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2018/3/15 16:30

このお笑い芸人がすごい! 漫才やコントの面白さを学術的に分析した『サンキュータツオの芸人の因数分解 』レビュー

なぜ、漫才やコントで笑ってしまうのか?

サンキュータツオの芸人の因数分解』(サンキュータツオ・著/学研プラス・刊)は、30組のお笑い芸人を分析することによって、笑いの「文法」と「文体」を言語化しています。

 

Yahoo!(ヤフー)のことを「ヤホー」と言い間違えているように、ナイツのボケ担当・塙さんが「○○について検索した」という内容も、わたしたちが知っている事実とはビミョーに異なります。その「ズレ」や「あざとい言い間違え」が笑いを誘います。

 

土屋さんは基本的にコメントしてるだけ、塙さんは言い返しはしない、という独特な構造なのです。これらの方法によって彼らは、漫才としてこれ以上ボケを入れられない、というほどの密度とスピードを実現しています。

(『サンキュータツオの芸人の因数分解』から引用)

 

 

ナイツは「10秒ごと」にボケている

ちなみに、高速漫才で有名なNON STYLEと比較してみます。「エレベーター」というコントがあります。3分20秒のネタです。数えると、ボケは23回でした。8.6秒につき1回ボケています。会話形式のボケとツッコミなので、早口によって「密度とスピード」を実現しています。

 

一方で、「ダウンタウンについてヤホーで調べた」という内容のナイツの漫才は2分45秒のネタです。数えると、ボケは17回でした。つまり、9.7秒につき1回ボケています。ゆったりとした口調にもかかわらずNON STYLEに迫るくらいのボケ回数です。

 

ボケを成立させるためには、前フリとなる会話が必要ですNON STYLEの場合、早口会話によってボケまでの距離を縮めています。一方のナイツは、「インターネットの検索結果(ボケ)を羅列する」というスタイルによって、前フリなしで多くのボケを成立させています。

 

笑いのメカニズムは、学術的に説明可能です。たとえば、漫才コンビ「昭和のいるこいる」のネタが面白い理由は、言語学者のポール・グライスが提唱した「会話の公理」によって説明できます。

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