KENWOODブランドから発売された「KH-BIZ70T」は、ノイズキャンセリング機能などの最新機能を豊富に備えたTWS(完全ワイヤレス)イヤホン。2022年5月に発売されており、実売価格は税込1万6500円前後となっています。
これだけ聞くとよくあるワイヤレスイヤホンなのですが、本製品は「ビジネス」用途で使える機能がとにかくスゴい。ケンウッドブランドだから音ももちろん、スゴい。今回はこのKH-BIZ70Tの「お仕事能力」と「音質」について、GetNavi web編集部のオーディオ担当である一條が実際に使用してレビューします!
【本体概要】豊富な機能とこだわりの設計
ケンウッドのKH-BIZ70Tは、ビジネスシーンを意識した製品となっており、コロナ禍以降に増えたオンライン会議やリモートワークで便利に使える機能が充実しているのが特徴。下記に代表的な機能を並べてみましたが、すべて書ききれないほどたくさんの機能を備えています。
【KH-BIZ70Tに搭載されている機能】(一部を抜粋)
・音楽や仕事に集中できるアクティブ・ノイズキャンセリング機能
・Bluetoothのマルチポイント接続に対応。2台の機器に同時接続が可能
・2つの高性能MEMSマイク+ノイズリダクション処理でクリアな通話
・動画視聴に最適な低遅延モードを搭載
・IPX4相当の生活防水対応
・左右どちらでも片耳使用が可能
KH-BIZ70Tは左右のイヤホンと充電ケースがセットになっており、充電ケーブルや3サイズのイヤーピースが同梱されています(Mサイズは最初からイヤホンに装着)。
イヤホン本体は片耳4.6gと小型軽量で、遮音性を高めるため、ノズルが長めのカナル型デザインを採用しているのが特徴です。イヤホン部分にはプッシュ式ボタンとタッチセンサーが備わっており、すべての操作を耳元で行うことができます。
このプッシュ式ボタンとタッチセンサーはそれぞれ別の操作が割り振られており、慣れると非常に快適に操作できるようになります。特に、プッシュ式ボタンには「クイックアンビエント機能」(外音取り込み)や「マイクミュート機能」がワンプッシュで使えるように割り振られているので、電車のなかでアナウンスを聴きたいときや会議でマイクをオフにしたいときなど、とっさに使えて便利。
【音楽再生時】
【通話時】
イヤホンの背面部分や充電ケースの上蓋には、ある世代以上の人ならグッとくること間違いなしのケンウッドのブランドロゴがプリントされています。おそらくビジネスシーンで使うことも考慮して控えめにあしらっているのでしょうが、個人的にはこのかっこいいロゴがもっと目立つようにデザインにしてもいいかなと感じました。
また、充電ケースの底面にはすべり止めが付いているので、デスクなどに置いたとき、不意に落下するのを防いでくれます。新幹線の座席に備わっている可動式テーブルなど、せまい場所に置くときも安心ですね。
なお、連続使用時間はイヤホン単体で7/9時間(ノイキャンON/OFF時)で、充電ケース併用で最大16/21時間(同)となっています。イヤホンは左右どちらも片耳だけ使うこともできるので、右を使ってバッテリーが切れそうになったら左に変える、というように使えばほぼ1日中利用することもできちゃいます。
【音質】オーディオブランドならではの豊かなサウンドに感動
続いてチェックしたいのは音質。ビジネス向けに特化したワイヤレスイヤホンは、通話時の音声品質を優先するあまり、音楽再生時の音質がおざなりになっているモデルも多いのですが、老舗オーディオブランドのケンウッドが作るイヤホンが、音質を大事にしないはずがありません。
筆者はオーディオ担当という仕事柄、これまでたくさんの完全ワイヤレスイヤホンを使ってきましたが、初めてKH-BIZ70Tで音楽を聴いたとき、思わず「お!」と声が出てしまいました。中高域が伸びやかで音に透明感があり、キリッとした辛口のお酒のような清涼感のあるサウンドです。低域もしっかり感じられますが、いわゆる“ドンシャリ”のような刺激的なサウンドではなく、あくまで調和の取れた品のよい仕上がり。全体的にメリハリがあって、「久しぶりに音楽を楽しく聴けるイヤホンに出会った!」というのが第一印象でした。
特筆すべきはボーカルの存在感で、特に女性ボーカルが絶品! クリアなのに高音が刺さらず、繊細な声のニュアンスをキチンと表現してくれます。この清涼感のある爽やかサウンドは、なかなか他社のモデルにはない個性だと思います。
なぜこんな楽しい音のイヤホンを作ることができたのか、KH-BIZ70Tの開発秘話をお聞きすべく、JVCケンウッドで商品企画を担当した大西崇文さんにいくつか質問をしてみました。
【開発背景】ケンウッドの「原音再生」思想を音作りに反映
――今回「KH-BIZ70T」を使ってみて、まず驚いたのは“音がイイ!”というところでした。やはりケンウッドブランドということで、音作りにはこだわったのでしょうか?
