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イヤホン
2022/7/28 10:30

軽量で耳をふさがないワイヤレスイヤホン「LinkBuds」大ヒットの秘密

早いもので、2022年ももう折り返し!!ここでは、上半期に売れたモノ・話題になったコトを大きく「家電・デジタル」「レジャー・乗り物」「日用品」「フード」「エンタメ」にカテゴリ分けして総ざらいしていこう。……さて、アナタは全部ご存知ですか!?

※こちらは「GetNavi」 2022年8月号に掲載された記事を再編集したものです。

LinkBuds

 

軽量で着けていることを忘れる耳をふさがないワイヤレスイヤホン

「ドライバーに穴の空いたイヤホン」という、他に類を見ないコンセプトの「LinkBuds」が売れている。装着したままでも周囲の音を聞くために「耳穴をふさがない」という斬新な解決法をとったLinkBudsとはどんな製品なのか。開発者にインタビューした。

 

ソニー

LinkBuds

実売価格2万810円

ドライバーの中央に穴が空いており、耳穴をふさがず装着できる完全ワイヤレスイヤホン。周囲の騒音に合わせて自動的に音量を調整する機能を搭載する。マイクを内蔵し、通話や音声アシスタント機能も使用できる。

SPEC●型式:開放ダイナミック型●ドライバー径:φ12mm●対応コーデック:SBC、AAC●伝送帯域:20Hz~20kHz●連続再生時間:最大5.5時間●防滴性能:IPX4相当●質量:約4.1g(片耳)

 

↑耳穴の周囲と軟骨部で支えることで装着感が安定。本体だけでなく周囲の皮膚をタップすることでも再生やスキップなどの操作できる

 

外音が自然に聞こえつつ音楽や通話は高音質

イヤホンのトレンド機能に「外音取り込み」がある。イヤホンを装着した状態でも、クルマのエンジン音や呼びかけなどに気付ける機能だ。LinkBudsは、そのための手法の一つとして「穴の空いたリング型」を採用している。

実際に装着してみると、周囲の音が“裸耳”のようにクリアに聞こえる。耳穴がふさがれていないため、長時間装着しても耳の中が蒸れるということはない。この特徴により、一日中耳に着けっぱなしにしておいて音楽を聴きたいときは再生し、そのまま外出して人と会話したり買い物したりする、という使い方ができるのだ。

人と話したり鳥の鳴き声を聞いたりといった「リアル」と、音楽配信やゲームという「オンライン」を、シームレスに繋げてくれる。それがLinkBudsの「リンク」が意味するところだ。

珍しいリング型の振動板ということで音質面が気になるところだが、実際に聴いてみるとその心配は杞憂だった。どっしり、と表現して良いくらい厚みのある音。通話においても、環境ノイズが分離されるので、自分の声をクリアに相手に届けることができる。

屋内でも屋外でも、まるでスピーカーのように「音楽」と「外の音」を両方クリアに聴ける。これは新しいリスニング体験だ。

 

【ヒットの裏付け】 若年層を中心に「ながら聴き」需要が急増

ソニーが実施したアンケートによると、音楽配信の利用動機として「ながら聴き」が高い割合を占めていた。「ながら聴き」では外音取り込み性能が重要であり、長時間使用するので快適な装着感も求められる。それらを両立したこともヒットの大きな要因だろう。

 

企画担当&設計担当者に直撃

“ながら聴き”で2つの世界をリンク

LinkBudsは「ながら聴き」需要を受けて開発された。そのきっかけや、外音取り込みのために「ドライバーに穴を空ける」という手法を選択した理由など、気になるポイントを聞いた。

 

この人に聞きました

ソニー株式会社モバイル商品設計部

鎌田 浄さん

ソニー株式会社にエンジニアとして入社。ウォークマンSシリーズ/Wシリーズの電気設計を経て、LinkBudsのプロジェクトリーダーを担当。

ソニー株式会社モバイル商品企画部

辻 万葉さん

ソニー株式会社に商品企画として入社。携わった主な製品はウォークマンAシリーズやノイズキャンセリングイヤホンWF-1000XM4など。

 

