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2017/10/14 15:00

会話でまず大切なのは“声”だった――声にまつわる耳よりなお話し

先月の話。

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デビューした頃から大好きだったのに、なかなか来日公演をしてくれなかったワンリパブリックのコンサートに行ってきた。このバンドの第一の特徴は、日本人ウケするメロディーラインだと思う。それに、ボーカリストのライアン・テダーの声が独特の響きで、実に魅力的なのだ。

 

スモーキーな声

そのライアン・テダーに関するさまざまな記事を読んでいると、“スモーキーな声”という表現がちょいちょい出てくる。どういう意味なのか。あちこち調べてみると、面白いことがわかった。

 

スモーキーな声というのは、一般的にいって、タバコを長年吸い続けた人の声を意味するようだ。言い方を変えるなら、深みがあって低く、ややかすれている。そんな響きの声だ。ただ、ライアン・テダーの声は高音域の伸びもいい。深みは感じるが、特に低いとは思えないし、男性ボーカルの歌声としては、むしろ高い方に属すると思う。

 

応用言語学者ルードス・トラメル博士は、スモーキーな声を次のように定義している。

 

「ジャンルとしてはジャズやブルース、曲調としてはバラードの失恋や片思いの歌を得意とするシンガーに共通する声色で、甘く流れるような低めの女性ボーカルが特徴。かすれて聞こえる部分があることもひとつの要因である。代表例を挙げるなら、ビリー・ホリデー」

 

ライアン・テダーの声にも“かすれ”というニュアンスを感じ取る人も少なくないはずだ。歌声が割れるとか聞きにくくなるという意味では決してなく、意図的にエフェクトをかけているように聞こえる瞬間がある。“ハスキー”という言い方がぴったりかもしれない。

 

相手の声が低くなったら、好意を持たれているしるし

『ザ・テレグラフ』紙の電子版2013年4月25日号に、声に関する興味深い記事が掲載されている。「ハスキーボイスの男性が最もセクシーであること」が科学的に証明されたという内容だ。

 

イギリスのユニバーシティ・カレッジ・オブ・ロンドン(UCL)の研究グループによると、女性が最も惹かれるのは深いハスキーボイスの男性だという。検証を率いたイー・ルー博士は次のように語っている。

 

「女性は、自分が脅威を感じない程度に体が大きく、かすれ気味の声をした男性に強く惹かれるようです。今回の検証の前段階として行った実験では、人間は魅力ある異性を射止めるために、男女の差なく無意識に声を低める傾向にあることがわかっています」

 

2010年にアメリカのペンシルバニア州にあるオルブライト大学で行われた研究でも、相手に興味を抱いていることを暗に示す時は、男女ともに声が低くなる傾向があるという事実が明らかにされている。

 

誰かと会話している時は、もちろん話題選びや話し方も大切だろう。でも、最も意識すべきは、相手に向ける自分の声そのものの響きなのだ。

 

生まれつき声が悪い人なんていない

プロのシンガーではない一般人が、日常生活の中で声を実用的な方向で役立てていける方法はあるのか? 出発点と言うべきなのは、浜田さんが断言するこの言葉だ。「生まれつき声が悪い人なんていない」

 

『9割の人が知らないプロの常識で説得力のある声をつくる コミュニケーションに自信がつく自然な発声と話し方のコツ』 (浜田真実・著/学研プラス・刊)が強調する最大のポイントは、声を使ったコミュニケーションの重要性である。人前で話すことが苦手だ。怖い。そう思っている人も少なくないはずだ。苦手であり、怖いと感じることには原因がある。それは、“自分の声やコミュニケーション力への無自覚”にほかならない。

 

声を使ったコミュニケーションには、音声を「聴く」という行為が介在します。後ほど詳しくご説明しますが、相手の声や自分の声を聴き取る能力を高めることが、コミュニケーションの質を高めることに大きく関わっています。受験などで問われるコミュニケーション力も、この「聴き取る力」を伴ったコミュニケーション力」が必要とされているのです。

(『9割の人が知らないプロの常識で説得力のある声をつくる コミュニケーションに自信がつく自然な発声と話し方のコツ』より引用)

 

聴き取る力を伴ったコミュニケーション力をアップさせるためには、まず自分の声に意識を向けることが大切だ。著者の浜田さんは問いかける。自分の声が好きか嫌いか。それよりもまず、自分の声に興味を持っているか。そういう意識が、コミュニケーション力に大きな差を生む。

 

それは、あとがきに記されている以下のような文章からも読み取れる。

 

説得力のある声で話し、人の心を動かすためには、伝えたいことに、自分の感情がどれだけ動かされているかが重要です。まったく心が動かないものについて語っても、誰にも、何も伝わりません。自分の体験に基づき、自分にとっての真実を伝えること。そして、たどたどしくても、たとえお国訛りが出たとしても、借り物ではない、自分自身の言葉で話すことが重要です。

(『9割の人が知らないプロの常識で説得力のある声をつくる コミュニケーションに自信がつく自然な発声と話し方のコツ』より引用)

 

「生まれつき声が悪い人なんていない」

 

理論武装するより、トレンドに精通するより、まずは自分の声を好きになろう。それが無理なら、なぜ嫌いなのか考えてみよう。どんな形であれ自分の声に意識を向けることが、ボイストレーニングなどのポジティブな次の段階へとつながっていく。

 

(文:宇佐和通)

 

【文献紹介】

20171008_suzuki6

9割の人が知らないプロの常識で説得力のある声をつくる コミュニケーションに自信がつく自然な発声と話し方のコツ

著者:浜田真実

出版社:学研プラス

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