大西さん:ケンウッドは元々、高級オーディオに引けをとらない音を鳴らす単品コンポを作ってきたブランドで、音の味付けをせず音源に記録された音をそのまま再生する「原音再生」をモットーとしています。その思想も踏まえて、KH-BIZ70Tの企画当初から「どの帯域も強調しすぎないバランスの取れたサウンド」を目指して開発を進めました。
バランスの取れたサウンドとひと口で言っても、どの帯域も均一に鳴らすのではなく、低音はアタック感が感じられ、中高域は明瞭で音の輪郭がわかるようにチューニングしています。目の前のステージからボーカルや演奏の音が一列に並んで聴こえるような、存在感のある音をイメージしています。
――個人的には、人の声が一歩前に出てくるような鳴り方で、J-POPやアニソン、アイドルソングなどのボーカル曲がとても楽しく聴ける印象を受けました。
大西さん:音のチューニングはボーカル曲を中心に行ったので、そういう印象を持っていただけたのかもしれません。声が演奏に埋もれず、かといって前に出すぎないように、何度もチューニングを重ねているんですよ。
――もうひとつ、おっ!と思ったのはKH-BIZ70Tのイヤホンが、最近の完全ワイヤレスイヤホンのなかではかなりノズルが長い形状であるということ。近年のトレンドとして、イヤホンのノズルが短く、パッと耳穴に乗せるスタイルのものが増えていますが、あえてノズルを長くしたのは何か理由があるのでしょうか?
大西さん:理由は2つありまして、ノズルが長い形状の方が耳穴にしっかり挿入でき、密閉感を高めて物理的な遮音性を得やすいということ。また、イヤホン内に空間を作ることで音質的にもメリットがあるということです。
大西さん:KH-BIZ70Tは、周囲の騒音と逆位相の音を鳴らして消音するアクティブ・ノイズキャンセリング機能を備えていますが、それに加え物理的な遮音性(パッシブ・ノイズキャンセリング)を高めることで、より強力なノイズキャンセリング性能を実現しています。開発時にも、防音室で複数パターンのノイズを鳴らして試験を行っていますので、ノイキャン性能には満足して頂けると思います。
パッシブの遮音性を高めるためにはイヤホンをしっかり装着してもらうことが重要です。より良い音質で楽しんでいただきたいので、ぜひ付属のイヤーピースを付け替えながらご自分の耳に合ったサイズを試していただきたいですね。
――もうひとつ気になったのは、「ノーマル」「クリア」「ベース」の3つのサウンドモードを備えていることですが、こちらの違いを教えてください。
大西さん:ベースは低音がモリモリ出るというわけではなく、より楽器のベースラインを感じたいときに使っていただきたいモードです。一方、クリアは自然で明瞭な声になるよう、特に女性ボーカルの曲を聴くときのイメージでチューニングしました。聴く音楽のジャンルや好みに応じて使い分けていただければと思いますが、私自身は常にベースモードで使っています。なお、サウンドモードは音楽再生時に適用されるもので、通話時には自動で通話に適した設定に変更されます。
大西さんのお話から感じたことは「オーディオブランドならではのこだわりが製品開発にしっかり反映されている」ということでした。ここまで音質にこだわっているイヤホンはそうそう無いはず。ワイヤレスイヤホンに音質なんて求めていない、という人にもぜひ使ってみてほしいと思います。
【使用シーン】コスパならぬタイパのよい“お仕事イヤホン”
