眠ることは、お金のかからない娯楽です。枕と布団があれば楽しめます。快眠は、体と心の疲れをリセットするために欠かせないものです。
今回は、ぐっすり眠るための3つのキーワードを解説します。それは、(1)「睡眠圧」を高めて、(2)「交代浴」でリラックスして、(3)「寝床内温度」を適度に保つことです。
【その1】睡眠圧を高める
寝つきが悪いのは、睡眠圧(すいみんあつ)が低いせいかもしれません。睡眠改善インストラクターが書いた『たった一晩で疲れをリセットする睡眠術』(石川泰弘・著/日本文芸社・刊)の一節を紹介します。
「睡眠圧」とは、昼間にしっかりと覚醒した時間を取ることで、夜、眠気を引き起こす力のこと。
(『たった一晩で疲れをリセットする睡眠術』から引用)
睡眠圧とは、わかりやすく言えば「眠気(ねむけ)」のことです。たとえば、食事のあとすぐに寝床ではない場所で眠りこんでしまうと、いつもの就寝時刻にて寝つきが悪くなります。
1日のおわりに備えて「睡眠に対する圧力」を高めておけば、ぐっすり眠れるというわけです。睡眠圧は、医学的な定説ではありませんが、睡眠にまつわる学説のひとつとして提唱されています。
【その2】交代浴で自律神経のバランスを取り戻す
『たった一晩で疲れをリセットする睡眠術』の著者は、睡眠改善インストラクターとして、一流アスリートのコンディンションのサポートもおこなっています。
一例として、女子アイスホッケーの日本代表選手がおこなっている「快眠法」を紹介しましょう。床亜矢可(とこ・あやか)さんは、ソチ冬期五輪で活躍した「スマイルJAPAN」の一員です。
アイスホッケー選手のトレーニングは、寒いアイスリンクの上で2分ほど激しくプレーしたあと、体を温めるために2分ほどベンチで休む。毎日、それを延々と繰り返します。
このように、アイスホッケー選手は、体温を調節する「自律神経」が乱れがちなのです。自律神経が失調すると寝つきが悪くなります。こまめにリセットしなければいけません。
練習から帰宅して、まず最初に行うのが「交代浴」です。
自宅で行う交代浴とは、温かいお湯に2分ほど浸かったあと(全身浴)、冷たい水のシャワーを1分ほど浴びるというお風呂の入り方です。(『たった一晩で疲れをリセットする睡眠術』から引用)
温水を浴びれば副交感神経が優位になってリラックスします。冷水を浴びれば交感神経が優位になって緊張します。これを繰り返すことで、環境要因やストレスによって乱れた自律神経のバランスを取り戻すことができます。
【その3】寝床内温度を32℃に保つ
「暑すぎる」「寒すぎる」と寝つきが悪くなります。快眠と布団のなかの温度には関連性があるからです。「掛け布団と体の間の温度」のことを、寝床内温度といいます。
睡眠改善インストラクターの石川泰弘さんは、最適な寝床内温度は32℃だと言います。冬ならば、湯たんぽが役立ちます。足を温めるだけでなく、布団のなかの温度をあたためる効果もあるからです。
「湯たんぽや電気毛布を使っても寒くて眠れない」という人は、掛け布団ではなく、敷き布団のほうを増やしましょう。そのほうが暖かくなります。
1週間だけ睡眠日誌をつけよう
寝つきが悪くて悩んでいる人には「原因の見える化」をオススメします。期間は7日です。つぎのチェックポイントを記録します。
・朝、何時に起きて、朝食を何時に取ったか・取らなかったか
・午前中、眠気が来たか・来なかったか、昼食は何時に取ったか・取らなかったか
・午後、眠気が来たか・来なかったか、また、昼寝したか・しなかったか
・夜、お風呂に入ったか・シャワーで済ませたか
・夕食は何時にとったか、何時に寝たか(『たった一晩で疲れをリセットする睡眠術』から引用)
睡眠日誌を見直せば「よく眠れた日」「寝つきが悪かった日」という結果に対する原因をつきとめることができます。
(文:忌川タツヤ)
【参考書籍】
たった一晩で疲れをリセットする睡眠術
著者:石川泰弘
出版社:日本文芸社
トップアスリートの入浴から睡眠まで指導した経験をもとに、運動をした後ですら翌日に疲れを残さないアフターケアを解説する。睡眠の本は多くありますが、体のメカニズムとそれに沿った科学的な方法が特徴です。激しい運動をするトップアスリートですら一晩で体調が回復してしまう驚異の法則を紹介します。
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