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イヤホン
2020/1/10 19:00

Amazonで売っている「激安中華イヤホン」は本当に使えるのか!? オーディオ担当が買って試してみた

いまやすっかりおなじみとなったAmazon.co.jpのCyber Monday(サイバーマンデー)は、年に1回開催される大規模なセール。2019年は12月6日9時~9日23時59分の日程で実施されました。GetNavi webでオーディオビジュアルを担当している筆者も、このセールでUSB HDDやスマホの充電ケーブル、モバイルバッテリーなどを普段よりもお得に購入させて頂きました。

 

このときネット上で話題になったのが、90%以上の超絶割引となった完全ワイヤレスイヤホン。参考価格5万2999円、amazon.co.jpでの通常販売価格3万9999円のものが、なんとセール特価4999円で販売されたのです。参考価格からの割引額は4万8000円で約91%オフという、年に1度のサイバーマンデーとはいえ、あまりの値引き率の高さにネット界隈は騒然となりました。

 

しかし、よくよく見てみるとメーカー名は「TYdson」という聞きなれない名前。モデル名の欄には機能やスペックなどがズラズラ並んでよくわからず、しかも「令和元年 進化版」という怪しい文言も。

 

そもそも、完全ワイヤレスイヤホンの市場はハイエンドからエントリーまで大きくわけて3段階くらいあり、トップのソニー「WF-1000XM3」やアップル「AirPods Pro」で3万円前後、その下のミドルクラスのものが1万5000円~2万円くらい、エントリークラスのもので8000円~1万円弱という感じですが、このよくわからないイヤホンは参考価格5万2999円とぶっちぎりで高い。ソニーやアップルのフラッグシップよりも2万円以上高いのですから、かなりのものです。

 

そんな高級イヤホンが5000円以下で買えるのですから、本来ならめちゃくちゃお買い得なはずですが、どことなく怪しさが漂っており、それでネット界隈がザワついていたのです。

 

怪しいけどちょっと気になる……と思いつつ仕事に戻り、夕方ごろに再度チェックしてみると、なんと商品そのものがAmazon.co.jp上から消えてしまっていました。いくら検索しても先ほどまで見ていた激安イヤホンは表示されません。さすがに怪しすぎるということで、消費者から連絡があり消されてしまったのでしょうか。

 

Amazonで評価数の多い激安イヤホンを買ってみる

ここ数年、Amazon.co.jpで家電製品などをチェックしてみると、聞いたことのないメーカーの格安商品が並んでいることが増えました。しかも、画像やスペックを見る限りまったく同じものが、異なるメーカー名で販売されていることもあります。

 

これらに特徴するのは、説明文の日本語が少し変なのと、やたら評価数が多く、しかも平均が高いことです。おそらく海外の販売者が登録した商品なのでしょう。

 

筆者は、GetNavi web編集部でオーディオジャンルを担当している立場上、友人知人といった周囲の人から、「Amazonで売っている激安の家電ってどうなの? 買ってもいいの?」と聞かれることがよくあります。しかし、一般的なメーカー製品なら試す機会はありますが、Amazon.co.jpなどで格安で販売されているものはメーカーもよくわからず、なんとも言えないというのが本音です。

 

しかし、先述の騒動をきっかけに、「モノ情報を扱う編集部にいる以上、『よくわからない』とスルーしていてはいけない」と思い立ち、この未知のメーカーのものを買ってみようと決意したのでした。

 

先ほどの91%オフのワイヤレスイヤホンはすでに消えてしまったため、聞いたことがないメーカーで評価数が多いもの、という基準でアイテムを絞ってみると、「tuayoo」というメーカー名の商品が評価数559で最も多かったため、こちらを購入することに。価格は3960円ですが、サイバーマンデー期間中は20%オフとなり、3168円で購入することができました。一般的なメーカーのものだと、エントリークラスのものでも7000~8000円はすることを考えると、実質3000円程度という価格は驚異の安さです。

 

しかも、559も評価数がありながら、平均は5段階中の4.9とほぼパーフェクト。これは信頼すべきか、怪しいととるべきか……。

「わりと聴ける音」。接続安定性も健闘

さっそく届いた商品をチェックしてみると、パッケージがとにかくシンプル。「Smart headset」という文字以外は一切の情報がありません。

↑届いた製品のパッケージ

 

開けてみると、コンパクトなケースにワイヤレスイヤホンが収まっています。ケース、イヤホンとも、プラスチックの質感がチープな印象ですが、実際安いのですから文句は言えません。

↑プラスチックな質感がややチープな印象

 

