本・書籍
2015/4/14 0:00

大人も感涙! 熱いぜ、埼玉県のひみつ!

先日、Yahoo!ニュースにもなっていた、ちょっと気になる本。学研パブリッシングから出ている『埼玉県のひみつ』。これまでは企業の協賛で様々な「ひみつ」本が発刊されてきたが、自治体からは初である。
そもそもこの「ひみつシリーズ」、一般の書店には置かれておらず、全国の小学校や地域の図書館に寄贈されるものらしく、大人はなかなかお目にかかれない代物。それが、電子書籍版が配信されているということを知り、(しかも0円! 無料なんですって!)早速読んでみた。

 

 

埼玉県って…… なに?

 

恥ずかしながら告白しよう。私が埼玉県、と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、埼玉県春日部市=SMAPの草彅くんの出身地、ということ。(ジャニヲタですみません)あ、春日部はクレヨンしんちゃんの舞台でもあるか! あとは、小松菜?ほうれん草?の生産率も高かったような記憶が。他には……、一時東京に住んでいたとはいえ、東海地方出身の私からすると、関東近辺の事情にはとんと疎い。埼玉出身の皆様、申し訳ない。

 

さて、この埼玉県のひみつ、物語はある小学校に通う男の子シンジが、父親の転勤で埼玉に引っ越すことになった、という場面からはじまる。親友ケイスケと離れ離れになってしまうこと、もう一緒にサッカーが出来なくなってしまうこと、何より「埼玉県」という未知の地に引っ越すことになり、ひどく動揺するシンジ。

 

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(『埼玉県のひみつ』より引用)

 

「自分は引っ越さない!」と意固地になるシンジ。そんなシンジの新生活を応援しようと、ケイスケら友人たちが立ち上がる。埼玉県のことを自分たちなりに調べて、「埼玉県の良さ、素晴らしさをケイスケに示してあげよう!」と動き出すのである。

 

このシンジたちがどこに住んでいるかはマンガの中で明記されていないが、おそらく関東地方のどこかだろう。皆が一様に「埼玉県? そんなところ知らない!」と言い切る様がなかなか自虐的で面白い。しかし、まったくの無知な状態から、先生や身内、知り合いに協力を仰ぎ、徐々に埼玉県の魅力を発見していく。思わず膝を打つ、うまい展開である。(余談だが、主人公のサッカー少年シンジとケイスケは、香川真司と本田圭佑から名づけたのだと推測している。)

 

 

古墳、農産物、自然、スポーツ…… 埼玉県には魅力がいっぱい

 

物語を読み進めていくと、知られざる埼玉県の魅力が存分に描かれていて、大人でも新たな発見が多々ある。そういえば、長瀞に旅行したことがあるのだが、あそこも埼玉県だったのか。レッチリのライブを見に行った埼玉スーパーアリーナもさいたま市。天然氷を使ったかき氷が絶品と噂のかき氷屋も! 様々な経験や情報が、埼玉県と繋がる。はじめは埼玉県と言われてもあまりピンとこなかった私も、実は、意識していなかっただけで、埼玉県の魅力に昔から触れてきたようだ。

 

その他、歴史的に名高い古墳、豊富な農産物、あふれる自然、スタジアム……、本書には、巻頭8ページに渡る特集の他、コラムも各ページに散りばめられている。そして驚くべきことに、各ページに1つ、豆知識がページの端に書かれている。数えてみたら、全部で123あった。埼玉県の豆知識を123個挙げろ、といわれても、埼玉出身の人だって難しいだろう。いやはや、製作者の方の取材量には、ただただ驚くばかりだ。

 

 

 ひみつシリーズは、地域の活性化に一役買う!

 

昨今、地方都市は観光客を呼び寄せたり、人口の流出を防いだり、各地域の活性化を図るため、あの手この手で必死である。そんな中でこの「埼玉県のひみつ」は、地方活性化へと繋がる新たな策であり、一石を投じたといってよいだろう。おそらく、「うちも是非!」と手を挙げてくる自治体も少なくないのでは。個人的には、我が故郷「岐阜県のひみつ」を読みたいところ。「岐阜」の「阜」の字を正しく書ける県外の人はきっと少ないだろうし、「岐阜?どのあたりだっけ?」と尋ねられるのにはもう慣れた。「名古屋の隣です。新快速で20分かからないんです。」と名古屋を引き合いに説明するのにも。だからこそ、「岐阜県のひみつ」を作ってほしい。いや、出来ればシリーズ化して、全47都道府県版作ってほしいくらいである。

 

ただし、今回の「埼玉県のひみつ」は、その良質な構成に勝因があると思う。物語の終盤、友人たちが発表してくれた埼玉県の魅力を知り、埼玉県に引っ越すことを納得したシンジ。そして親友ケイスケとある約束を交わし……。幼い二人の熱い友情に、不覚にもじんわり涙ぐんでしまった。

 

同じ展開はもう使えないとなると、残り46のストーリーを捻り出すのは、相当ハードルが高そう。でもそこをなんとか、日本の地域活性化のために是非! 「ひみつシリーズ」の今後の展開に期待したい。

 

(文・水谷 花楓)

 

 

【文献紹介】

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埼玉県のひみつ
著者:おだぎみを(漫画) 望月恭子(構成)
出版社:学研パブリッシング

埼玉県には、知られていない魅力がいっぱい。新鮮な野菜や米が作られ、産業も発達しているよ。勉強になる施設やワクワクする観光地もあり、スポーツだって盛んなんだ。君のお気に入りを見つけてね。

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