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2020/4/12 18:00

同じ画素数のセンサー&映像エンジンをもつ一眼レフとミラーレス、何が違う? キヤノン「EOS 90D」と「EOS M6 Mark II」比較レビュー

2019年秋に登場したキヤノンの一眼レフカメラ「EOS 90D」と、同じくEOSシリーズのミラーレスカメラ「EOS M6 Mark II」。この2機種は、ともに有効約3250万画素のAPS-Cサイズセンサーを搭載し、映像エンジンに「DIGIC 8」を採用するなど、仕様的に非常に近いものとなっている。本稿では、これら2機種はどういった特徴を持っていて、何が違い、どのようなユーザーに向いているのかといった点について、実写も含めつつ解説する。

↑一眼レフとミラーレスカメラという構造の違いや外観の違いはあるが、センサーや映像エンジンなどに共通点が多く、兄弟機とも思える2機種。その使い勝手などの違いに注目したい

 

全方位で完成度を高めた一眼レフカメラ「EOS 90D」

↑EOS 90D。プリズムを用いた優秀な光学式ファインダーの搭載は、エントリーモデルの一眼レフとの大きな違い。高速連写や高感度など、基本性能の高さも魅力だ。参考価格/15万3880円(ボディ)、21万7250円(18-135mmレンズキット)

 

スペック的には似た部分の多いEOS 90DとM6 Mark IIだが、見た目のデザインはもちろん、一眼レフとミラーレスカメラという大きな違いがあり、それぞれの系譜の役割や立ち位置の違いなどから、クラス感や方向性に違いが見られる。

 

まず、2019年9月に先行して発売されたEOS 90Dは、2016年に発売された「EOS 80D」の後継機種で同社の中級モデルといえる。ただ、スペック上は上位モデルである「EOS 7D Mark II」(2014年発売)を超える仕様となっている部分も多く、一説にはこの2機種を引き継ぐモデルともいわれている。そのため、APS-Cサイズ一眼レフにこだわるユーザーからの注目度が高いモデルだ。

 

特に連写性能は光学式ファインダー使用時に最高約10コマ/秒(ライブビュー撮影時は約11コマ/秒)を実現。EOS 80Dで達成されていた視野率約100%のファインダーと合わせて、上位機種のEOS 7D Mark IIと肩を並べるまでになった。さらに、常用感度が最高ISO25600にアップ(80Dと7D Mark IIは最高ISO16000)した点は動きモノや室内などでの撮影の幅を広げてくれるはずだ。ちなみに、光学式ファインダー使用時のAF測距点は、オールクロスタイプの最大45点でEOS 80D同等となる。

↑背面には、ジョイスティック的な操作が可能な2つのマルチコントローラーとサブ電子ダイヤルを装備。上面のメイン電子ダイヤルと合わせて、計4つのコントローラー&ダイヤルでAF測距点の選択や露出調整などが素早く行える

 

↑ボディ上面の右手側には、撮影情報が液晶表示される。カメラの状態を確認でき、設定変更も素早く行える

 

↑従来はハイエンド系モデルにしか搭載されていなかった視野率約100%の光学式ファインダーをEOS 80Dから引き続き採用。クリアで明るく視野も十分に広い。AF測距点は45点で複数の測距点をまとめて使えるエリア選択なども可能

 

↑日暮れどきに飛び立つ飛行機を撮影。光学式ファインダーを使用することで機体を容易に追いかけながら撮れた。AFも機能し、ISO感度12800に設定することでブレないシャッター速度を確保することができた

 

↑EOS 90Dは大型のバッテリーパック「LP-E6N」を採用。光学式ファインダー使用時には約1860枚、背面モニターを使ってのライブビュー撮影時には約510枚の撮影が可能となっている。一方、ミラーレスカメラであるEOS M6 Mark IIの撮影枚数は約305枚。撮影枚数に関しては、光学式ファインダーを持つEOS 90Dが圧倒的に有利だ

 

