AV
2019/9/12 17:30

イヤホンは“ノイキャン”が当然に――「IFA 2019」から見えてくるオーディオトレンド考察

ドイツ・ベルリンで開催されたエレクトロニクスショー「IFA 2019」に、今年も多くのヘッドホン・イヤホンの新製品が展示されました。注目製品を振り返りながら、2019年後半以降のトレンドを読んでみたいと思います。

 

「ノイキャン戦国時代」を迎えた完全ワイヤレスイヤホン

今年の夏にソニーがアクティブノイズキャンセリング機能を載せた完全ワイヤレスイヤホン(以下 TWS)「WF-1000XM3」を発表しました。本機に続けといわんばかりに、IFAにノイズキャンセリング機能を載せた面白いTWSを発表したブランドがありました。

 

ひとつはデンマークのリブラトーンです。「Track Air+」という新製品はコンパクトな本体から想像できないほど、強力なノイズキャンセリング機能を搭載しています。専用アプリから消音レベルを0~30のレベルで1ステップずつ、好みに合わせて変えることができます。耳栓タイプのカナル型イヤホンとして、ノイキャン無しでも高い遮音性を確保しているため、レベルを最強の「30」にすると、目の前で製品について説明してくれているスタッフの話し声がほとんど聞こえなくなるぐらいのパフォーマンスを実現していました。

↑リブラトーンのノイキャン機能を搭載した「Track Air+」

 

↑アプリから消音レベルが調節可能

 

音質も中立的でバランスがよく、ボーカルの声がしっかりと浮かび上がって聞こえるほど音像の立体感も鮮明に感じられました。低音がだぶつかず、パンチも効いてます。

 

BluetoothオーディオのSoC(システム化されたICチップ)にはクアルコムのQCC51xxシリーズが搭載されており、ノイズキャンセリング機能もこのICチップに統合されている機能から作り込んでいるそうです。オーディオコーデックはaptX/AAC/SBCに対応しています。

 

バッテリーはイヤホン単体で約6時間の連続音楽再生を確保。Qiによるワイヤレス充電も可能です。ヨーロッパではアマゾンで先行販売がスタート。価格は199ユーロ(約2万4000円)になります。日本で発売されたらすぐにでも買いたいイヤホンです。

↑ワイヤレス充電に対応するケースを採用しています

 

ファーウェイからはアップルのAirPodsにとてもよく似たデザインの「FreeBuds 3」というTWSが発表されました。9月19日に予定している新しいフラグシップスマホのグローバル発表に合わせて、価格や発売時期・地域に関する詳細の発表は持ち越されましたが、実機を体験することができたので報告します。

↑ファーウェイの「FreeBuds 3」

 

↑ブラックとホワイトの2色があります

 

見た目だけでなく、イヤーピースを使わない“耳乗せ”のインナーイヤースタイルの装着感、半密閉構造で音抜けの良いクリアなリスニング感までもがAirPodsによく似ています。

 

本機もまたアクティブノイズキャンセリング機能を搭載しています。半密閉構造なのにノイズキャンセリング機能を載せて意味があるのだろうかと思いながら試聴してみたところ、周囲の騒音が適度に静まって、音楽がよりシャープに聴けるようになる手応えはなかなかのものでした。日常の街中リスニングでは効果を発揮してくれるのではないでしょうか。

 

本機にはファーウェイのグループ傘下の企業であるハイシリコンが開発したオーディオ用SoCである「Kirin A1」チップが搭載されています。ファーウェイのスマホを近づけると、イヤホンの画像が画面に出てきて、タッチしてペアリングが素速く完了する機能などもAirPodsに近づけています。Qiによるワイヤレスチャージにも対応。詳細の発表が楽しみです。

↑円形の充電ケース

 

一流ブランドから1万円台予想の良質入門機

今年の後半はちょうど1万円前後の価格帯の、いわゆるエントリークラスのTWSが盛り上がりそうです。しかも有名なブランドが実力機を投入してきます。

 

オーディオテクニカの「ATH-CK3TW」はイヤホンとケースのコンパクトサイズにこだわりつつ、ヨーロッパでは11月に99ユーロ(約1万2000円)で発売を予定するエントリークラスのTWSです。本体の左右側面にタッチコントローラを搭載。オーディオコーデックはaptXにも対応しています。自然な開放感のある中高域と、力強い低音が印象的でした。

↑オーディオテクニカの「ATH-CK3TW」

 

↑ケースは手のひらサイズを実現しました

 

スカルキャンディの「Sesh(セッシュ)」はアメリカでは販売がスタートしている完全ワイヤレスイヤホン。本機もやはりイヤホンとケースのコンパクト化を徹底的に突き詰めました。デザインも洗練されていて、49ドル(約6000円)という価格が一段と魅力的に感じられます。

↑スカルキャンディの「Sesh」

 

パイオニアの「C5(SE-C5TW)」はヨーロッパでの販売価格が99ユーロ(約1万2000円)というエントリーモデル。スティック形状のケースにイヤホンを格納します。鮮やかな深紅のほか、ホワイトとブラックが揃いました。

