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2019/11/7 20:10

オーディオ業界に新風を巻き起こすか! ボーズのサングラス型スピーカー「Bose Frames」超濃厚レビュー

海外で先行発売されていたボーズのメガネ型ウェアラブルデバイス「Bose Frames」が日本上陸を果たしました。ヘッドホン・イヤホンのようでもある“着るスピーカー”の上手な楽しみ方を検証してみたいと思います。

↑ボーズのメガネ型ウェアラブルデバイス「Bose Frames」(実売価格2万7500円)

 

基本はメガネ型のBluetoothスピーカー

Bose Framesはメガネ型のウェアラブルデバイスですが、その用途は映像や情報を「見る」ことではなく、音を「聴く」ことに特化しています。つまりメガネ型のワイヤレススピーカーとして楽しむ製品です。

 

リムのところにスピーカーなどが内蔵されているため、本体は普通のメガネよりも少し大きめ。でもそのぶん小顔に見えて得する感じもあります。

↑厚めのリムのところにスピーカーを搭載。耳の方向へストレートにクリアな音を届けます

 

“着るスピーカー”であるBose Framesのサウンドはかなりしっかりしていると感じました。耳を塞ぐイヤホン・ヘッドホンと違って、いわば「完全にオープンスタイル」なワイヤレスオーディオ機器なので、屋外で使用すると周辺の環境音も普通に聞こえてしまいます。ただ、Bose Framesが鳴らしている音楽も明瞭に聴くことができます。特にボーカルやピアノ、ギターなどメロディラインは輪郭線がボールドで肉付きが良く、明瞭に立って聞こえてきます。BluetoothオーディオのコーデックはSBCとAACに対応しています。

 

音は周囲にもそこそこの音量で聞こえてしまうため、周囲に人がいる場所で本格的に音楽リスニングを楽しむ用途には不向きかもしれません。自分がある程度心地よく聴けるボリュームに上げた状態で、周りに漏れ聞こえる音は思っていたよりも大きくはなかったものの、静かなオフィスや図書館のような室内、あるいは人との距離が近くなる満員電車やカフェなどの場所では周囲に迷惑をかける心配があります。

 

もしも屋外で使うのであれば、街を歩く時など移動中であれば周囲の環境音が聞こえてくるメリットが活かせそうです。またあまり積極的におすすめはできませんが、自転車に乗りながらでも、外の音が聞こえてくるので比較的安心して音楽やラジオを聴きながら移動できます。

↑街中で装着しても違和感がありません

 

鼻当ての間隔が少し広いことと、リムがやや重いことから、筆者の場合はBose Framesを身に着けて小走りぐらいまで歩行速度を上げてしまうと、本体が顔からずり落ちてくることがありました。激しく体を動かすスポーツシーンにはあまり向いていないかもしれません。

 

スマホと組み合わせてスマートスピーカーのように使える

Bose FramesはBluetoothでペアリングしているスマホやタブレット、ゲーム機などの音を聴いたり、本体にマイクも内蔵しているので、スマホと組み合わせる場合はハンズフリー通話にも活用できます。

 

ペアリングしたスマホの音声アシスタントをBose Framesのボタンから起動して、声で操作することも可能です。iPhone 11 Proとペアリングして使ってみたところ、Siriの反応がとても速く、マイクの認識精度も悪くなかったため、身に着けるタイプのスマートスピーカーとしても戦力になってくれそうです。

 

スマホとのペアリングにはノイズキャンセリングヘッドホンのQuietComfrot 35-IIと同じ「Bose Connect」アプリを使います。ペアリング完了後にアプリを開くと、バッテリーの残量チェックや音声ガイドの言語変更など簡易なセットアップが行えます。Bose Framesの操作方法や取扱説明書などの役に立つ情報もアプリの中に収録されています。

↑Bose Connectアプリで本体のペアリングや設定操作が行えます

 

内蔵バッテリーによる駆動時間はワイヤレス接続の状態で連続して音楽を聴いた場合は約3.5時間です。フル充電にかかる時間が約2時間なので“燃費”はそれほど良くないように思うかもしれませんが、本機はこれでがっつりと音楽を聴き込むためのデバイスではないと筆者は考えています。その前提であれば内蔵バッテリーによる最大12時間の待機時間は十分に実用的であると言えます。

 

むしろバッテリーの充電に専用のケーブルを必要とした仕様がやや残念です。外出先で本体のバッテリーを汎用性の高いUSB Type-Cケーブルなどをスマホとシェアしながら使えれば、連続音楽再生時間が短めであることについても納得しやすかったと思います。

↑特殊な形状の充電用ケーブルを使います

 

マルチファンクションボタンで簡単操作

Bose Frames本体の操作方法はとてもシンプルです。右側のリムに金色の小さなマルチファンクションボタンが搭載されています。こちらを短押し・長押しする操作がペアリングされているモバイル端末側の音楽再生やハンズフリー通話、音声アシスタントの起動などに割り当てられています。