EOS 90Dは、背面モニターを使用したライブビュー撮影が可能で、その場合には最大5481ポジションでのAF測距点選択ができ、画面の80%を超える範囲でのAFが可能となっている。瞳AFも機能するので、記念写真やポートレート撮影などは、ライブビュー撮影のほうが向くケースも少なくないだろう(顔認識は光学式ファインダー使用時も機能する)。

 

背面モニターはバリアングル式で、タッチ操作も可能なので、ミラーレスカメラに近い感覚での撮影が楽しめる。連写速度もファインダー撮影時の最大約10コマ/秒に対して最大約11コマ/秒で撮れ、光学式ファインダーが得意とする、高速移動する被写体以外では、ライブビュー撮影のほうが有利とも思える仕様だ。

↑タッチ操作にも対応する背面モニター。バリアングル式でタテ位置、ヨコ位置ともに撮影しやすい。ハイアングル、ローアングルも自在で動画撮影時にも活躍する

 

↑花よりも低い位置からカメラを構え、周囲の花や葉を入れて撮影。こうしたときは、バリアングルモニターを使ってのライブビュー撮影が便利だ。画面の80%以上の範囲でAFが機能し、この写真のように画面の四隅に近い位置でのピント合わせも容易だ

 

動画に関しては、両モデルとも「4K/30p動画撮影機能」も搭載。自動露出のほかに「動画マニュアル露出モード」を備え、動画でも明るさなどのコントロールを自在に行える本格的なものだ。また、動画からの静止画の切り出しもボディ内で行える。加えて、EOS 90DにはEOS M6 Mark IIでは非採用のマイク端子が装備されている。

↑EOS 90D側面の端子類。EOS 90Dにはマイク端子に加え、イヤホン端子も装備され、動画撮影時に録音状態を確認しながら撮影できる。EOS M6 Mark IIには、イヤホン端子は装備されていない

 

コンパクトボディに先進機能を凝縮した「EOS M6 Mark II」

↑約119.6×70.0×49.2mmと小型で約408g(バッテリー、メモリーカード含む)と軽量なEOS M6 Mark II。専用のEF-Mレンズも小型でボディとのバランスに優れる。参考価格/12万6500円(ボディ)、16万7750円(ダブルズームキット)、18万4250円(ダブルズームEVFキット)

 

では一方のEOS M6 Mark IIはというと、その名のとおり2017年に発売された「EOS M6」の後継機種でエントリーモデルという位置付けだ。ただし、前述のとおりスペック上はEOS 90D同等といえる部分も多く、一部スペックではEOS 90Dを超えている。

 

ミラーレスカメラなので光学式ファインダーは搭載せず、EVFも着脱式となっているので、従来の多くのコンパクトカメラのように背面モニターを見ながら撮影するスタイルが基本となる。最大5481ポジションでのAF測距点選択や顔認識や瞳AFが可能など、ライブビュー撮影時のEOS 90Dとほぼ同じ性能を持つ。連写に関しては、約14コマ/秒の高速連写が可能で、この点などはEOS 90Dを超えている。

↑ボディ上面の右手側に撮影モードダイヤルのほか、メイン電子ダイヤルやサブ電子ダイヤル、ダイヤルファンクションボタンなどを装備。露出関連のダイヤルなどが集中配置され、小型ボディながら、迷わず操作できるように配慮されている

 

↑EOS M6 Mark IIのホットシューに装着したEVF「EVF-DC2」(別売)。236万ドットで比較的高精細だ。円筒形のデザインがユニーク

 

↑EVFの視野。十分に広く高精細で表示のタイムラグも比較的少ない印象

 

↑よほど速い被写体や、かなり暗い中で被写体を追いかけるのでなければ、EVFや背面モニターでも十分撮影できる。カピバラは、緩急のついた動きをするので動きの予測を立てにくいが、走り回っている状況でも追いかけて撮影できた

 

さらにEOS M6 Mark IIでは、シャッターを切る直前の瞬間も含めて連続的に記録できる「RAWバーストモード」も搭載。この機能を使えば、電子シャッターを用いて最大約30コマ/秒で記録できるほか、シャッターを押す0.5秒前からの記録も可能。最大約80コマまで撮影でき、撮影後に撮りたかった瞬間を切り出すことができるというモードだ。記録画素数は約1800万画素となるが、例えば、鳥が飛び立つ一瞬を狙いたい場合などに有効だろう。

