2011年の地上アナログ放送終了の頃に、リビングルームのテレビを買い換えた方は、いま再びテレビの買い換え時を迎えているはずです。10年の間にテレビはより薄くなり、高画質な4K対応の大画面モデルが主流を占めています。
でも相変わらず、サウンドには物足りなさを感じるテレビも少なくありません。
そんな中で、大画面テレビのサウンドをスマートに補強できる、スリムなサウンドバーが人気なのをご存知でしょうか。今回はボーズが新しく発売した、ドルビーアトモス再生にも対応するコンパクトモデル「Bose Smart Soundbar 600」(以下:Soundbar 600)を試してみました。ドルビーアトモス対応のテレビ、コンテンツプレーヤーと上手に組み合わせて使う方法を紹介しつつ、製品の実力をレポートしていきます。
安価ながら迫力ある音が楽しめて、設置性にも優れる
Soundbar 600はボーズの中でスタンダードモデルに位置付けられるサウンドバーです。ボーズのオンラインストアでの販売価格は7万4800円(税込)。上位モデルのBose Smart Soundbar 900よりも2万1000円ほど安価ながら、ボーズによる迫力あふれる最先端のホームシアターサウンドが楽しめます。
さらに、Soundbar 600はSoundbar 900に比べて、本体の横幅が約35cmも短いことから、設置性能に優れています。40インチ台の比較的コンパクトな4Kテレビとの組み合わせにもマッチするサイズ感です。
接続はBluetoothのほか、Wi-Fi経由でAirPlay 2によるワイヤレス音楽再生も楽しめます。iPhoneやiPadとの連携にも優れるサウンドバーとしてオススメです。
また、iPhone、Androidスマホに対応するモバイルアプリ「Bose Music」を使うと、サウンドバーのセットアップや操作がとても簡単。さらにアプリ内でAmazon Music、Spotify、Deezerのアカウントをリンクすると、アプリの中で音楽サービスから聴きたい曲を選べるほか、サウンドバーの音量調整やイコライザーを設定する操作もスムーズになります。
ドルビーアトモス再生以外も自然な立体感
Soundbar 600はコンパクトな本体に5基のスピーカーを内蔵。うち2基のスピーカーは天井に向け音を出すアップワードファイアリングスピーカーとして、高さ方向に豊かな音場の広がりをつくり出します。
すべて正面向きのスピーカーだけで、演算処理による高さ方向の音場を再現するサウンドバーもありますが、やはり“上向きスピーカー”を搭載するサウンドバーの方が、360度方向から包み込まれるような、リアルな体験に説得力が出ます。
当然、元がドルビーアトモス方式で記録されているコンテンツの音を、Soundbar 600はそのまま立体的に再現できます。一方で、ドルビーアトモスに対応していないステレオや、5.1chサラウンドなどのフォーマットでつくられたコンテンツの音声からも、自然に包み込むようなリスニング感を引き出します。
これには、Soundbar 600に搭載されたボーズの独自技術であるTrueSpaceテクノロジーによる、空間処理が効いています。高性能なデジタル信号処理を実行することにより、スピーカーを置いていない場所から音が聞こえてくるような没入体験をつくり出せるのです。
Soundbar 600を使うなら、知っておきたいHDMI eARC
上向きのスピーカーや独自のテクノロジーなどで、立体感のある音を楽しめるSoundbar 600ですが、ドルビーアトモス再生の実力を引き出すために、組み合わせる機器と接続方法については購入前に確認をしておきたいところ。ポイントは「eARC(エンハンスド・オーディオ・リターン・チャンネル)」です。
Soundbar 600に搭載されているHDMI端子はこのeARCに対応しています。この機能のメリットは、同じeARCに対応するテレビなどのディスプレイ機器と1本のHDMIケーブル(eARC対応のもの)で接続するだけで、ドルビーアトモスやロスレスの5.1ch/7.1chのサラウンド音声をありのままのクオリティで楽しめることです。
Soundbar 600の商品パッケージにはeARC対応のHDMIケーブルが同梱されているので、あとはeARC対応テレビを組み合わせたいところ。
テレビによって変わる、Soundbar 600の3つの活用
テレビがドルビーアトモス対応で、HDMI eARC接続ができ、なおかつインターネットに接続して動画配信サービスを利用可能であれば、Soundbar 600の楽しみ方は広がります。テレビとサウンドバーの組み合わせだけで、例えばNetflixやAmazonプライム・ビデオなど、動画配信サービスで続々と増えているドルビーアトモス対応コンテンツの立体音響を再現できるからです。
インターネットに接続できない場合は、テレビにUltra HDブルーレイディスクの再生に対応するプレーヤー機器や、Apple TV 4Kなどのストリーミングプレーヤーを接続すればOK。これでコンテンツのドルビーアトモス音声が楽しめます。
もし、お持ちのテレビがeARC対応のHDMI端子を備えていない場合、サウンドバーとの音声接続には光デジタルケーブルを使うことになります。その際、ボーズ独自のTrueSpaceテクノロジーにより、十分に豊かなサラウンド感を楽しむことはできます。
ただし、ピュアなドルビーアトモス再生にはなりません。ですので、本機を購入する前に自宅のテレビの仕様は確認しておくか、テレビの買い替え時に合わせてチェックしましょう。
映画やスポーツ番組を鑑賞。とことんリアルな没入体験
肝心のサウンドもチェックしてみましょう。Netflixのドルビーアトモス対応コンテンツでは、豊かな音の広がり感が味わえます。自然なのにメリハリは力強く、効果音の粒立ちがとても鮮明。低音はタイトで瞬発力が高く、だぶつく感じがありません。過度な強調感がなく、アクション系の映画やアニメの作品に収録されている重低音をどっしりと鳴らします。音場の見晴らしは雑味がなくとてもクリアなので、奥行き方面の音場がリアルに広がる様子が感じられました。
Soundbar 600単体でも十分ですが、Bose Musicアプリの「オーディオ」のメニュー内に、セリフなどが含まれる「センターチャンネル」、高さ方向の音成分を指す「ハイトチャンネル」、低音・高音のバランスをプラス・マイナス10段階で調整できるイコライザー機能があります。
このイコライザーのセンターチャンネルを微調整すると、かなり自然なバランスに整うのでおすすめです。筆者は夜間にサッカーの番組をSoundbar 600で観戦。イコライザーを使ってセンターチャンネルを抑えめにして、ほかの成分のバランスを持ち上げると、解説のないリアルなスタジアム観戦に近い雰囲気が味わえました。
注意したいのは、強い低音を出せるサウンドバーなので、音が床や壁に響いてしまうと音質が劣化するだけでなく、近所迷惑にもつながること。サウンドバーとテレビは頑丈な素材のラックに設置するなど、振動対策は入念に行いたいところです。
合計9基のスピーカーを内蔵する、上位のプレミアムモデルSoundbar 900と比べると、スピーカーの数こそ5基ではあるものの、上位モデルに引けを取らないサウンドバーでした。ドルビーアトモス再生のリアルな立体感と、高いディティール描写を実感させてくれます。また、コンパクトなテレビとマッチすると書きましたが、55インチ以上の大きな画面のテレビと合わせても、画面の迫力に負けない没入感あふれるサウンドを楽しめます。
この冬休みにホームシアターのサウンドを改善する計画を立てている方には、すぐに効果を実感できる「即戦力」。オススメのサウンドバーです。
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