じられましたが、頭に装着してみると側圧は思っていたよりもキツくありませんでした。筆者は頭の横幅が広いため、海外ブランドのヘッドホンはヒンジの長さが足りないことがよくあります。欲を言えば本機ももう少しだけヒンジを長く伸ばせればありがたかったです。

 

音楽再生、ならびにハンズフリー通話の操作は右側イヤーカップ中央の「多機能ボタン」で行います。その上下には音量、曲送りなどを操作できるボタンがあります。右イヤーカップの側面には音声アシスタントを呼び出すための「音声ボタン」を搭載。さらに左側イヤーカップの「サウンドモードボタン」はマニュアルでANC/ヒアスルー(外音取り込み)/オフをクリックで切り替えたり、1秒長押しするごとに使用シーンによってANCとヒアスルーのバランス化を最適化した「モーメント」が切り替わります。

↑右のイヤーカップに多機能ボタンや音量のアップダウンなどの操作に使うボタンが配置されています

 

スマホなど音楽プレーヤー機器とのBluetooth接続については、CESの時点ではJabra独自に接続性能を高めたmSBCという方式でつなぐという説明を同社のスタッフから受けましたが、今回の日本発売のアナウンスにはとりあえずSBCのみ対応とだけ記載されています。秋頃にはソフトウェアのアップデートによりAACにも対応するという、iPhoneユーザーにとって良い知らせもあります。

 

充電にはUSB Type-Cケーブルを使います。今回はグーグルのPixel 3 XLとペアにして旅の道中でテストしましたが、最新のAndroid端末やiPad ProもUSB Type-Cによる充電を採用しているので、ヘッドホンも統一されればスーツケースに詰め込むケーブルの種類が少なくできて嬉しいですね。内蔵バッテリーはANC機能をオンにしてワイヤレスリスニングを楽しんでも最大36時間も持つというスタミナ設計。万一バッテリーが切れた時にも有線リスニングができるよう、同梱されているヘッドホンケーブルを充電ケーブルに航空機用変換アダプターも含めて、まとめて専用キャリングポーチで持ち運べます。

 

さまざまなシーンで「SmartSound」をテスト

では最初にサウンドの感触を報告します。Apple Musicからいくつかジャンルの異なる楽曲を試聴してみましたが、全体にニュートラルなバランスでクセのないチューニングだと思います。音声コーデックがSBCまでの対応になりますが、物足りなさは感じません。細かな音の粒立ちが鮮明で、ハーモニーにもしっとりとした一体感があります。EDMやアグレッシブなロック、ジャズの楽曲は素の状態だとやや物足りなく感じる楽曲があるかもしれません。そんな時には「Jabra Sound+」アプリのイコライザーを活用することをおすすめします。

↑Jabra Sound+アプリからANC、ヒアスルーのセッティング、イコライザーによるサウンド調整などパーソナライズができます

 

5バンド構成のイコライザーの設定はユーザー任意にバランスをマニュアルで変えることができます。パーソナライズした値はアプリに「マイモーメント」として、NC効果やヒアスルーの設定と一緒に残せます。いくつかの「音楽プリセット」も用意されていますが、筆者は特にボーカルの聴きやすさがアップする「音声」を、機内で映画やドラマ、アニメなどスマホに保存した動画コンテンツを楽しむ時に重宝しました。

↑5バンドイコライザーよりも手軽なプリセットも用意されています

 

続いてANC機能であるSmartSound+の効果も様々な場所で試してみました。本機能はドイツのaudEERING社が培ってきた、環境音をリアルタイムに分析するディープラーニングの技術がベースになっています。Elite 85hはヘッドホンに内蔵する合計6個のANC用マイクで環境音を拾い、正確にノイズ成分を検知、打ち消す仕組みを採用しています。

オートANC機能「SmartSound+」を有効にすると外の環境音をヘッドホンに搭載されているマイクが拾ってANCの効果を自動で最適化してくれます

 

シーンに応じたモード切り替えのスピードと正確さについてはまずまずといった手応えでした。例えば飛行機の中でヘッドホンを起動して音楽再生を始めると、最初はしばらく解析が続き、続いてヒアスルー付きの「パブリック」になってしまいました。続いて2分ぐらいしてから「通勤」にシーンが切り替わるも、通常はオフのヒアスルー機能がオンのまま継続してしまい、機内ノイズが聞こえてしまいました。飛行機や電車による長旅などしばらくはシーン変更が不要な場面であれば、SmartSound+をオフにしてANCを手動でアクティブに、街を歩きながら音楽を聞く時など環境が頻繁に変わる時にはSmartSound+を活用するという使いこなし方がよさそうです。

↑ホテルで原稿を執筆中に音楽を聴きながら試してみました。SmartSound+はオートで「プライベート」に最適化されました

 

↑「プライベート」は静かな環境下でANCをオフにするモード。電力の消費も抑えられます

 

筆者がよく知るANC搭載ヘッドホンのなかでは、ソニーの「WH-1000XM3」がペアリングしているスマホの加速度センサーで集めた情報と連携しながらユーザーの行動パターンを解析して、ノイズキャンセリングの効果を自動で切り替える「アダプティブサウンドコントロール」という、Jabraと少し似た機能を搭載しています。Elite 85hの場合はスマホのセンサーは使わず、内蔵マイクで集音した音のデータをベースとした解析、オーディオの聴こえ方を最適化する仕組みのようです。ANCの利き方はシーンが変わると劇的に変化する感じはありませんでした。

