鉄道ファンのことを「鉄っちゃん」と呼ぶといいます。私の周囲にもたくさんいます。鉄道のことになると、目の色が変わり、えんえんと話し出す人が・・・。その度に私は思うのです。私にはこんなにも好きなものがあるだろうかと。
先日は、鉄っちゃんならぬ「城ちゃん」と呼びたくなる方に会いました。それも中国で。
おそろしく日本語が上手な女の子で、「どうしてそんなに日本語が上手なの?留学していたの?」と、聞いたら、「日本のお城が大好きで、いつか日本中の城を訪ねたいのです。ですから勉強しました」という答えでした。
愛すべき「城ちゃん」たち
考えてみると、お城のファンはたくさんいます。惜しくも亡くなった10代目坂東三津五郎も、城郭建築が大好きなことで知られていました。
お城を特集したテレビのコメンテイターもつとめ、著書もありました。忙しい合間を縫って、日本全国の城を訪ね歩いていたといいます。
今もホームページを見ると、お城をバックにした写真が残されており、心からの笑顔を見ることができます。
三津五郎を襲名する前の八十助時代から、私は彼の歌舞伎が好きでした。
体調を崩してからもお城を観にいっていたと知ったときは、救われる思いがしたものです。
お城を仰ぎ見ると、不思議なパワーを与えられるような気がします。
城は敵に攻め込まれたとき防御するための建築物で、宗教的な要素はないはずですが、青い空をバックに天守閣を仰ぎ見るときなど、崇高な何かに包まれているような気持になります。
そういえば中国で出会った女の子も言っていました。「姫路城を観るまでは死ぬことはできません」と。
そう「城ちゃん」は、日本全国はもちろんのこと、世界にも広がっているのです。
日本の城、100のスター
お城はそこに訪ねて行き、ふうふう言いながら天守閣を登ったりすると、余計に愛着が増すものでしょう。
鉄道ファンが、実際に乗車し、写真を撮って楽しむように、城郭愛好家の人たちも、自ら出かけていき、写真を撮影し、そして城を体感しては、その勇壮な雰囲気に酔いしれるのです。
「日本100名城」は、財団法人日本城郭協会が平成19年度に創立40周年を迎えたことを記念して作られたものです。
文部科学省と文化庁の後援を得て、城郭愛好家からの推薦と専門家の会議を経て選定されたものだといいます。
公式な人気投票が行われたようなもので、日本の城のオールスター選のようなものだと、私は理解しています。
候補に挙がったのは、478城といいますから、かなりの激戦で、熱心な討論が行われ、ようやく100に絞られたのです。
北から南まで
日本の名城は、日本全国に点在していますが、『日本100名城に行こう 公式スタンプ帳付き』(学研プラス・刊)は、私たちが訪ねていきやすいように、北海道から沖縄まで、文字通り北から南まで、名城のリストを披露しています。
ちなみに一番最初に挙げられているのは、「根室半島チャシ跡群」。北海道の根室市にあるアイヌの城壁です。
ここは戦いのための砦だけではなく、祭祀や集会にも使われていたそうです。チャシはアイヌ語で砦や城壁を意味します。北海道にはなんと500ものチャシがあるとか。これは見なくてはならんという気持ちになります。
では、100番目として挙げられる城はというと、「首里城」です。沖縄県那覇市にあり、琉球王国の栄光を今に伝えるものとなっています。
首里城には私も何度か行ったことがありますが、首里城をいわゆる日本の城郭建築として認識してはいなかったので、驚きました。
スタンプを集める楽しみ
『日本100名城に行こう 公式スタンプ帳付き』は日本全国の城を説明するガイドブックのようでありながら、もう一つの使い方もあります。
それは巻末についている「公式スタンプ帳」。例えば、あなたがどこかのお城に行ったら、自分がここに来て城を見学したという喜びとともにスタンプを押します。登城日の欄もあるので、記録しておきましょう。
最近、お寺や神社で御朱印をいただく女性が多く、御朱印ガールと呼ばれていると聞きますが、お城のスタンプにもそれと似た楽しみがあるかもしれません。
確かに、自分がここに来て足跡を残したという思いは、満足感を生むことでしょう。まだ空欄だらけの「お城スタンプ帳」を見ているうち、不思議なことが起こりました。
今まで私は自分をとくにお城フリークだとは思っていませんでしたが、むらむらと全国のお城を行脚して、スタンプを押して歩いたらどんなに楽しいだろうという思いにかられたのです。
私も「鉄っちゃん」ならぬ、「城ちゃん」への一歩を踏み出してしまったのかもしれません。
(文・三浦暁子)
【参考文献】
日本100名城に行こう 公式スタンプ帳つき
著者:財団法人日本城郭協会(監)
出版社:学研プラス
好評の『日本100名城公式ガイドブック』の姉妹編は、後半に100名城のスタンプ帳がついて、前半に各城の見どころを新たに構成・網羅した実用的な一冊。100名城スタンプ・ラリーの際に持ち行くのにぴったりの140ページのハンディ版。