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2017/1/2 19:00

カスタムイヤホンのトップランナー「アルティメット・イヤーズ」のキーマンが語る最新モデル「UE 18+ Pro」開発秘話

ポータブルBluetoothスピーカー「UE BOOM」や「UE ROLL」のシリーズが人気を集めている、アメリカのオーディオブランドUltimate Ears(アルティメット・イヤーズ、以下UE)は、実は高級カスタムイヤホンのブランドでもあることをご存知でしたか。この冬、そのUEの新しいフラグシップイヤホンである「UE 18+ Pro」が登場しました。

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“カスタムイヤホン”とは、ユーザーの耳型を採取して最適なフィットと遮音性を実現するオーダーメイドのイヤホンのことですが、日本限定の展開としてさらに「UE 18+ Pro」に通常のイヤーピースを装着して、耳型をつくらなくても誰でもすぐに楽しめる“ユニバーサルモデル”も発売されました。

 

今回は、新モデルのプロモーションのため米国から来日したMike Dias氏にブランドの歴史や、新製品に込めた熱い想いをお聞きしました。

 

アルティメット・イヤーズってどんなブランド?

UEではセールス・ディレクターを担当するDias氏。初めに、日本のUEファンへ感謝の気持ちを語ってくれました。

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↑Mike Dias氏

 

「日本にはずっと憧れを抱いていましたが、ようやく来日することができて嬉しいです。日本のイヤホンファンの方々は音へのこだわりがとても深く、ユニークな使いこなしをされる方がとても多いと感じています。私たちがイヤホンというものづくりを行う上で、日本のイヤホンファンからいただく声は何より大事で、励みにもなります」(Dias氏)

 

日本国内ではここ数年の間でカスタムイヤホンの人気がブレイクして、熱心なイヤホンファンを中心に定着しつつあります。「いつかは私も、カスタムイヤホンを使ってみたい!」という声の広がりを受けて、人気ブランドからは比較的リーズナブルな価格でも購入できる入門向けカスタムイヤホンも登場。熱い視線を浴びています。

 

カスタムイヤホンを扱うブランドの数もたくさん増える中で、「UEのブランドと製品の特長」はどんなところにあるのでしょうか?「その答えを知るために、UEの歴史を少しお話しさせて下さい」と、Dias氏はUEブランドの歩みを振り返りました。

 

UEはアメリカの音楽シーンと切っても切り離せない関係にあるブランドなのだと、Dias氏は強調しています。90年代に一世を風靡したハードロック・バンド「ヴァン・ヘイレン」の音響エンジニアを中心に、少数精鋭のスタッフが起ち上げたブランドがUltimate Earsでした。華やかなエンターテインメントの舞台で歌い、楽器を演奏するミュージシャンたちは、実はステージ上に渦巻く“爆音”を浴びながら日々パフォーマンスに全力を注いでいました。「才能豊かなアーティストたちの耳が難聴の危険に晒されている……」。危機感を感じたUEのエンジニアとヴァン・ヘイレンのスタッフたちは、当時まだ一般的ではなかったインイヤータイプのカスタムモニター(=カスタムイヤホン)を開発し、ステージ上で活用するようになりました。

 

「爆音から耳を守ることができて、しかも自分たちの演奏が正確にモニタリングできる!」。UEのカスタムイヤホンを装着したヴァン・ヘイレンの演奏はますます精度を上げ、活き活きとしたパフォーマンスがオーディエンスをいっそう惹きつけるようになりました。その高い効果が口コミで広がり、世界中の多くのミュージシャンがUEのカスタムイヤホンに注目するようになります。UEのホームページに公開されている、同社のカスタムイヤホンを愛用するミュージシャンのリストにはローリング・ストーンズ、メタリカ、コールドプレイにテイラー・スウィフトなどビッグネームがずらり! 一流のアーティストが信頼を寄せるブランドであることがわかります。

 

「なぜUEのカスタムイヤホンが、これほどまでにミュージシャンたちの信頼を得られるようになったのか、お話ししたいと思います。それは、多くのイヤホンよりもUEの製品はより広い音の帯域をカバーできるからです。音楽とは、ボーカルと楽器の音だけから成るものではありません。UEのイヤホンは、ステージに漂う空気感までも捉えることができます。リアルな“ライブ感”がイヤホンを通して感じられ、オーディオエンスと共有できることがステージでパフォーマンスを繰り広げるミュージシャンにとって何より大切なことです。この条件をUEのイヤホンはクリアしているのです」(Dias氏)

