自由にカスタマイズできる完全ワイヤレスイヤホンはどのようにして生まれたのか
――リケーブルができるとてもユニークな完全ワイヤレスイヤホン「TM2」のアイデアが生まれたきっかけを教えてください。
阿部氏:2016年にネックバンド式のMMCX端子を搭載したBluetoothリケーブルを企画していました。当社が発売していたリケーブルに対応するイヤホン「TE05」に対応させることを検討していたのですが、TE05の端子形状がやや特殊だったため、これに合わせてしまうと他の製品との互換性が確保しづらくなるため、いったん開発を中断しました。
次に2017年に完全ワイヤレスイヤホンを商品化する企画が持ち上がりました。当初TE05をベースにした完全ワイヤレスイヤホンをつくろうとしていたのですが、加えて何かフォステクスらしい“ひねり”を効かせたいと考えて商品化した製品がTM2として形になったのです。
昨今は特に完全ワイヤレスイヤホンへの注目度が高まっているので、当社のイヤホン向けドライバーの高い性能をアピールしながら、同時に皆様が既にお持ちのリケーブルに対応するイヤホンを有効活用できる完全ワイヤレスイヤホンを企画しました。
――フレキシブル・ショート・ケーブルごと交換するという発想が面白いだけでなく、とても機能的だと思います。
阿部氏:TM2さえ持っていれば、お持ちのカスタムイヤホンも含めて、自身のスタイルを追求しながら様々なイヤホンを装着して楽しめるイヤホンにしたいと考えました。現在はMMCX端子と2種類の2ピン端子に対応しています。フォステクスにもTE100やTE200といった2ピン端子のハイブリッド方式の上級モデルがあることから、端子のバリエーションを設けていますが、今後はさらにオプションを追加する計画もあります。オーディオテクニカのA2DC端子に対応するケーブルを近日発売予定です。
――TM2はフォステクス独自のスマホアプリから様々な機能が使えるようになりました。
阿部氏:iOS版から提供を始めた専用アプリ「Fostex TM Sound Support」を使うと、接続したTM2のファームウェアをアプリ経由でアップデートできるようになるほか、外音取り込み機能の「ランドスケープサウンド」が追加されます。
次のアップデートでは、5バンドイコライザーや本体のタッチセンサーリモコンからペアリングしているスマホのAIアシスタントが呼び出せる機能の拡充も予定しています。
――今後はTMシリーズとして、ラインナップを拡張する計画もありますか。
阿部氏:まだ詳しい内容を話すことはできませんが、企画は進行しています。「T」はフォステクスの象徴である平面磁界駆動型のヘッドホン「T50RP」から、「M」はMMCX端子のMを取ったものです。フォステクスの主力ラインナップとして、今後完全ワイヤレスイヤホンに関連する最先端を積極的に取り込みながら、質の高い「フォステクスらしい完全ワイヤレスイヤホン」をポータブルオーディオファンの皆さんにご提案したいと意気込んでいます。
TM2の発売後からショップの方々とお話しをすると「TM2でワイヤレス化ができるなら、今からカスタムイヤホンを作ってみたい」という声も聴こえてきたそうで、イヤホンを楽しむ方々の関心が、TM2をきっかけとしてよい形で循環する機会が生まれたことを私自身もうれしく思います。
お気に入りのイヤホンの音に足し引きしないサウンド
TM2の本体に付属するイヤホンの音質はとてもニュートラルでむやみな色付けがなく、様々なジャンルの音楽再生にバランスよくマッチしてくれます。お気に入りのイヤホンを装着して聴いてみても、ふだん音楽プレーヤーやスマホにケーブルで接続して聴いている音にTM2由来のクセが乗ることもなく、愛機がそのまま完全ワイヤレスイヤホンになる手応えが得られます。筆者も「FitEar Air」で試してみましたが、静寂を極めるカスタムイヤホンならではの高い遮音性能に加えて、ケーブルレスならでは取り回しの良さが身に染みて実感されました。
TM2は本体がIPX5相当の防滴性能を備えているので、スポーツシーンや雨の屋外でも汗や水に濡れても大丈夫。むしろ組み合わせるイヤホン本体が防滴・防水性能を備えているものなのかをよく確認してから使うことをおすすめしたいと思います。
フォステクスのTM2が登場したことで、これからは完全ワイヤレスイヤホンも、有線イヤホンのようにカスタマイズを楽しめる時代がやってくるのではないでしょうか。
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