本・書籍
2015/4/15 0:00

勝ちグセのつけ方教えます

たとえばイチロー選手は、ゴルフスイングのような素振りをした後に右、左の順番で足首を回し、2回屈伸してバッターボックスに入り、バットの頭で右、左の順でスパイクのかかとを叩き、左足で土を馴らしてバットを大きく回して構え、まっすぐ伸ばした右腕の袖を引っ張り上げる。

 

たとえばフィギュアスケートの羽生結弦選手は、演技前にコーチと向かい合って左、右と体を揺らし、左右のスケートで氷を踏み馴らすような動きをして屈伸し、リンクの中央に向けて滑り出しながら両手を広げ、十字を切って肩をひねる。リンク中央で止まって手を合わせ、静止して曲が始まるのを待つ。

 
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毎回行う決まった動作は、最高の結果を出すために必要な前フリだ。

 

 

気持ちを高める”プリパフォーマンス・ルーティーン”

 

トップアスリートが見せる一連の動きは“プリパフォーマンス・ルーティーン”と呼ばれるもので、緊張を解いたり、ものごとがうまく行った時の記憶を甦らせたりするのにとても役立つ。
ユニバーシティー・カレッジ・オブ・ダブリンの認知心理学者エイダン・P・モーガン博士は“パフォーマンスの前にアスリートが系統的に行う一連の思考や所作”と定義している。
プリパフォーマンス・ルーティーン的行動は、もう少し長い時間枠の中でも効果を発揮するようだ。2013年シーズンに6年ぶりのワールド・チャンピオンの座に返り咲いた大リーグ、ボストン・レッドソックスの選手たちは、ワールドシリーズ開幕時に上原投手を除いて全員があごひげを生やしていた。

 

世界三大テノールのひとりだったルチアーノ・パバロッティは、公演初日の開演前のステージ上を探し回り、折れ曲がった釘を見つけては心を落ち着けていたという。もっともパバロッティの場合は、彼の“儀式”を知ったとある美術スタッフがわざと折れた釘を落としておいて、それが恒例行事となったようだ。パバロッティとスタッフの間に確立された暗黙のお約束が、世界中の劇場で何回も繰り返されるようになったのだろう。ただ、折れた釘の効き目が落ちることは全くなかった。

 

 

これって、仕事にも使えるんじゃ…

 

プリパフォーマンス・ルーティーンは、すべての意識を一か所に向け、集めるのに役立つ。自分の行動に対する自信を最高レベルまで持っていくための過程あるいは手順、と言うこともできる。
だからプロスポーツ選手ではなくても、日々の生活や仕事での場面々々にうまく取り入れ、活かしていくことができるはずだ。たとえば勝負メシ。これを食べれば間違いないというメニューを決めておけば、それが自分にスイッチを入れる合図になる。勝負パンツを決めておいて、大事なプレゼンの日に履くのもいいだろう。大切なのは、ポジティブなイメージに直結する動作や行動を決めておくこと、そしてそれを変えずに守っていく姿勢だ。ゲン担ぎには違いないのだが、望み通りの結果を引き出すためにかけるひと手間、と言ったほうがより正確だと思う。

 

 

見えないチカラを味方につけよう

 

『見えないチカラを味方につけるコツ』は、自分オリジナルのプリパフォーマンス・ルーティーンを作るヒントが満載された一冊だ。オンとオフの使い分けについての話、ものごとの流れを自分の思いどおりにするテクニック、もっと大きく言ってしまえば、より良く生きる姿勢について綴られている。
ジャンルで分ければスピリチュアル系になるのだろうが、この種の本にありがちなひとりよがりの熱い主張めいたものはいっさい感じられない。何も押しつけないのだ。一人でふらっと入ったバーで、たまたま隣に座っていた人がバーテンダーにしている話を聞いている感じ。こういうのもありますよ、という口調で語りかけられると、それもありですね、という気になる。

 

実は筆者、ものすごくゲンを担ぐ。とある番組で千原ジュニアさんが巣鴨の洋品店で売っている赤いパンツの話をしているのを見た時、これだと思って買いに行き、ここぞという時には必ず履くことにしている。飛行機に乗る時も、離陸前に欠かさずするおまじないがある。そして、毎日仕事を始める前に、決まった順番で机の上を拭く。
でも、勝ちぐせとかツキという言葉で表現されるポジティブなものは、思い込みや思いすぎだけでは呼び込めないような気がするのも確かだ。
見えないチカラは、すぐ近くではなく、かといってものすごく遠くからでもなく、ちらちらこっちを見ている。こういうデリケートなところを理解することが、望みどおりの結果を得るコツなのだ。

 

人事を尽くして天命を待つ。この言い古された言葉の中にも、プリパフォーマンス・ルーティーンのニュアンスが込められている。

 

 

(文:宇佐和通)

 

 

【文献紹介】

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見えないチカラを味方につけるコツ
著者:山崎拓巳
出版社:サンクチュアリ出版

なんかいいかも? 占星術師、心理カウンセラー、僧侶、スポーツトレーナー、 鍼灸師、霊媒師、メンタルコーチなどから教わった あなたのまわりのいっぱい良いことが起こる22の習慣

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