AV
オーディオ
2019/11/19 17:30

Android搭載でどう変わった!? 新ウォークマン「ZX507」を前モデルと聴き比べてみた

ソニーのAndroid OSを搭載するハイレゾ対応ウォークマンが久しぶりに復活を遂げました。音楽ストリーミングサービスも高品位に楽しめる最新モデルから、音質にこだわったハイエンドの「NW-ZX507」の特徴について、前機種の「NW-ZX300」と比べながらレポートしたいと思います。

Android搭載ウォークマン「NW-ZX507」(左)は2017年発売の「NW-ZX300」(右)からどれぐらい進化しているのか、レポートしてみたいと思います

 

最新Android搭載ウォークマンの上位モデル

ソニーのハイレゾ対応ウォークマンには2019年現在、最上位の“Signature”「NW-WM1」シリーズのほか、エントリークラスのAndroid OSを搭載した「NW-A100」シリーズと2018年モデルの組み込みOSを搭載する「NW-A50」シリーズがあります。NW-ZX507は2017年に発売されたNW-ZX300と入れ替わる形でラインナップに加わるハイエンドモデル。ソニーのオンラインストアの販売価格は8万円(税別)です。

↑Android OSのほか、Wi-Fi、Google Playストアを搭載して様々なアプリが追加できるようになったNW-ZX507

 

NW-ZX300から変更されたポイントを見ていきましょう。

 

NW-ZX507はAndroid OSを搭載しただけでなく、Wi-Fi機能とGoogle Playストアが使えるので、SpotifyやAmazon Music、YouTubeなど音楽・動画配信サービスのアプリを自由にインストールして楽しむことができます。

 

ディスプレイはサイズが16%大きくなった3.6インチになり、解像度も720HD対応に向上。タッチパネルのレスポンスも快適です。クアッドコアのCPUを搭載しているので、ポータブルメディアプレーヤーとしてのアプリの処理性能は十分なレベルに到達していますが、より高度なプロセッサの処理性能を必要とするモバイルゲームについては時折動作が不安定になることがありました。常時通信が必要なゲームアプリについてもあまりAndroidウォークマン向きであるとは言えません。基本的にはオーディオ・ビジュアル系のコンテンツを高品位に楽しむためのAndroidウォークマンとして位置付けを解釈した方が良さそうです。

 

ストリーミング対応に向けて音質を徹底強化

デジタル接続端子は独自のWM-Portから遂にUSB Type-Cに変更されました。スマホやタブレット、ヘッドホンにイヤホンなど他のデジタル機器と充電用ケーブルをシェアしながら使えるので便利です。

↑左のZX507は本体のボトム側は丸みを帯びたデザインに。右のZX300はWM-Portを搭載しています

 

↑ZX507は本体のサイドにUSB Type-C端子を搭載しています

 

ZX507の音質はZX300よりも多角度的な強化が図られています。筐体の内部はオーディオブロックとデジタルブロックを上下に分離して、Wi-Fiアンテナなど通信用途に搭載するモジュールに由来する音への干渉を徹底的に排除。外部出力もデジタル出力に一本化してノイズの影響を抑える設計としたことで、ハイエンドのウォークマンらしいS/N感を実現しています。

 

さらに筐体の内部には厚みのある銅切削ブロックを配置。重心の低い低音、立体感のある音像の再現力につなげています。

 

エントリーモデルのA100シリーズとZX507との大きな違いは、より明瞭なステレオ感が得られる「バランス接続」によるヘッドホン・イヤホン再生に対応していることです。ZX507ではバランス出力用アンプブロックの電源に、ソニーのモンスター級デジタルオーディオプレーヤー「DMP-Z1」の開発から培った高分子コンデンサを載せて、より伸びやかで透明な色づけのない音作りを狙っています。

↑どちらのモデルもトップにはバランス/アンバランスのヘッドホン・イヤホン出力を装備。この点がA100シリーズとの大きな違いになります

 

もうひとつのアンバランス出力側の電源系統についても、ZX300シリーズと比べて電源容量を2倍として実装体積も8.2倍に拡大。その結果、よりつなげられる機器の面では汎用性の高いアンバランス出力もスケール感の豊かなサウンドに仕上げています。

 

内部でのパーツの接合についてはヘッドホン出力やバッテリー、電気二重層キャパシタなど温室に関わる重要な部分にはDMP-Z1で新規に開発した、金を添加する“はんだ”を使い、音の明瞭度アップにつなげています。

 

ハイレゾ再生の音質比較「ZX507 VS ZX300」

今回はZX507とZX300が搭載する4.4mm/5極のバランス接続に対応するヘッドホンとして、ゼンハイザーの「HD 820」で音を聴き比べました。まずはダウンロード購入したハイレゾ音源から。アップスケーリング機能やイコライザーなどすべての音質設定を無効化する「ソースダイレクト」をオンにして、ソースの生の状態でウォークマンの実力を試してみます。楽曲は土岐麻子が2017年にリリースしたベストアルバムから『僕は愛を語れない』を選んでいます。

↑ゼンハイザーのHD 820で試聴

 

↑音質調整関連の機能をシャットダウンして、音源ソースそのものの実力が楽しめる「ソースダイレクト」

 

前奏を聴いてすぐに、ゆったりと広がる甘いエレキピアノの和音に引き込まれました。ZX300と聴き比べると余韻の見晴らしがとても良くなっています。新しいZX507はノイズ感が一段と下がったことで、音源が混み合う演奏のなかでも、ボーカルの細かなニュアンスや楽器の音像定位、音色が鮮明に浮かび上がってきます。

 

