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2015/7/27 0:00

「超えられない壁」を突き抜けるための思考法

『学問のすすめ』『思考は現実化する』『7つの習慣』など、古今東西や時代を問わず、自己啓発本を買い求める読者はあとをたたない。人生というゲームの難易度が高すぎるせいだ。攻略法があるのならぜひとも知りたい。

 

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ビッグタイトルがついに電子書籍化!

 

有名な自己啓発書である『チーズはどこへ消えた?』(扶桑社/刊)が、いつのまにか電子書籍で読めるようになっていた。著者はスペンサー・ジョンソンという心理学者で、2000年に翻訳書が出版されたのち、日本だけでも300万部以上の発行部数を記録した大ベストセラーだ。

 

本書は、一般読者の好評を得るだけにとどまらず、企業の研修教材として使われることもあったという。内容紹介によれば「IBM、アップル・コンピュータ、メルセデス・ベンツ等、トップ企業が次々と社員教育に採用」していたこともあるらしい。

 

わたしは自己啓発書が好きだ。読めば前向きな気持ちになれるからだ。本書を読んだことがなかったので、さっそく電子書籍版をダウンロードして目を通してみたところ、期待していた以上の内容だった。

 

 

人生の理不尽と向きあうための寓話

 

『チーズはどこへ消えた?』は、迷路のなかでチーズを探し求めるネズミと小人(こびと)の物語だ。原題は『Who Moved My Cheese?』で、直訳すれば「だれが私のチーズを動かしたか?」という意味になる。

 

ネズミは単純なので、嗅覚だけを頼りにチーズを求めて迷路の中をひたすら走りまわる。小人はネズミよりも知能が高いので、経験やそれをもとにした仮説を立てて、なるべく少ない労力でチーズを手に入れようとする。

 

ネズミと小人は、それぞれのやりかたで「チーズ・ステーションC」にたどりつく。そこには食べきれないほどのチーズが貯蔵されており、まさに宝の山だった。

 

しかし、あるとき「チーズ・ステーションC」に貯蔵されていたチーズが消えてしまう。ネズミと小人は一夜にして食い扶持を失ってしまったのだ。

 

本能だけで生きているネズミは、ふたたび迷路のなかを走り回ってチーズを探しはじめた。

 

一方、ネズミよりも賢いはずの小人は、新たなチーズを探しに行くこともせずに、ふてくされていた。無くならないと思いこんでいたチーズが一夜にして消えたという現実を認めることができず、「Who Moved My Cheese?(だれが私のチーズを動かした?)」と言って、ありえない奇跡を願いながら、からっぽの貯蔵庫からいつまでも動き出せずにいた。

 

 

もし恐怖がなかったら何をするだろう?

 

物語はそのあとも続く。結論を言ってしまえば、そのあと小人は、莫大な量のチーズを手に入れることに成功する。チーズの消失から再発見に至るまでに、さまざまな「気づき」を得たことによるものだ。

 

『チーズはどこへ消えた?』は自己啓発書なので、人生に役立つかもしれないフレーズがいくつも収録されている。その中から、わたしの心に最も響いたものをご紹介したい。

 

もし恐怖がなかったら何をするだろう?

(『チーズはどこへ消えた?』から引用)

 

チーズを失って途方に暮れていた小人が、自分を奮い立たせるためにおこなった自問自答だ。

 

 

自分の限界を見極めるためのイメージトレーニング

 

「失敗をおそれずに挑戦しろ」とか「勇気を出せ」という激励は、それをすべき人たちの心に響かない。臆病な人が知りたいのは、失敗をおそれない方法そのものであるからだ。勇気を出せない人は、勇気がどのようなものであるかを知らない。

 

「もし恐怖がなかったら何をするだろう?」という問いかけが秀逸なのは、だれでも想像しやすいところだ。恐怖心を克服するのは難しいが、恐怖がない心境をイメージするのはさほど難しくない。恐怖は誰もが知っている感情なので「ない」状況を想像しやすい。

 

似たような思考法に「もしも6億円の宝くじに当選したら」とか「もしもイケメン(美人)に変身できたら」と仮定するものがある。これらの「もしも」を想像するのは楽しいが、実現するためのハードルが高すぎるので、単に「想像する」だけで終わってしまう。へたをすれば、現実との落差に気づいてしまいモチベーションが下がりかねない。

 

「恐怖がない」心境を想像するときには、あくまでも自分の境遇や現状を踏まえたうえであれこれ空想をめぐらせるので、それはおのずとイメージトレーニングになる。ぜひ試してみてほしい。

 

(文:忌川タツヤ)

 

 

【文献紹介】

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チーズはどこへ消えた?
著者:スペンサー・ジョンソン(著) 門田美鈴(著)
出版社:扶桑社

この小さな本が世界のビジネスマンを変えてゆく! 迷路のなかに住む、2匹のネズミと2人の小人。彼らは迷路をさまよった末、チーズを発見する。チーズは、ただの食べ物ではなく、人生において私たちが追い求めるもののシンボルである。ところがある日、そのチーズが消えた! ネズミたちは、本能のままにすぐさま新しいチーズを探しに飛び出していく。ところが小人たちは、チーズが戻って来るかも知れないと無駄な期待をかけ、現状分析にうつつを抜かすばかり。しかし、やがて一人が新しいチーズを探しに旅立つ決心を…。大手トップ企業が次々と社員教育に採用。単純なストーリーに託して、状況の変化にいかに対応すべきかを説き、各国でベストセラーとなった注目の書。状況変化への対応を説いたビジネス書として、人生のいろいろな局面を象徴した生き方の本として多くの人に読まれています。アナタの人生は確実に変わる!

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