KH-BIZ70Tは、製品名からも分かるようにビジネスシーンでの使用も考えられたモデルです。イヤホンに内蔵された2つの高性能MEMSマイクが話者の声を的確に拾い、ノイズリダクション機能で周囲の雑音を抑えてクリアな音声で通話やオンライン会議が行えます。
もちろん、アクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載しているので、オフィスや外出先でも周囲の音を気にすることなく会話に集中できます。
しかし、仕事で使っているうちに一番便利に感じたのは、「とにかく何をやるにも工数が少なくすばやく行える」ということ。最近は、コストパフォーマンスならぬタイムパフォーマンス(かけた時間に対する効果)、通称「タイパ」がビジネスパーソンのあいだで認識されてきていますが、KH-BIZ70Tはこのタイパが非常に優れたツールなのです。
オンライン会議中は、自分の発言時以外にはマイクをオフにしている人が多いでしょう。通常ならばPCの画面上に表示されるマイクボタンをオン/オフする必要がありますが、頻繁に切り替えているとだんだん操作が面倒になってきます。
そんなとき、KH-BIZ70Tを使っていれば、耳元のプッシュ式ボタンを1回押すだけでマイクをオフにする「マイクミュート機能」が便利。オン/オフは音声でアナウンスしてくれるので、ボタンを押してオンになったのかオフになったのか確認することもできます。わざわざマウスやタッチパッドを操作して画面上でマイクオフにせずとも、イヤホンのボタンをワンプッシュするだけでOKというのはタイパがいいと思いませんか?
さらに便利なのが、2台の機器と同時にBluetooth接続できる「マルチポイント機能」です。これは、PCやスマホなど同時に2台までの機器とワイヤレス接続でき、シームレスに接続先を切り替えられるというもの。例えば、PCでオンライン会議中にスマホに電話がかかってきたとき、イヤホンをワンタッチすれば自動でイヤホンがスマホにつながり、そのまま通話することができます。通話が終わって電話を切れば、また自動でPCの音声につないでくれます。
これと同じことをマルチポイント非対応のイヤホンでやろうとすると、とんでもなく手間がかかってしまいます。試しに、マルチポイントを利用した場合と、マルチポイントを利用せず個別にペアリングした場合で、PC→スマホと音声の接続先を切り替えてみると、マルチポイント有りの場合はわずか1秒。ほとんどシームレスにPCからスマホに接続を切り替えられます。一方、マルチポイント無しの場合は、いったんPC側でBluetooth接続を切ってスマホとペアリングしてるあいだに25秒もかかってしまいました。マルチポイント機能を備えたKH-BIZ70Tが、いかに時間を節約してすばやく仕事をこなせるかお分かり頂けるのではないでしょうか。
ほかにも、KH-BIZ70Tは専用アプリを使う必要がなく、ノイキャンのON/OFFやサウンドモードの変更、動画再生にピッタリな低遅延モードの切り替えなど、多彩な機能もすべて耳元の操作だけで行えてしまいます。いちいちスマホを取り出す必要がないのもタイパ的に優れていますね。
オーディオブランドならではの音質へのこだわり、ビジネスツールとして効率的に使える“タイパ”のよさ、そして最新機能全部入りとも言える多彩な機能の数々は、仕事もプライベートも充実させたい人に最適な完全ワイヤレスイヤホンといえます。音質や機能性が気になった方は、ぜひ店頭で試してみてください。
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