エレキギターや金管楽器が奏でるメロディは芯の響きにたくましさが加わりました。しっとりとして艶っぽいボーカルも前にグンと迫ってきます。

 

低音は打ち込みがタイトで鋭く、ベースラインの抑揚がとてもしなやかに感じられます。良質な低音がバンドの演奏全体を引き締めて、奥行き方向へ音楽の深みを加えてくれるような感じです。初めてZX300の音を聴いた時には衝撃を受けたものですが、新しいZX507はまた一段と解像感と力強さが増して、音楽のリアリティが一皮むけた印象を受けました。

 

ストリーミング再生もDSEE HXでハイレゾ相当の音質に

ストリーミング音源の再生もより高品位に楽しめるところがNW-ZX507の醍醐味です。Amazon Musicから上原ひろみのアルバム「Spectrum」の楽曲『Yellow Wurlitzer Blues』を聴いてみます。

 

音楽ストリーミングサービスやCDからリッピングした音源を、ウォークマンに有線接続のヘッドホン・イヤホンをつないで聴く場合は“音もの機能”を積極的に使うことをおすすめします。

 

特に音源のクオリティを最大192kHz/32bit相当のハイレゾ品質にアップスケーリングする「DSEE HX」が効果的です。ピアノのハイトーンが滑らかになり、空間の広がりにゆったりとした余裕が生まれます。高さ方向の音場も天井をさらに一段超えたような広がり感が増して、ピアノの音色がとても煌びやかに、楽しく聞こえるようになってきます。

↑ストリーミング音源を再生する場合はソースダイレクトをオフにして、DSEE HXをオンにして使うことをおすすめします

 

ZX300のDSEE HXはアップスケーリング処理のパターンとしてプリセットされている5つのタイプから、ユーザーが任意に選択して使う仕様となっていましたが、ZX507には最新のAI対応になったDSEE HXのアルゴリズムが採用されています。最新のDSEE HXは楽曲の再生が始まると同時に、膨大な機械学習データの蓄積を元に最適なアップスケーリングのパターンを自動的にあてがいながら、ボーカルや楽器の音色、リズム等に合わせた最適な処理を行います。

↑ZX300のDSEE HXはプリセットから選択する仕様でした

 

DSEE HXなどの“音もの機能“はウォークマン純正の音楽プレーヤーアプリである「W.Music」以外でも使えるようになっています。W.Musicアプリで再生する楽曲に限らず、Amazon Musicなどの音楽配信アプリやサードパーティーの音楽プレーヤーアプリ、YouTubeやNetflixなど動画視聴系アプリのサウンドにも効果を発揮するのがうれしいですね。ハイレゾ再生の時以外はDSEE HXを常時オンにして使っても良いでしょう。

 

本体のハンドリング感、バッテリーの“持ち”はどうか

さらにサウンド以外にもNW-ZX507とNW-ZX300の違いを踏み込んでいきましょう。

 

片手で持ちながら軽快に操作できる本体のサイズは大きく変化していません。ボトム側の形状が丸みを帯びて、側面の曲送りボタンはよりフラットになっているため、見た目のデザインはZX507の方に柔らかみを感じます。反対に、本体をポケットに入れてボタンを手で探りながら操作する場合は、少し凹凸感を残しているZX300の方が筆者は使いやすいと感じました。

↑本体サイドのボタンはZX507(上)がよりフラットなデザインになっています。ポケットに入れて手探りで操作する時には少し凹凸のあるZX300(下)のボタンの方が便利だったように筆者は思います

 

またZX507は動画アプリの再生も想定しているためか、ディスプレイの表面処理は光沢仕上げになっています。さらっとしたZX300のマット仕上げのディスプレイが筆者はとても気に入っていたので少し残念です。

↑ZX507のディスプレイは光沢処理。タッチ操作のスムーズさはマット処理の方がよいと思いますが、動画再生時には光沢処理の方が精細感が出ます

 

↑ZX300はサラサラとしたマット処理でした

 

気になるバッテリーの持続時間ですが、やはりAndroid OSが採用されたことによって、同じ条件で楽曲を再生したときの持続時間はZX300の方がタフであるように思います。もし1日中ヘビーに音楽・動画再生を使い込んで、翌日もウォークマンをしっかりと活用する予定がある場合は1日単位で充電した方が安心でしょう。Androidスマホを扱う感覚で電源をオンにしたままだとバッテリーがそれなりに減って、いざ使いたいときに残量が残りわずかということも考えられます。面倒に感じるかもしれませんが、使い終わったら電源は毎度オフにするとバッテリーが長持ちします。

 

新しいNW-ZX507は、旧モデルのZX300よりも音質面で着実な成長を遂げていました。音楽ストリーミングのコンテンツやインターネットラジオ、そして時々動画再生もいい音で、屋外だけでなく家の中でもしっかりと音楽に向き合って楽しみたいという方にはおすすめできるポータブルプレーヤーです。最安値のモデルで3万2000円(税別)から購入できるNW-A100シリーズよりもだいぶ高価ですが、最大11MHzのDSD音源がネイティブで再生できたり、バランス接続にも対応したり、音へのこだわりは替えが効きません。この際、音質によりこだわりたいユーザーは思い切ってNW-ZX507を選んだ方が気持ちよい音楽ライフが過ごせるのではないでしょうか。

 

 

【ギャラリー(GetNavi webでご覧いただけます)】

 

【この記事を読んだ方はこちらもオススメ】

ソニーの新ウォークマンがAndroid OS搭載に! 初代機を模した40周年モデルも登場

ソニーのノイキャンイヤホンがさらに進化! 最新プロセッサー搭載の「WI-1000XM2」がスゴイ