↑パイオニアのC5

 

↑カラバリが3色揃っています

 

JVCの「HA-A10T」はマットな質感がスタイリッシュな、ヨーロッパでは69.99ユーロ(約8300円)で販売が予定されているTWSです。ボタン式のリモコンを採用しています。

↑JVCの「HA-A10T」

 

秋に買いたいノイキャン搭載ワイヤレスヘッドホン

これから涼しくなる秋は、耳全体を心地よく包み込んでくれるポータブルヘッドホンが活躍する季節です。ノイズキャンセリング機能を搭載したBluetoothワイヤレスヘッドホンの実力機がIFAにそろい踏みしました。

 

ゼンハイザーからは新しい第3世代のMOMENTUMシリーズが発表されました。アラウンドイヤータイプで、ノイズキャンセリング機能を搭載した「MOMENTUM Wireless」です。名称は現行の第2世代のモデルから変えていません。

↑ゼンハイザーの第三世代にあたるMOMENTUMシリーズのワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン

 

落ち着きのあるブラックとホワイトの2色展開で、ヨーロッパではブラックから9月上旬に399ユーロ(約4万8000円)で発売されます。42mm口径のゆったりとしたサイズのドライバーユニットが力強く立体感の豊かなサウンドを鳴らし切ります。ノイズキャンセリング効果も抜群。今回のモデルから「風切り音防止」と、イヤーカップ内側のプレッシャーを軽減するモードが選択できる機能が付きました。外音取り込み機能も搭載されています。万一ヘッドホンを紛失してもBluetoothトラッキング機能で探せるTILEのサービスを組み込んでいます。

↑ブラックとホワイトの2色展開です

 

AKGもフラグシップクラスのワイヤレス対応ノイズキャンセリングヘッドホン「N700NC M2 Wireless」を発表しています。ヨーロッパでは9月に299ユーロ(約3万6000円)で販売が予定されています。

↑AKGの「N700NC M2 Wireless」

 

本体色は高級感あふれるブラック。本体をコンパクトに折り畳める3Dフォールディング機構を備えています。ノイズキャンセリングは周囲の喧噪の度合いにより「飛行機/電車/街中」の3段階から切り替えることができます。バッテリーは最長で23時間の連続音楽再生に対応します。音質はAKGのヘッドホンらしい、クリアで艶のある中高域を継承。低音もスピード感と切れ味に富んでいました。サムスンのGalaxyシリーズと音楽再生や機能性の面で親和性を高めているそうです。

↑本体をコンパクトに折りたたむことができます

 

スカルキャンディからは、昨年発売された「Venue」に続くワイヤレス対応ノイズキャンセリングヘッドホン「Crusher ANC」が登場です。10Hzから200Hzの帯域の音に反応して本体が振動する、Crusherシリーズ“伝統”のハプティック機能を備えています。ノイズキャンセリングの信号処理がVenueの時はアナログでしたが、新製品ではデジタル化したことで精度が高まっています。

 

ブースで音質を確認してみたところ、解像度に一段と磨きが掛かっているように感じられました。スウェーデンのスタートアップ、audiodoが開発したモバイルアプリからは、ユーザーの耳に合わせて音の聞こえ方を最適化できるパーソナライゼーション機能が利用できます。アメリカでは秋に299ドル(約3万6000円)で発売を予定しています。

↑↑スカルキャンディの「Crusher ANC」

 

↑装着イメージ

 

このほかにもパナソニックのHiFiオーディオブランドであるテクニクスから、初のハイエンドイヤホン「EAH-TZ700」が発表されました。価格は1199ユーロ(約14万4000円)を想定して、11月の発売に向けて投入準備が進められています。コンパクトなハウジングには10mm口径のダイナミック型ドライバーを搭載。メタルドームとフリーエッジ構造の振動板によりメリハリを効かせた鮮度の高い音を楽しませてくれました。見た目に高級感あふれるデザインも好印象でした。

↑パナソニックのハイエンドイヤホン「EAH-TZ700」

 

ワイヤレスヘッドホンの新製品は「ノイキャン付」が標準になり、かつてのハイエンドモデル中心から2万円前後のスタンダードクラスにまで良質な製品が増えています。そして耳乗せスタイルの「オンイヤー」から、耳全体を覆う「アラウンドイヤー」の方に人気が集中しつつあるように感じました。ポータブルオーディオは秋冬新製品がIFAを皮切りに、今後も各社から続々と発表されそうです。楽しみな季節がやってきます。

 

【ギャラリー(GetNavi webでご覧いただけます)】

【この記事を読んだ方はコチラもオススメ】

Androidウォークマン復活! 1000Xシリーズのネックバンドタイプなど ー IFAのソニーを一気に振り返る

テクニクス初のイヤホンが国内最速展示! 例年にも増して盛り上がった「ポタフェス大阪」会場レポート