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2017/11/26 19:00

成功する起業家に必要なふたつの要素

社長という言葉の響き、好きですか?

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起業家とかアントレプレナーはどうですか?

 

次に、ちょっと質問の方向性を変えます。あなたにとって、働くことの目的とは何ですか? そして、今の仕事をしている理由は何ですか?

 

社長まで出世したい:10.8% 楽しい生活をしたい41.7%

公益財団法人日本生産性本部の「職業のあり方研究会」、そして一般社団法人日本経済青年協議会が、平成28年度新入社員1,286人を対象に「働くことの意識」に関する調査を行った。

 

この調査には「どのポストまで昇進したいか」という質問も含まれているのだが、社長の椅子を目指しますと答えた人は、10.8%にとどまった。政治家はほぼ誰もが総理大臣を目指すというが、会社に入って本気で社長を目指す人は10人に1人程度の割合だ。

 

もうひとつ目を惹くのは、「働く目的」という質問に対して41.7%の人が「楽しい生活をしたい」からであると答えている。生活の楽しさを感じるための方法論として働くことを思い浮かべる人が10人に4人いるという結果は、とても面白いと思う。

 

実は、社長になるという大きな夢と、楽しく生活するという身近ながらきわめて大切な目的をひとつにまとめる方法がありそうなのだ。

 

キーワードは、“再現性”と“ワクワク感”だ。

 

理科系起業論

『0 to 100 会社を育てる戦略地図』(山口豪志・著/ポプラ社・刊)はビジネス書だ。でも実際に手に取ってみると、起業というリアルな過程をモチーフにしたRPGの攻略本のように思えて仕方がない。

 

大学時代に昆虫分類学を専攻していた理系の経営コンサルタントである山口氏は、まえがきを「ハチのオスとメスの見分け方」で始める。そして、本書の理系的方向性が次のように記される。

 

この本は、従来のビジネス本とは違う科学的なスタンスを大切にして書かれたものだということを、まず知ってもらいたかったからです。

『0 to 100 会社を育てる戦略地図』より引用

 

では、従来のビジネス本とはどういうものだったか。

 

有名な起業家や経営者の方が書かれた自伝や創業記のサクセスストーリーは、ドラマチックで刺激的で、私も勇気づけられることがたくさんありました。でも、こうも思うのです。

「これって、この人がすごいから成功したんじゃないだろうか」と。

『0 to 100 会社を育てる戦略地図』より引用

 

カリスマ経営者の方法論はインスピレーションを与えるが、誰もがそれを自分という器に落とし込んでまったく同じことができるかと言えば、確かに疑問だ。科学的手法は、再現できてこそ認められる。誰もが再現できる科学的アプローチに基づく起業論。それが本書のテーマなのだ。

 

0 to 100(ゼロ・トゥ・ヒャク)とは

その科学的アプローチについてもう少し触れておきたい。

 

私はこれまで経営コンサルタントとして、あるいは会社で働く一社員として、多くの事業の立ち上げに関わってきました。そこで用いたのは、昆虫研究で培った科学的アプローチです。科学的アプローチとはつまり、仮説を立てて検証し、再現性のある法則を見つけ出すこと。

『0 to 100 会社を育てる戦略地図』より引用

 

“0 to 100”とは、山口氏の方法論における企業の6つの成長段階=フェイズを意味する。本書は、これに従って内容が進み、それぞれのフェイズですべきことが細かく明記されている。目次を見てみよう。

 

・(→0:ゼロマエ)起業前夜

・(0→1:ゼロイチ)顧客の発見

・(1→10:イチジュウ)商品の完成

・(10→30:ジュウサンジュウ)採用と組織づくり

・(30→50サンジュウゴジュウ)新規事業開発

・(50→100ゴジュウヒャク)上場に向けて

 

フェイズは、企業の年齢に置き換えられるかもしれない。幼稚園の年齢の企業と大学生の年齢の企業では、すべきことが違ってくる。

 

科学の再現性とワクワク感をひとつにすると…

前に触れたとおり、本書の大テーマは企業における科学的アプローチだ。でも、その向こう側で脈動しているのは、数字や理論では説明しきれないものかもしれない。

 

事業を始める、事業を大きくするということは、「知らないこと」との出会いの連続です。それは一見すると大変なことに思われますが、とてもワクワクするし、何より「知らないこと」が私たちを新しいチャレンジへと導き、大きく成長させてくれます。

『0 to 100 会社を育てる戦略地図』より引用

 

冒頭の調査結果に戻りたい。

 

「社長になる」という思いは間違いなくワクワクするし、「楽しい生活をしたい」という願望も、小さなワクワクを身近に感じ続けたいということなのだろう。

 

本書を読んで、ものごとの再現性の大切さを確認できた。そして、使われることが多いけれども定義や把握が難しい“ワクワク感”というものの輪郭が少しはっきりした気がしている。いずれも、仕事――日々の勤めであれ、起業というより大きな行いであれ――にとって不可欠な要素であるにちがいない。

 

(文:宇佐和通)

 

【著書紹介】

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0 to 100 会社を育てる戦略地図

著者:山口豪志

出版社:ポプラ社

クックパッド上場、ランサーズ急進を実現した事業戦略家が、会社と事業の成長を6つのフェイズに分類。各フェイズでぶち当たる壁と、乗り越え方を徹底解説します! 創業者ではなく、実務家だからこそわかった超実践的な戦略の数々。 今の課題が明確にし、解決するのに役に立つ、まさにトラブルシューティングのような一冊です。

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