肝心のイヤホンは、意外といっては失礼ですが、ちゃんとした形状で装着感も悪くありません。耳への収まりもよく、悪目立ちしません。

↑やや厚みがあるもののコンパクトなサイズ感

 

↑耳にもしっかり収まる

 

↑正面から見ても、イヤホンが飛び出さず目立たない

 

購入時の説明によれば、Bluetooth 5.0に対応しており、AACコーデックもサポートしているとのことだったので、手持ちのiPhone 11にワイヤレス接続して音質を確かめてみました。

 

音質は、低音が強めにチューニングされており、全体的にボワついた印象です。高域がもっと伸びてほしいとか、音源によっては低音が強調されすぎるとか、細かいところに不満は感じますが、全体的には「わりと聴ける」と思いました。オーディオにそれほどこだわりがない方なら、十分満足できるレベルではないでしょうか。3000円台の完全ワイヤレスイヤホンとはいえ、なかなか侮れない音だと思います。

 

続いて、音質に並んで大事な要素である、スマホ接続時の接続安定性をチェックしてみました。最初期の完全ワイヤレスイヤホンは、音が途切れたりノイズが乗ったりしやすく、電波が飛び交う場所ではほとんど使いものにならないケースもありました。いくら安くても、接続が安定していなければ使えません。

 

そこでイヤホンを着けて山手線に乗り、個人的にもっとも電波環境が悪いと感じているJR新宿駅のホームや構内、改札付近を歩いてみました。スマホはズボンのお尻側のポケットに入れた状態でテストしています。

 

その結果、人通りの多い改札付近やホームなどではブチっとノイズが乗ることもありましたが、日常使うには問題ない程度。国内メーカーのエントリークラスのものと比べても、特段劣るということはありませんでした。

 

完全ワイヤレスイヤホンのハイエンドモデルのなかには、接続性を安定させるために左右のイヤホンを個別に接続したり、左右のイヤホン間の接続にNFMI(近距離磁気誘導)という技術使ったりしているものがあり、そういった機種は非常にワイヤレス接続が安定しますが、今回のものにはそこまでの安定性はありません。どうしても音切れやノイズが気になるという方は、そのようなハイエンドモデルを選択した方がよいでしょう。

 

バッテリー残量表示は便利。安全性にやや不安

イヤホンにはタッチパネルを備えており、ワンタッチで再生/一時停止、ダブルタッチで曲送り/曲戻し、長押しで音量アップ/ダウンといった操作が行えます。イヤホン単体での再生時間は約6時間、ケースを含めた使用可能時間は明記されていませんが、イヤホンのバッテリー容量が片耳60mAh、ケースのバッテリー残量が1000mAhなので、多少のロスを考えても5~6回程度はフル充電できると考えられます。

 

特筆すべきは、充電ケースにイヤホンとケースのバッテリー残量を示すLEDディスプレイ表示機能があること。あとどれくらい使えるのか判別しやすく、非常に便利です。国内メーカーのものではあまり見かけない仕様ですが、あると便利なのでぜひ真似してほしいところ。

↑ケースおよびイヤホンのバッテリー残量を表示してくれる

 

最近の機種では標準装備になりつつある急速充電機能は備えておらず、ケース、イヤホンともフルに充電されるまでに約1時間から1時間20分ほどかかりました。うっかり充電を忘れてしまうと結構ツライです。

↑同梱品は充電ケーブル(USB Type-C)と3サイズの交換用イヤーピースのみ

 

2週間ほど使ったなかで大きな不満を感じることはなかったのですが、1点気になったのは、充電ケーブルを挿して充電していると、ケースおよびイヤホンがかなり熱をもってしまうこと。バッテリーの性質上、充電中はどうしても多少の熱を持ってしまうものですが、ここまで熱くなる機種はいままで出会ったことがありません。安全性という意味では、少し不安が残ります。

 

結論:こだわらないなら「十分使える」

ざっとレビューをお届けしましたが、音質や装着感、接続安定性といった基本性能は、この価格にしては悪くなく、そこまでこだわらない方なら十分使えるレベルだと思います。急速充電機能を備えておらず、運動時に装着感を高めるイヤーフィンなども付属しない、全体的な質感がチープなど、ミドル~ハイエンドクラスと比べると物足りない面もありますが、エントリーモデルとして考えるなら値段の割には健闘しているといえるでしょう。初めて完全ワイヤレスイヤホンを使うという方や、そこまで予算をかけられないという方にオススメです。

 

しかし、約3000円という価格でここまでのクオリティが実現できるということは、ここ数年のトレンドアイテムだった完全ワイヤレスイヤホンもコモディティ化が進んでいるということでしょう。2020年は、何らかの差別化要素がないと低価格品との競争が厳しくなりそうです。

 

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