↑「RAWバースト」の設定画面。「RAWバーストモード」を[する]、「プリ撮影」を[する]に設定することでシャッターを押す0.5秒前からの画像が記録される。RAWバーストモードでは、画像の縦横の約75%分がクロップされる

 

撮影スタイルと撮りたい被写体を考えて選択しよう

こうしてスペックを中心にチェックしてみると、どちらを購入するべきか悩むユーザーも少なくないだろう。その際は、以下のポイントを確認してみよう。

(1)日常的に持ち歩くか
(2)高速移動する被写体を撮る頻度が高いか
(3)同社の一眼レフ用レンズを持っているか

まず(1)に該当する場合は、持ち歩きやすい大きさと軽さで、バッグに入れてもかさばりにくい形状のEOS M6 Mark IIがおすすめ。EOS 90Dも中級一眼レフとしては十分軽量だが、300g近くの重量差があり、日常的に持ち歩くことを考えるとこの数字は小さくはない違いといえる。一方で、EOS 90Dには操作のしやすさや防塵防滴仕様といった優位点もある。

↑メモリーカード、バッテリーとボディの重さを実測。EOS 90D(上)が698gであるのに対し、EOS M6 Mark IIは403g。90Dも中級一眼レフとしては十分軽量なのだが、約295gの差があるので持ち歩きにはM6 MarkⅡが圧倒的に有利だ

 

(2)に該当する場合は、EVFや背面モニターだとわずかながら表示タイムラグがあり、光学式ファインダーのほうが被写体を追いやすいので、一眼レフのEOS 90Dがおすすめだ。また、EOS 90Dは最高1/8000秒の機械式シャッターを装備しているので、高速シャッターで被写体を止めて写す場合にも向き、歪みなく撮れる(EOS M6 Mark IIの機械式シャッターは1/4000秒まで)。

 

ただし、連写速度はEOS M6 Mark IIのほうが速く、前述のRAWバーストモードの存在もあるので、被写体や撮影スタイルによってはEOS M6 Mark IIのほうが使いやすい場合もあるかもしれない。例えば、いつ飛び立つのかわからない野鳥の撮影などでは、シャッターを押す前の画像を記録できるRAWバーストモードのプリ撮影機能が役立つだろう。

↑EOS 90Dの1/8000秒シャッターを使って水の流れを止めて写した。こうした、目にも止まらぬ動きを正確に写せるのは、機械式超高速シャッターの魅力の1つ

 


↑EOS M6 Mark IIで撮影。動きが予測できる被写体であれば、高速で動く被写体であってもEVFや背面モニターで十分撮影できる。特にEOS M6 Mark IIは、最大約14コマ/秒の高速連写が可能なので、被写体を上手く捉えることができれば、撮影は行いやすい

 

(3)に該当する場合、アダプターを使えばEOS M6 Mark IIに一眼レフ用レンズを装着することも可能だが、重量バランスなどを考慮するとEOS 90Dに装着したほうが使いやすい。すでにEFマウント用レンズを多く持っていて、その資産を生かしたいのならEOS 90Dがおすすめだ。

↑高感度撮影については、EOS 90D、EOS M6 Mark IIともに常用ISO25600まで

 

両機とも従来の中級機を凌ぐ性能を持っているので、どちらを選んでも損はない優秀なカメラだ。ただし、少し気になるのはレンズのラインナップ。一眼レフ用のEFレンズは、30年以上の伝統を持っており、種類がかなり豊富なのに対して、APS-Cサイズミラーレス用のEF-Mレンズは7本のみ。広角11mm(17.6mm相当)から望遠200mm(320mm相当)までをカバーしているので、ほとんどの撮影で不自由することはないが、高性能レンズや超望遠レンズを使いたい場合などは、アダプターを介して一眼レフ用レンズを使用する必要がある。そうした点からも、撮りたい被写体が何なのかを十分考慮して選びたい。