高音質と外音取り込みの両立に苦労した

──音楽再生中も「外音を聞きたい」という需要に気付いたきっかけを教えてください。

 

 スマホや音楽配信サービスの普及で、音楽を「真正面から集中して聴く」のではなく「何かをしながら音楽をかけっぱなしで聴く」という「ながら聴き」の需要が増えていることに気付きました。そのために、従来の「外音を遮断する」とは真逆である「音楽を聴きつつ外音も聞こえるようにする」というアプローチの製品を開発することにしました。

 

──マイクでの取り込みや骨伝導もあるなかで、なぜリング型に?

 

 より自然な外音を取り込むためです。リング型なら聞こえる外音は元の音そのものですから。

 

鎌田 骨伝導にしなかったのは高音質化のためでもありました。このサイズですが、ソニー製品らしい高音質を実現しています。

 

──リング型のドライバーというのはこれまでに類を見ない構造ですが、開発に苦労はありましたか?

 

鎌田 一般的に、音を出すための振動板は面積が広いほど音質的には有利。LinkBudsは元々コンパクトなのに穴でさらに面積が削られてしまいます。試作を繰り返して、穴の大きさと音質のバランスを取りました。振動板の構造やイコライジングにも、高音質化のための工夫を凝らしています。

 

──着け心地もかなり良いのですが、これは長時間装着を意識して追求したのでしょうか。

 

鎌田 そのとおりです。実際に多数の耳のサンプルを取り、なるべく多くの人の耳にフィットするよう研究を重ねました。本体のサイズやデザイン、フィッティングサポーターの形状を調整して、落ちにくさと快適性を両立しています。

 

 朝から夜まで着けっぱなしで生活することを想定している製品なので、バッテリー性能にもこだわり、連続待受時間は11時間と長めに確保しています。

 

──LinkBudsの今後の展開を教えてください。

 

 音楽配信サービスやARゲームなどを提供するパートナー企業と連携し、LinkBudsならではの新しい音体験を広げていく予定です。

 

↑充電ケース(上)とイヤホン(下)の構造。ソニーの完全ワイヤレス史上最小最軽量の筐体と高性能を両立させるため、ほとんどの部品をゼロから開発した

 

↑最大の特徴であるリング型ドライバーユニット。振動板の面積が制限される条件下で、音質と外音取り込みのバランスを追求した

 

↑本体を耳に固定するためのフィッティングサポーターが付属。XSからXLまで5種類が付属し、様々な大きさや形の耳に対応する

 

1日中つけっぱなしでもラクに過ごせる耳をふさがないイヤホンが続々!

 

【その1】 アクセサリーのようなデザインと装着感がユニーク

Ambie

サウンドイヤカフ AM-TW01

実売価格1万5000円

イヤーカフのように「耳輪」(耳の周辺部)の後部を挟んで装着し、耳穴をふさがないイヤホン。操作ボタンは専用アプリで機能を割り当てられる。通話も可能で、周囲の雑音を低減するCVC8.0に対応。

SPEC●対応コーデック:SBC、AAC、aptX、aptX Adaptive●防水性能:IPX5●連続再生時間:約6時間●サイズ/質量:W20.9×H27.9×D14.1mm/4.2g(片耳)

 

【その2】 頬骨を振動させる骨伝導方式で耳をふさがない

Shokz

OpenRun

実売価格1万7880円

スピーカー部を耳の付け根部分に密着させることで、頬骨を通して音を伝達させる「骨伝導方式」を採用する。ネックバンド部は装着感の高いチタニウム製。10分の急速充電で1.5時間の再生が可能だ。

SPEC●対応コーデック:SBC●防塵防水性能:IP67●充電時間:1.5時間●連続時間:8時間●再生周波数帯域:20Hz~20kHz●音圧感度:105±3dB●質量:26g