今年も「秋のヘッドフォン祭2019」が11月2日、3日の2日間にわたって中野サンプラザで開催されました。200ブランド以上のヘッドホン、イヤホン、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)などが展示されるだけでなく、新製品発表会や世界初披露の製品なども登場して、国際的なイベントに成長しています。
今回は、これから発売される新製品を中心に、実際に音を聞いて気になった製品をピックアップ。最後はイヤホン編をお届けします。
FitEarはわかりやすい高音質で人気
日本のカスタムIEMブランドFitEarブースでは、今月から受注開始になった新製品「FitEar DC」とユニバーサルモデルの「FitEar TO GO! 335」の試聴機に長蛇の列が! ということで聴かせてもらいました。「FitEar TO GO! 335」はクッキリとした輪郭でメリハリがある分かりやすい音で、低音の量感も出ています。本機は3Way、3ユニット、5BAドライバー構成のカスタムIEM「MH335DW」をベースにしたユニバーサルモデルです。モニター用ということで個々の音が明確に分かる設計になっているのでしょう。
「FitEar DC」はフルレンジダイナミック型ドライバーの直列2基と静電型ツイーターのハイブリッドモデル。静電ツイーターは10kHzから上でクロスさせることでフラットな特性を実現していますが、そのぶん、全体の能率を下げる必要があり、アンプにパワーが必要とされます。こちらの音は中低域が厚くウォームな音色、高域は繊細で音像定位はシャープ。実際はカスタムイヤモニですから、ユニバーサル仕様で試聴したのとは音の印象が異なりますが、同社代表、須山氏が追求するハイブリッド型の集大成なので、FitEarファンの人にはぜひ聞いていもらいたいモデルです。
メタルハウジング採用のMEZE AUDIO「RAI SOLO」
今回展示されたなかで、私が手に入れたいヘッドホンの1つがMEZE「EMPYREAN」。平面駆動型ですが……この話は長くなるので割愛して、そのメゼの最新作イヤホンが「RAI SOLO」なんです。兄モデルの「RAI PENTA」が5ドライバーのハイブリッドモデルで13万371円(税込)だったのに対して、ダイナミックドライバー1発の「RAI SOLO」は2万9800円(税込)とすこぶるリーズナブル。ドライバーには通電性振動板を採用することでボイスコイルの引き出し線が不要になり、よりリニアな振動板の動きを実現しました。ハウジングはMIM(メタル・インジェクション・モールディング)という方法を使って、複雑な形状をステンレス合金で作り出しています。リケーブル対応でMMCX端子にも対応。
この音とデザイン、素材、仕上げでU3万円でいいんですかと問いただしたくなるほど素晴らしい出来映えのモデルです。音はヘッドホンに通じるところがあり、なめらかでウォームな音色を聞かせてくれました。帯域を欲張らず厚みのある音で耳に心地よく、左右の広がり感もあります。
ORBからついにインイヤモニター「CF-IEM」が登場
ORBは据え置き型ヘッドホンアンプやポタアンなども作っている完全自社生産のケーブルメーカーで、業務用ケーブルでも有名です。そんなORBとイヤフォン工房「G4 Audio」が共同開発したインイヤモニターが「CF-IEM」。フルレンジBAドライバーに新開発のバーチャルサウンドチャンバーを加えて低音域を補っています。透明なシェル内にはクリア樹脂を充填して余分な響きや振動を抑えクリアな音を実現しており、リケーブル対応で埋め込み式2PIN端子を採用。ORBオリジナルの豊富なリケーブルと組み合わせてあらゆるDAPやヘッドホンアンプに対応します。
その音はBA型らしいクリアで鮮明なものです。「Clear force Nova Custom IEM 2pin」ケーブルではなまめかしいまでに音が近く、粒立ちが強調されてクッキリした音になります。「Clear force Ultimate Custom IEM 2pin」に交換すると情報量が増えて、さらにクリアな感じになります。「Glorious force Custom IEM 2pin」では高域に明るい華やぎが加わりました。
Victor「HA-FW1500」はウッドドームカーボン振動板の最新作
JVCケンウッドからビクターブランドで発売されているイヤホンといえば、ウッドドームカーボン振動板を使ったHA-FWシリーズ。ハイエンドモデル「HA-FW10000」の価格と音に驚かされましたが、今回はその技術を受け継いでゴーキュッパを実現したハイコスパモデルです。モデル名は「HA-FW1500」(予想実勢価格約5万9800円)。カバ材を独自技術によって50μmの薄さに削り出して、カーボンコーティングしたPET振動板と組み合わせたウッドドームカーボン振動板を使うことで、外周部にはしなやかさをドーム中心部にはより高い強度を持たせています。
沈み込む低音がいい感じで解像度も高いです。高域も解像度が高く鮮明な音がします。これに対して中域がやや物足りなく感じました。音色はややクールで全体的にクッキリした音でした。
気になる新色のRHA「TrueConnect/Cloud White」
春のヘッドホン祭で初登場したRHAの左右独立型ワイヤレスイヤホン「TrueConnect」に新色のCrowd WhiteとNavy Blueが追加されました。このデザインはiPhoneと相性が良さそうと思って試聴してみると、AAC対応だけあってなかなかクッキリした音を聞かせてくれました。ドライバーは6mm径のダイナミック型で連続再生時間は約5時間。アルミ製のケースは高級感があり、パチリと閉まった時の感触も良好でした。
B&Wからダイナミック型とBAマルチのBluetoothイヤホン登場
Bluetoothヘッドホンを発表したBowers & Wilkinsからは、Bluetoothイヤホンも登場しました。発売は11月下旬を目標にしているそうです。どちらもネックバンド型でハウジングにはマグネットが内蔵され左右を付けてイヤホンが落ちるのを防げます。アイスブルーの「PI3」(予想実勢価格約3万円)は2BAドライバー構成を採用。
アクティブノイズキャンセリング機能付きで、14mmのシングルドライバーを搭載したダイナミック型の「PI4」(予想実勢価格約5万円)の2モデル。連続再生時間は「PI3」が8時間、「PI4」は12時間で15分の充電で3時間再生できる急速充電機能も備えています。
Luminox Audio「LUMINOX」は3種類の音色が楽しめるリケーブル
アユートブースに展示されていたリケーブルメーカーLuminox Audioのハイエンドモデル「LUMINOX」がちょっと面白い構造になっています。ケーブル内部に素材や構造、コーティングの異なるケーブルが4層構造になっていて、3種類の音が切り替えて聞けます。チューニング1から3まであり、切り替えると確かに音色が変わりました。私にはチューニング1が好印象でした。お値段はハイエンドモデルだけあって20万円ぐらい。3種類もいらないので、2種類で9万円ぐらいのモデルを作って欲しいとお願いしておきました。
今回のヘッドフォン祭は、アイテム数が豊富だったため3回にわたってお届けしてきました。これらの最新アイテムがいち早く試聴できるヘッドフォン祭は、毎年春と秋の年2回開催されていますので、次回の春のヘッドフォン祭にはぜひ足を運んでみて下さい。
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