 

音楽が演奏された場所の空気や熱気、ミュージシャンの“想い”みたいなものまでが、UEのカスタムイヤホンを通じて伝わってくるということなんですね。私たちはふだん、アーティストの演奏をCDなどの媒体に録音した音源を聴いているわけですが、音楽プレーヤーやイヤホン・ヘッドホンを通して、音楽が演奏された瞬間をリアルに味わいたいという思いがきっと誰にでもあるのではないでしょうか。そんな理想的な音楽リスニングに限りなく近づくことができるからこそ、UEのカスタムイヤホンはミュージシャンにだけでなく、多くの音楽ファン、イヤホンファンにも一目を置かれているのです。

 

ブランド誕生から20年間のノウハウが詰まった「UE 18+Pro」

音楽がステージで生まれる瞬間を見つめながら、進化を遂げてきたUEのイヤホン。ブランドの創立から20年を超えて、培ってきたノウハウの全てが最新のフラグシップモデルであるカスタムイヤホン「UE 18+Pro」に惜しみなく注がれているのだとDias氏は語っています。

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↑Dias氏の「UE 18+Pro」カスタムモデル。収納缶のフタはネーム入り

 

「前のフラグシップモデルであるUE 18Proは、発売以来さまざまな賞をいただき、多くのイヤホンファンに愛用されています。一方で『もっと上質な体験をファンの方々に届けたい』という想いは、私たちの中にずっとありました。それを実現するための議論も煮詰めてきました。前モデルの発売から、UE 18+Proの誕生までに約7年の時間がかかりましたが、その間に3Dモデリング・3Dプリンティングの技術が進化したことがひとつの変化として挙げられます。その技術を活かして、イヤホンの外側のデザインだけでなく、内側の構造も改善できないかと考えました」(Dias氏)

 

「UE 18+Pro」は片耳に6つのBA型ドライバーを搭載するカスタムイヤホンです。高域・中域・中低域・低域に分かれた4クロスオーバー設計により、ワイドレンジで立体感あふれるサウンドを再現できるところは、UE 18 Proから受け継ぐ特徴としています。新機種ではさらに、6つのドライバーをハウジングの内部でひとつのユニットに束ねて音質を安定させる「サウンドエンジン」という手法が使われています。これにより最終製品の個体差による音のバラツキがなくなり、製造プロセスの効率化にもつながっているとDias氏が説明しています。

↑こちらはユニバーサルモデル。実際にはイヤーピースをつけて装着する
↑こちらはユニバーサルモデル。実際にはイヤーピースをつけて装着する

 

また6つのうち2つの高域用ドライバーユニットを改良した「トゥルー・トーン・ドライバー」により、UE 18 Proと比べて高音域の限界を3kHz高めて特性を磨きました。音の透明感が高まり、立体感の向上や余韻の伸びやかさが引き出せるとしています。「新しいドライバーを採用したことで、クロスオーバーネットワークのチューニングも1からやり直していますが、その高い空間再現と透明感、ディティールを引き出せるパフォーマンスなど出来映えにはUEの音響エンジニア一堂、自信を持っています」とDias氏は誇らしげに笑みを浮かべていました。

 

革新的で“意味のあるもの”をつくることがUEのポリシー

Dias氏が挙げた「UE 18 Proから変わった点」はともすれば地味なもののように聞こえますが、とても大きな技術革新に支えられたチューンアップが加えられていることは、そのサウンドを確認するとすぐにわかるのではないでしょうか。筆者も今回のインタビューの機会に、新製品のユニバーサルモデルを試聴することができました。とても解像感が高く、落ち着いたバランスの良いサウンドは縦横に広がる空間描写に限界を感じさせません。音楽が演奏された瞬間の鮮度を強調することなく、自然に身体の隅々まで届けるような色づけのなさもUEのイヤホンならではの魅力であると感じました。

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前機種の型名に「+」を付けるだけに止めることに違和感を感じるほど大きな変化を遂げたイヤホンですが、それにしてもなぜ新しいフラグシップモデルの開発に7年もの年月がかかったのでしょうか?この質問に対して、Dias氏は明確な答えを持っていました。

 