↑マルチファンクションボタンで再生中の楽曲やハンズフリー通話を操作

 

マルチファンクションボタンを2度クリックして、2度目を長押しするか、または本体を逆向きに置いて無操作のまま2秒間放置すると自動的に本体の電源がオフになります。

↑この状態で2秒放置すると電源が切れます

 

音を聴くことに特化したウェアラブルデバイスなのだから、ペアリングしたスマホの音量も遠隔操作したいところですが、こちらは残念ながらBose Frameからはできません。左側のリムにもボタンを設けて、クリック操作で音量の上下ができれば文句なしでした。

 

Bose Framesの本体はIPX2相当の防滴仕様になっています。細かな雨の飛沫に当たったり、夏場に汗がかかった時にもすぐに拭けば、屋外でも安心して使えそうです。

 

フレームデザインは1種類のみ。自分でレンズ交換も可

日本で発売されるBose Frames Altoは、海外で発売されているBose Framesから鼻当てやリムの間隔などを、日本人が身に着けた時に心地よい安定感が得らるように形状を最適化しています。

↑鼻当ては固定。日本で発売されるBose Frames Altoは鼻当てやリムの開き具合などをアジア人の顔の形に最適化しています

 

レンズには傷や破損に強いプレミアム素材(強化プラスチック)が採用されています。UVA(紫外線A波)/UVB(紫外線B波)を最大99%までカットできる耐紫外線性能の高いレンズとして、オプションに2種類の交換用レンズを揃えています。レンズ交換をユーザーが自分で簡単にできるところも特徴です。その方法はボーズのWebサイトに動画付きガイダンスが公開されています。

 

フレームのメイン素材はナイロンとして、約45gの軽さを重視した設計になっています。テンプル(つる)を折りたたむ際に負荷がかかる丁番にはステンレスのパーツを使っているため、強度は十分に確保されています。

↑折り曲げる機会の多い丁番には強度の高いステンレスのパーツを使っています

 

メガネのデザインは着ける人の顔の印象に大きな影響を与えるものです。でも残念ながら日本で販売されるBose Framesは「Alto」の1タイプのみ。フレームのカラーもチャコールグレー系1色です。レンズは3種類から交換できますが、購入時に装着されているレンズは度なしで濃いめのブラック系。メガネというよりもクラシカルでスタンダードなスクウェアデザインのサングラスと呼ぶべきルックスです。ふだんサングラスをかける習慣を持たない人は最初屋外で使うことに恥ずかしさを感じるかもしれません。

↑サングラスとしてはやや濃いめ。UVもカットしてくれます

 

「ドラクエウォーク」との相性が抜群だった

Bose Framesが活躍してくれそうな利用シーンを考えながら実践的な使い勝手を試しました。音楽以外にも、スマホで映画やゲームを楽しむ機会は頻繁に訪れそうですが、Bose Framesはリッチな没入感が得られるサウンドを肉付けしてくれます。Bluetooth音声信号の伝送遅延はとても少ないため、動画鑑賞時には役者のリップシンクがずれることなく心地よく視聴できました。よりシビアな低遅延性能が求められるゲームコンテンツについても、例えばiOSのガレージバンドなどの楽器系アプリは鍵盤をたたいた後に音が少し遅れて聞こえてくることもありましたが、「ドラクエウォーク」はとても快適にプレイできました。

↑ドラクエウォークの画面

 

「ドラクエウォーク」には、アプリを起動したままスマホを上下逆さまに向けて画面点灯によるバッテリーの消耗を抑える「バッテリーセーバー」の機能があります。こちらをオンにしておくと、Bose Framesで音楽を再生しながらゲームの効果音も同時に聴くことができます。さらに「WALKモード」をオンにするとオートバトル機能が併用できて、回復スポットでHP/MPを回復、アイテムも拾いながら効率よく“レベル上げ”ができます。Bose Framesは耳を塞がないポータブルオーディオなので、歩きながら効果音を頼りにプレイが進められる「ドラクエウォーク」との相性が抜群に良いアイテムでした。

↑バッテリーセーバー機能をオンにして端末を逆さにすると画面が消灯され、バッテリーの消費を軽減できます

 

そして屋外を歩きながら音声で道案内をしてくれるiOS純正の「マップ」アプリもBose Framesに組み合わせるととても便利でした。

 

静かな自宅で過ごす間にも、Bose Framesで音楽をより快適に楽しめる場面が数多くありました。例えばキッチンで家事をしている最中には水道を使ったり、食器がカチャカチャと重なり合う音にかき消されて、テレビやスピーカーの音が聞こえづらくなります。Bose Framesを装着していれば耳元で音が鳴ってくれるので、テレビ番組の音声もはっきりと聞こえます。自分以外の誰も我が家にいない時間であれば、SpotifyやAmazon Musicをテレビで再生して、画面に表示される歌詞を見ながらカラオケも心置きなく楽しめました。

 