 

シーンが切り替わる時にはボイスガイドが「In Public Moment」といった具合に聞こえてきます。ボイスガイドと入れ替わって音楽が消音されるので、没入感が損なわれるのが残念なところ。ソニーの1000Xシリーズもやはりシーンチェンジの時にアラームが鳴るのでふと我に帰ってしまいます。ユーザーが気づかない間にノイズキャンセリング効果がかかってしまうと、移動しながらヘッドホンを使っている時に危険な場合もあり得るため、これを配慮しての仕様なのかもしれません。例えば音を鳴らす代わりに、ヘッドホンにApple Watchのようなハプティクスセンサーを内蔵して、シーンチェンジを振動で知らせるヘッドホンがあっても良いかもしれないですね。まあこれでも驚かされる感覚が嫌という場合もあると思うので、音声ガイドをオフにできる選択肢があるのがベストだと思います。

↑外に出て街中を歩きながら使う際にはヒアスルー効果も欲しいところ。SmartSound+のセッティングは自動的にヒアスルー付の「パブリック」を選択してくれました。ヒアスルーの強度はアプリから調整もできます

 

↑「パブリック」は外の音を取り込むヒアスルー機能をオンにするモード。ヘッドホンをつけたままアナウンスなども聴きとれます

 

↑ニューヨークに新しくできたスターバックス リザーブ ロースタリーへ。中に入るとアプリの設定は「パブリック」に。通常のカフェならパブリックでも良いのですが、こちらのカフェでは巨大なコーヒー豆の焙煎機が稼働していて、結構機械の音が響いています。手動でヒアスルーをオフに切り替えました

 

↑ニューヨークの地下鉄にて。モードは「通勤」になりANCオンのヒアスルーオフになりました

 

Elite 85hのANC機能はしっかりとした消音効果が感じられて、そのうえ音楽再生の自然さも損なわないバランス感覚が良いと思います。飛行機に乗りながらアナウンスを聞きたい時には、左側イヤーカップのボタンをクリックするとANCをオフに、またはヒアスルーに切り替えてすぐに反応ができました。欲をいえばクイックヒアスルー的に、ボタンを押している間だけヒアスルーに切り替わる機能もあれば完璧だと思います。

 

ヘッドホンの状態に応じたオート電源オン/オフが便利

Elite 85hは独特な電源操作を採用するヘッドホンです。本体を平らに折りたたんでいる状態から、イヤーカップを起立させると電源がオンになります。最初は違和感を感じましたが、使い慣れてくるとヘッドホンを着脱する動作の間に電源がオンになり、ペアリングを済ませておけばすぐに音楽再生が始められる便利さが手放せなくなりました。

 

正確には右側のイヤーカップが電源スイッチになっているので、左側だけ回転させても音楽再生はストップしません。ヘッドホンを頭から外すと音楽再生が一時停止され、再び身につけると停止位置から再生が再開され、無駄なバッテリーの消耗が防げます。だから、右側のイヤーカップだけ立てた状態で肩にかけたままにして、気付かぬうちにバッテリーが減っていたということは起こりにくいと思います。

↑空港にて。ヘッドホンを写真のように折りたたんで肩にかけている間は電源が自動でオフになってくれるので便利です

 

↑飛行機の登場時間が近づくと頻繁にアナウンスが聞こえてくるようになります。ヒアスルーにしておくと外の音がかなりしっかりと聞けてよいです

 

↑飛行機の機内でも、テイクオフしてしばらくはパブリックのまま。安定飛行に入ってしばらくしてから通勤に切り替わりました

 

AIアシスタントはJabraがいち早く対応してきたAmazon Alexaをビルトインしたほか、ペアリングしているスマホがiPhoneならSiri、Android端末ならGoogleアシスタントが右イヤーカップの多機能ボタンによる操作で素速く呼び出せます。音声入力操作へのレスポンスが機敏なところにもJabraの豊富な作り込みの経験値を感じました。

 

ほかにも筆者が頼もしく感じたポイントは、本体をIP52相当の防滴・防塵対応としたところです。今回のテスト中も傘を持たずに街を歩いている時に小雨がぱらつき出したので、こちらの機能が大変に重宝しました。もちろん大降りになってきた場合はバッグの中などにしまった方が良いのですが、屋外で使う機会の多いポータブルヘッドホンも防滴性能の有無を気にして選ぶべきかもしれないと考えさせられました。

 

Jabra Elite 85hはハイテクな部分が注目されがちなヘッドホンですが、基本に忠実な音作りと自然なANCの効果にとても好感が持てるヘッドホンでした。毎日の音楽リスニングに飽きることなく使えると思います。今後もソフトウェアアップデートで進化する余地もまだ残されているのではないでしょうか。様々なメーカーが参戦する熱き激戦区であるANC機能付きワイヤレスヘッドホンにまた有力な選択肢がひとつ加わりました。

 

Jabra

Jabra Elite 85h

実売価格3万7800円

 

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