「確かにUEは新製品の開発に比較的長い時間をかけています。それは、毎回自信をもって開発したイヤホンを凌ぐ、革新的な製品をつくるためには相応の理由が必要だと考えるからです。UE 18 Proを発売して以後、UEではいくつかの新しい音響設計やチューニングの技術が7年間の間に誕生しました。いまこそ新しいフラグシップイヤホンをかたちにする最適なタイミングだと判断したからです。UE 18+ Proはまさに1から開発したイヤホンであると捉えていただいて良いと思います」。

 

マルチドライバー方式による音づくりは「アート」です

UE 18+ Proには合計6基ものBAドライバーが搭載されています。通常マルチドライバー方式を採用すると、それぞれのドライバーが担当する音域をクロスオーバーネットワークの設計によってバランスを合わせ込むのが難しくなると言われていますが、UEではどのように狙い通りのサウンドを導き出したのでしょうか。

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「マルチドライバーを組み合わせた音づくりは最も難しい部分ですが、私はこれを“アート”だと考えています。そこに小手先の技術だけで得られる“正答”はありません。最終的には経験豊かなエンジニアが感性を頼りに仕上げなければならない部分があります。一つひとつのドライバーだけでなく、イヤホンを構成する全てのパーツをどのように組み合わせるかという経験則も鍵になります。毎回、試作品が完成したら少し引いた目線に立って試聴を繰り返して、理想の音に少しずつ近づけていきます。焦らずに良い音へ辿り着くための道を探していく地道な作業です。ふと後ろを振り返ると『果たして正しい道を選んだのだろうか…』と迷うこともあります。イヤホンのチューニングとは『もっと良くできるのでは』という自問を繰り返す作業です。絵画を描くことに似ていて、その旅に終わりはありません。だからと言って誤解のないようにアピールしておきますが、もちろんUE 18+ Proはベストのサウンドに仕上げていますよ!(笑)」(Dias氏)

 

Dias氏をはじめ、UEの開発者はマルチドライバー方式のどんなところに魅力を感じて、新しいフラグシップイヤホンに採用したのか、その意図も訊ねてみました。

 

「キーワードは“チームワーク”です。例えばですが、2人で動かせない大きなテーブルも、6人であれば軽々と持ち上げられます。音は空気の振動により生まれるものですが、マルチドライバーによるスケール感によって、ダイナミックで解像感にも富む余裕のあるサウンドが再現できる場合があります。今回、UE 18+ Proでは6つのドライバーが最適解であると判断しました。最新設計のクロスオーバーは、例えるなら交差点で交通整理をしている警察官のようなものです。一つひとつのドライバーに与える仕事を的確に指揮して、ドライバーがパフォーマンスをフルに発揮できれば“いい音”が生まれます。いま市場には10基を超えるドライバーを搭載するイヤホンもありますが、ドライバーの数が多ければよいというものでもありません。これも例え話ですが、たくさんの人が集まって仕事をすると、誰かがサボってそれぞれの関係がぎくしゃくすることもありますよね。マルチドライバー方式による音づくりはとても奥が深いものなんです」(Dias氏)

 

ワイヤレスイヤホンなど、今後のUE新製品の計画も聞いてみた

UEのオーディオ製品はいまカスタムイヤホンだけでなく、「UE BOOM」をはじめとするBluetoothワイヤレススピーカーにも広がって、それぞれが好調なのだとか。ワイヤレススピーカーが牽引車となって、新しいUEのファンが全世界に広がっているのだとDias氏は説明しています。

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「オーディオメーカーとして、UEのポリシーが詰まった音を、それぞれのカテゴリー別の製品でベストを尽くして再現することが私たちの使命だと思っています。ラインナップが増えたことで、より多くの方々にUEの理想とするサウンドをお届けできていることをとても誇らしく感じています」(Dias氏)

 

最近は日本国内だけでなく、欧米やアジア諸国でもスマホとイヤホンを組み合わせて音楽を聴くポータブルスタイルが定着してきたといわれています。UEのサウンドをよりカジュアルに楽しめるワイヤレスイヤホンや、スタンダードな価格帯のイヤホンも近々発売される計画はないのでしょうか? とても気になったので、Dias氏に聞いてみました。

 

「色んな構想はあります。残念ながらいまは具体的なことをお知らせできないのですが、私はまた近々日本に来て皆さんにお話できる機会を持ちたいと思っています」(Dias氏)

 

なるほど、これは来年もアルティメット・イヤーズから目が離せなくなりそうですね。まずは発売されたばかりのUE 18+ Proのユニバーサルイヤホンをショップやイベントの機会に試聴してみてはいかがでしょうか。

 

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