Bose Framesによる音楽リスニングは、どちらかと言えば短時間の“ながら聴き”の方が向いているように思います。だから連続音楽再生が約3.5時間というバッテリーの仕様も理にかなっていると言えるのではないでしょうか。

 

今年はシーズンが終わってしまいましたが、来年の春にはぜひ本機を身に着けてプロ野球観戦に出かけて、ラジオの実況中継を聴きながら観戦を楽しんでみたいと思います。

 

度付きのクリアレンズに交換してみた

Bose Framesは使ってみると様々な活用イメージがわいてくるアイテムです。ただ、一方では色つきレンズ仕様のサングラスなので、夜は視界が狭くなってしまったり、メガネとしての使い勝手は改善できるポイントが残されていると感じました。特に筆者はコンタクトレンズが苦手なので、度なしレンズのままではBose Framesの真価を100%発揮させることができません。

 

そこで今回、筆者はBose Framesに合う交換レンズを作ってもらうことができないか、自宅の側にある眼鏡店のJINS(ジンズ)に足を運んで相談してみました。すると意外にもあっさりと「大丈夫ですよ」という力強い返事が返ってきたため、その場ですぐに見積もりを取ってもらいました。

 

JINSオリジナルのプラスチック素材を使った軽量な非球面レンズなら、Bose Framesに合わせられる最も安価なものが5000円(税別)で制作できたので、すぐに購入しました。屈折率1.60の通常クリアレンズなら約1時間でレンズが完成しました。

↑JINSでクリアタイプのレンズを作成。Bose Framesを“ふつうのメガネ+ウェアラブルスピーカー”として使えるか試してみました

 

↑クリアレンズを装着したところ

 

購入時にはJINSからの注意事項として、メガネのフレームに対する傷や破損への責任は負えないことについて書かれた同意書にサインを求められました。もっともな事です。なおレンズの方は6か月間の保証対象となりました。オプションのカラーレンズやブルーライトカットレンズなどへの対応については、クリアレンズから追加料金を支払うと、保証対象期間中であれば交換もできるそうです。

 

Bose Framesに合わせて作成してもらったレンズなので、ボーズ純正のサングラスのレンズに比べるとやや装着しづらいところもありますが、何度か繰り返すとコツを覚えてうまく着脱ができるようになりました。レンズを頻繁に着脱することもなさそうなので、フレームの破損についてはそれほど心配する必要はなさそうです。ただ、万一の際にはボーズの側でも故障や動作不良のサポートを行っていないため、今回ご紹介したサードパーティーのレンズ交換を試される場合は自己責任でお願いいたします。

 

レンズを作った後はもう、筆者の場合はクリアレンズを着けっぱなしにしてBose Framesを活用しています。Bose Framesは普通のメガネにしか見えないため、音楽を再生しながらふらっとコンビニやカフェに入ってレジに並ぶときにも、イヤホンやヘッドホンのようにいったん外して、会話にしっかりと耳を傾けていることを相手にアピールする必要もありません。

↑クリアレンズを装着すると、ウェアラブルスピーカーであることが一見わからないほど自然な外観に。「あの人、リムの大きめなメガネを掛けているね」と見られる程度の目立たない出で立ちでナイスな音を楽しむことができます

 

ボーズの新サービス「Bose AR」とは何か

アプリのホームメニュー、左下にある“口ひげ”のようなデザインのアイコンをタップすると「Bose AR」と呼ばれる新しいサービスのポータルページが起動します。

 

Bose ARは2019年の5月にQuietComfrot 35-IIの限定カラー「ローズゴールド」が発売された頃にスタートしました。Bose ARに対応するデバイスと、ペアリングされたスマホのGPS情報を活用して、周辺にあるランドマークの関連情報を音で知らせたり、またはデバイスに内蔵されているセンサーで検知したユーザーの頭の向きに音の定位を合わせて、リアルな没入感が楽しめるオーディオコンテンツが、このポータルページにずらりと揃う「予定」です。予定と念を押した理由は、まだ日本語対応のローカライゼーションができていないから。Bose ARの真価を判断できるようになるまではもう少し時間がかかりそうです。

↑Bose Connectアプリから、Bose ARのコンテンツにアクセスできます。既にいくつかのコンテンツが並んでいますが、日本からダウンロードできないものや、言語がローカライズされていないものばかりなので、その真価が試せる機会はもう少し先になりそうです

 

ただ、だからといってBose ARのプラットフォームに依存しなくても、Bose Framesによる音を活用したAR体験の斬新さを満喫できるアプリは他にもあります。環境が整うまでは、そういったアプリと組み合わせて活用しましょう。

 

仕様スタイルは一風変わっているデバイスですが、馴染んでくるとメガネ型のポータブルオーディオが今後ひとつのカテゴリーとして定着しそうな期待感もわいてきます。ぜひ多くの方々に一度試してみることをおすすめしたいと思います。

 

【ギャラリー(GetNavi webでご覧いただけます)】

 

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